人口減少時代の新潮流(NO-7)
:東京都心に地方大学の拠点が続々
1.近畿大学の場合
●私立大学応募者数が明治大学を抜いて全国一
私が学生の頃に関西のローカル大学といわれた近畿大学も、今や時流に乗った私立大学の雄に数えられる様になりました。その象徴は、今年の私立大学の入学志願者日本一です。2年連続で明治大学を抜きV2を達成しました。今から半世紀前は、「キンカンポン」と関西でいわれていました。マンモス校で下駄履き大学の象徴のように言われていました。それが「関関同立」を抜いて明治・早稲田も抜いての日本一学生の人気校になりました。
●医学部も持つ総合大学である
早稲田、明治や「関関同立」にさえ無い医学部は、近畿大学にあるのです。大阪の狭山市、奈良の生駒市に近畿大学付属病院もあります。更に、水産研究所もあり、そこで鮪の孵化から養殖まで行い、東京や大阪では養殖魚専門料理店を開いて市民の人気を得ています。このように大衆に受ける大学の運営は、世耕一族の経営方針にあります。「実学教育と人格陶冶」の精神で政治・経済はもとより、医学・工学・農学・水産・原子力などあらゆる学問を生活に取り込む学風です。
●大阪駅北口と東京銀座の水産研究所
民謡の「♪ここは串本向かいは大島♪」で、有名な民謡の大島にある近大水産研究所です。ここでクロマグロの孵化を行い,養殖の道を開いたのです。豪州の企業や豊田通商とも提携しながら、2020年には30万匹のクロマグロを長崎県五島市で養殖するとのことです。そのマグロを大阪駅北口大阪と東京銀座にマグロ料理の店を、「近大水産研究所」とも称しています。この辺が世耕一族の余裕ある大学経営の証しと言えるでしょう。東京駅と大阪駅にマグロの料理店を置くことによって、近畿大学ここにありと、企業や学生に広報しているのです。
●東京駅八重洲口の超高層ビルに東京事務所を
昨年まで中央線四ツ谷駅から徒歩2分の所に、近大東京事務所がありました。そこが四ツ谷駅前再開発で立ち退きもあります関係で、東京駅八重洲口の超高層ビルに移転しました。西日本各地の近大関係者が東京に集まるには、乗り換え無しの東京駅は最高の立地といえるでしょう。特に、就活する学生にとっては、この上ない足場といえます。新幹線より安い、夜行高速バスで早朝に八重口へ着けば、そのまま東京事務所の会議室で、着替えて面接会場へ行けます。地方大学が生き残るためには、東京でのこのような利便性が不可欠と言えます。
●東京事務所は東日本からの学生呼び込みのデポでもある
近大の応募者日本一は、広報や受験願書のネット化、新学部開設や女子学生募集などにその勝因があったといわれています。その結果、女子学生や東日本からの学生が飛躍的に伸びました。当時、四ツ谷駅前にある東京事務所は、あたかも学生がそこを教室としているように見受けられました。地域をまき込んだ講座、絵画展、工作物研究発表会などを学生が行っていました。東日本の若者を呼び込むための、一大デモンストレーションだったのです。毎日、近大会館の前を通っていた私にとって、今から思うと、その辺に応募者連続日本一の勝因の一つがあったのかもしれません。
2.一極集中と大学の東京事務所
●就活のための東京事務所
前項で近畿大学の近況を述べましたが、就活のためにも東京事務所は大きな役割の一端を担っていたのです。東京駅八重洲口の大学の入るビルは、超高層ビルです。そのビルの1大学の賃貸面積は600㎡の広さです。2つの会議室や共通スペースの他に、男女別々の更衣室があります。ベッドもあり仮眠をとることも可能です。就活のためなら、いつでも利用可能な体制を引いているわけです。我々の時代からみると恵まれすぎと思いますが、そこまでしないと少子化時代の学生集めに支障がきたすようです。
●情報収集としての東京事務所
