時代に思う

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高齢者受刑の増大

2015-12-12 09:46:59 | 随筆

時代に思う:NO-120

≪人口減少時代の新潮流NO-20

                 :高齢者受刑の増大≫

1.超高齢社会の象徴

●高齢受刑者の増大:高齢者人口増大の当然の現象

 総務省発表によりますと2015年で日本の高齢者65歳以上の推計人口は、3400万人に達したとのことです。総人口は1億2700万人を割って、6年連続の人口減少が続いているとのことです。それは人口減少時代の超高齢社会であります。全人口に対する高齢者の割合は25%を優に超しました。65歳以上の高齢者は4人に1人の割合です。10年前に半信半疑だった数字が現実になってきました。

そんな人口形態の中での高齢者の犯罪白書が法務省から発表がありました。2万1866人の年間受刑者のうち、高齢者は2283人でした。その数字は、1991年の統計を取り始めてから初めて1割を超えたそうです。

30年前と比較しますと高齢者の性犯罪の検挙数字が非常に多くなっています。強姦罪で7.7倍、強制わいせつ罪で19.5倍に達しているとのことです。高齢者の性犯罪と比較して少年の犯罪割合が減少しています。性犯罪状況にも、少子社会や高齢社会の現象が現れているといえます。犯罪はいつの世も世相を反映しているといえます。

●高齢者の犯罪情勢:特に万引きの再犯者が増加傾向

 日本の刑法犯罪認知数は、176万件余りで12年連続減少をしています。交通関連を除いた一般刑法犯の検挙者のうち高齢者犯罪は、全体の18%で、検挙件数にしますと4万7252件です。この数字は20年前の4.4倍に当たるとのことです。かなりの急ピッチで増えているといえます。 高齢者の犯罪の主なものは、万引き、占有離脱物横領、暴行及び障害の順になっています。これらの4の犯罪は、高齢者犯罪検挙人員の8割を占めています。

 これらの犯罪のうち、高齢者万引きは確実に増えています。若年層や中年者層の全ての層が減っているに、万引きだけは確実に高齢者層が増えています。特に、平成15年から増えています。これは高齢化社会が本格化した証といえます。 この高齢者の万引きと比較していえるのは、20歳未満の若年者層の万引きが減少していることです。ここでも、少子高齢化時代そのものを時代反映しているといえます。

 初犯者・再犯者別に見ますと、万引きは初犯者が横ばいですが、再犯者は増加が著しく多くなっています。この辺に高齢者対策の問題点が隠されていると思います。暴行や傷害罪の検挙数と同じように高齢者の再犯が繰り返されています。

 

2.高齢者の万引きについて

●横領・暴行・障害は減少傾向:万引きは増える傾向

 高齢者犯罪の中で万引きは、万引き全体の3割を占めていて、その割合が年々増える傾向にあります。このことは高齢化人口が増え続けているということです。人口が増えれば当然に犯罪数が増えるということです。また、高齢者の横領・暴行・傷害が平成19年頃には、検挙数が減少傾向であるのに、万引きだけは依然として増える傾向にあります。平成19年頃は、日本の人口が減少に転ずる頃で、超高齢社会の入り口の頃です。そのことは高齢者が増加すればそれに比例するように、万引きは今後も増えるということを示唆していたといえます。

●万引きの初犯者は横ばい:再犯者は増加傾向

 高齢者の犯罪の中で、万引きだけは増える傾向にあります。このことは、規範意識の低下や地域社会での孤立・孤独などが主なる原因と盛んにいわれています。その結果として、万引きの再犯者が大きく増えているともいわれています。全てがそうだとは言いませんが、日本の高齢社会の特徴を言い表していると思われます。そのために各警察は各関係機関や団体の協力の元に防犯活動を行っております。例えば、「万引き防犯アドバイザー」制度を設けて各老人クラブで、座談会や講座を設けている県警もあります。また、ある県警では関係機関や団体を通して高齢者同士のふれ合い場所をつくり、孤独が理由での万引き防止の運動も行っています。

  • 高齢者の万引きは語る 

 万引きの再犯とは別に、先にも述べましたが高齢者の万引きは世相そのものです。万引きの動機は基本的には経済的なものです。しかし、高齢者のそれは経済的な面の外にも多くの要因があります。その要因の根幹を成すものは、平均寿命が伸びた超高齢社会であるということです。それがベースとなり、長生きする社会だからこそ万引きが多発するのです。裏返していえば長寿社会のしわ寄せであり、超高齢社会のコストみたいなものです。従って、防犯だからといって警察だけでなく、自治体や町会、近隣同士、家族が助け合いの精神で地域ぐるみで、高齢者の万引き防止を減少させたいものです。

◆経済的な動機について 

 年金だけでは、生活が賄えないということです。特に、国民年金の支給額は少ないといわれています。また、生活保護と比較して少なすぎるという問題もあります。更に、去年の夏から生活保護費も減額さたという問題もあります。格差社会の進行で、高齢者の低所得層の拡大が、追い打ちをかけているようにも思われます。そのような背景から、今後ますます経済的な動機がベースとなった犯罪が増加すると思います。こんな文書を書いていると、「税と社会保障の一体化」が叫ばれているのが納得できます。

◆独居老人の万引きについて 

 一人暮らしの万引きは経済的不安の他に、孤独という心理的なものが多分にあると思います。先行き考えると、手持ち資金では不安感が付きまといます。誰にも相談できない、孤立感が疎外感となり、差別感や焦燥感や不安感になり、万引きに駆り立てる面があるようです。更に、女性の万引き多発については、女性が男性より元気でその分長生きするから、あるいは男性と比較して女性は自立心が弱いだけに、どうしても女性の万引きが多くなるのが当然といわれています。 

◆認知症的な高齢者万引きについて 

 認知症的な要素から、規範的な意識が希薄になるのが高齢者の傾向です。言葉を変えて言えば、善悪の判断が曖昧になり、その結果か万引きに走るようです。この場合は経済的というより、衝動的に行うということがいえます。結果的に、一人暮らし老人は、認知症的な高齢者万引きになる確率が高くなるようです。また、このような人に、刑法を全面的にかぶせることの是非が、今後の日本の課題となり論点になりそうです。 

◆刑務所の老人ホーム化について 

 日本と諸外国との違いは、日本が高齢者の服役者が多いということです。刑務所にいる受刑者は2009年をピークにして減少傾向にありますが、高齢者の入所者が増える傾向にあります。刑務所に居たほうが、食・住に困らないからと再犯する者も居るのです。一部には車椅子生活をしている服役者も居り、介護福祉士の実習を兼ねて、その世話をしている服役者も居ます。刑務所の老人ホーム化と揶揄されるわけです。(2015年12月11日)

 


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