情報収集の役割もあります。ネットの発達した時代に、何を今さらといいますが、それは逆な発想です。東京は情報の集積地であります。情報の発信や受信は、集積地で行われます。そこには、受発信する人々の会議やミーティングやセミナー・講演会などが頻繁に行われます。そこに出向いてこそ、本物の情報を得ることができるのです。単なる紙面やウエブによる情報では、人口減少時代の大学経営に生き残れないということです。各大学にとっては、文科省や各省庁との情報収集も大切ですが、情報集積地の発信や受信の生の情報こそ大学経営に必要不可欠と思います。
●大学同士の情報交換
人口減少時代となり学生を集めることが、大変な時代となってきました。地方の大学は、
同業他社としての他大学の動向が気になります。東京駅八重洲には北大・東北大・立命・関大・関学・甲南・西南などが入居しています。京都大学は品川駅に、大阪大学は霞が関に、竜谷大学は丸の内などにありますが、東京駅近辺は全国の大学の東京事務所のるつぼになっています。時代小説の江戸における各藩の留守居役が、幕府対策としての情報交換を行った様が目に浮かびます。現代は幕府対策でなく、人口減少時代における少子化対策が大きな対象になっているといえます。
●一極集中とグローバル社会
大学の東京事務所は、少子化時代の産物と思っていましたが、その先に一極集中問題とグローバル社会が立ちはだかっていると思われます。インターネットの時代になって、情報の受・発信はどこでもできるから、一極集中がやわらぐものと思っていました。しかし,そうは問屋がおろしませんでした。情報の受・発信は早いのが取り柄だが、それを利用して行動に移すとなると、受・発信先を確認することから始まります。そうなると情報の多いところが中心になり、人間が多く集まります。それが現在の東京です。その東京から海外に出かける企業が雨後の竹の子のように出ています。いわゆる企業のグローバル化で、その企業情報を掴むことをしなければ、これからの大学経営に支障をきたすものと思われます。東京事務所はそんな役割もしているのです。(以上)
:東京都心に地方大学の拠点が続々
1.近畿大学の場合
●私立大学応募者数が明治大学を抜いて全国一
私が学生の頃に関西のローカル大学といわれた近畿大学も、今や時流に乗った私立大学の雄に数えられる様になりました。その象徴は、今年の私立大学の入学志願者日本一です。2年連続で明治大学を抜きV2を達成しました。今から半世紀前は、「キンカンポン」と関西でいわれていました。マンモス校で下駄履き大学の象徴のように言われていました。それが「関関同立」を抜いて明治・早稲田も抜いての日本一学生の人気校になりました。
●医学部も持つ総合大学である
早稲田、明治や「関関同立」にさえ無い医学部は、近畿大学にあるのです。大阪の狭山市、奈良の生駒市に近畿大学付属病院もあります。更に、水産研究所もあり、そこで鮪の孵化から養殖まで行い、東京や大阪では養殖魚専門料理店を開いて市民の人気を得ています。このように大衆に受ける大学の運営は、世耕一族の経営方針にあります。「実学教育と人格陶冶」の精神で政治・経済はもとより、医学・工学・農学・水産・原子力などあらゆる学問を生活に取り込む学風です。
●大阪駅北口と東京銀座の水産研究所
民謡の「♪ここは串本向かいは大島♪」で、有名な民謡の大島にある近大水産研究所です。ここでクロマグロの孵化を行い,養殖の道を開いたのです。豪州の企業や豊田通商とも提携しながら、2020年には30万匹のクロマグロを長崎県五島市で養殖するとのことです。そのマグロを大阪駅北口大阪と東京銀座にマグロ料理の店を、「近大水産研究所」とも称しています。この辺が世耕一族の余裕ある大学経営の証しと言えるでしょう。東京駅と大阪駅にマグロの料理店を置くことによって、近畿大学ここにありと、企業や学生に広報しているのです。
●東京駅八重洲口の超高層ビルに東京事務所を
昨年まで中央線四ツ谷駅から徒歩2分の所に、近大東京事務所がありました。そこが四ツ谷駅前再開発で立ち退きもあります関係で、東京駅八重洲口の超高層ビルに移転しました。西日本各地の近大関係者が東京に集まるには、乗り換え無しの東京駅は最高の立地といえるでしょう。特に、就活する学生にとっては、この上ない足場といえます。新幹線より安い、夜行高速バスで早朝に八重口へ着けば、そのまま東京事務所の会議室で、着替えて面接会場へ行けます。地方大学が生き残るためには、東京でのこのような利便性が不可欠と言えます。
●東京事務所は東日本からの学生呼び込みのデポでもある
近大の応募者日本一は、広報や受験願書のネット化、新学部開設や女子学生募集などにその勝因があったといわれています。その結果、女子学生や東日本からの学生が飛躍的に伸びました。当時、四ツ谷駅前にある東京事務所は、あたかも学生がそこを教室としているように見受けられました。地域をまき込んだ講座、絵画展、工作物研究発表会などを学生が行っていました。東日本の若者を呼び込むための、一大デモンストレーションだったのです。毎日、近大会館の前を通っていた私にとって、今から思うと、その辺に応募者連続日本一の勝因の一つがあったのかもしれません。
2.一極集中と大学の東京事務所
●就活のための東京事務所
前項で近畿大学の近況を述べましたが、就活のためにも東京事務所は大きな役割の一端を担っていたのです。東京駅八重洲口の大学の入るビルは、超高層ビルです。そのビルの1大学の賃貸面積は600㎡の広さです。2つの会議室や共通スペースの他に、男女別々の更衣室があります。ベッドもあり仮眠をとることも可能です。就活のためなら、いつでも利用可能な体制を引いているわけです。我々の時代からみると恵まれすぎと思いますが、そこまでしないと少子化時代の学生集めに支障がきたすようです。
●情報収集としての東京事務所
情報収集の役割もあります。ネットの発達した時代に、何を今さらといいますが、それは逆な発想です。東京は情報の集積地であります。情報の発信や受信は、集積地で行われます。そこには、受発信する人々の会議やミーティングやセミナー・講演会などが頻繁に行われます。そこに出向いてこそ、本物の情報を得ることができるのです。単なる紙面やウエブによる情報では、人口減少時代の大学経営に生き残れないということです。各大学にとっては、文科省や各省庁との情報収集も大切ですが、情報集積地の発信や受信の生の情報こそ大学経営に必要不可欠と思います。
●大学同士の情報交換
人口減少時代となり学生を集めることが、大変な時代となってきました。地方の大学は、
同業他社としての他大学の動向が気になります。東京駅八重洲には北大・東北大・立命・関大・関学・甲南・西南などが入居しています。京都大学は品川駅に、大阪大学は霞が関に、竜谷大学は丸の内などにありますが、東京駅近辺は全国の大学の東京事務所のるつぼになっています。時代小説の江戸における各藩の留守居役が、幕府対策としての情報交換を行った様が目に浮かびます。現代は幕府対策でなく、人口減少時代における少子化対策が大きな対象になっているといえます。
●一極集中とグローバル社会
大学の東京事務所は、少子化時代の産物と思っていましたが、その先に一極集中問題とグローバル社会が立ちはだかっていると思われます。インターネットの時代になって、情報の受・発信はどこでもできるから、一極集中がやわらぐものと思っていました。しかし,そうは問屋がおろしませんでした。情報の受・発信は早いのが取り柄だが、それを利用して行動に移すとなると、受・発信先を確認することから始まります。そうなると情報の多いところが中心になり、人間が多く集まります。それが現在の東京です。その東京から海外に出かける企業が雨後の竹の子のように出ています。いわゆる企業のグローバル化で、その企業情報を掴むことをしなければ、これからの大学経営に支障をきたすものと思われます。東京事務所はそんな役割もしているのです。(以上)