時代に思う

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時代に思う:その114

2015-09-05 13:25:03 | 随筆

≪人口減少時代の新潮流(NO-14)   :水道料金値上げ続々≫ 

 人口減少で最初に値上げが予想されるのは、鉄道やバス料金と思われがちです。しかし、それよりも早くやってくるのは、水道料金の値上げのようです。 1、戦後70年の重みが値上げに拍車:設備の老朽化と耐震化 水道料の大幅な値上げ攻勢は、人口減少での単なる減収だけではありません。設備の老朽化の対策工事や耐震化工事のためでもあります。人口減少時代の大きな水道経営の問題が、そこに潜んでいるといえます。

 ●戦後復興から始まる水道設備の老朽化 近代的な水道設備は、戦後の復興から始まります。高度成長期には、ほとんどの自治体が現在の水道設備を有するようになりました。その間に一部の設備更新工事がおこなわれていますが、多くの自治体では30年~40年の水道管設備が更新されないままになっています。特に、埋設された水道管は、経年劣化で継ぎ手の部分が水漏れしています。そんな水道管では、蛇口に到達されるまでに30%前後が漏水になると云われています。埼玉県全体の15%の面積を占める秩父市では、埋設水道管は東京・大阪間に匹敵するほどの600キロに及ぶといいわれ、その更新工事は17%の今回の値上げでは追いつけない現状のようです。 

●水道事業経営のあり方  水道事業の経営のほとんどは、自治体の管理下ですが、独立採算制を採っています。人口減少や節水などで収入が減り、水道管の更新工事などで費用が嵩み、経営収支がマイナス傾向になってきています。そうなりますと、結局は自治体に泣き付いて来る訳です。設備の更新工事費が少なかった時代や、水と安全は‘ただ’であったような錯覚する時代は過ぎ去りました。安易な経営では、水道事業が成り立たない時代です。人口減少時代の収入源の問題、耐震化も含めた設備の更新問題がクローズアップされています。更に、設備技術者の高齢化が進み、若年技術者の不足問題などが大きな経営課題となっています。

●耐震化工事の推進  東日本大震災で257万戸の断水が発生して、復旧までに長期間(約5か月)を要しました。そんなこともあり厚生労働省としては、全国に耐震化の推進を図っています。平成26年3月で基幹的な水路の耐震化は、34%とのことです。耐震化には、抜け出し防止装置と耐震継手管の取り換えを行っています。東京都も平成34年度までには54%を目標にしています。この工事は、距離が膨大なことで予算を多く必要とします。更に、国庫補助は4分の1で、残りは自治体と利用者負担ということで、工事の進捗状態はスローテンポになります。厚生労働省の水道の新ビジョンとして、耐震化の更新工事を推奨していますが、最終的には利用者負担になるのです。

 2.人口減少が水道経営を圧迫

水道事業は装置産業であり、固定経費の割合が高い産業です。従って、使用量の減少がわずかでも、利益率が大きく下がります。過疎化が始まる人口減少は、水道事業にとって大きな経営の課題といえます。

 ●水と安全は‘ただ’の時代:今も昔も大きな偽りである  高度成長時代の日本の一時期を見て、イスラエルの作家”イザヤ・ペンダサン“が書いた本「日本人とユダヤ人」に述べた言葉です。日本の歴史を知らないで書いた本です。       水は治山治水の考え方で、水をいかに生活に取り入れるかが、日本の歴史が語っています。そこには、今も昔も多くのお金がかかっています。また、安全は、江戸時代から鎖国政策を行い国民の安全を確保しています。現代は国家予算としてGDPの1%枠内で、5兆円前後の防衛予算を出しています。ペンダサンは、自国の事情と比較して記したものです。今もむかしも水は‘ただ’どころか多大なコストがかかっています。

 ●日本国のこれからの金食い虫は‘水と安全’  第二次世界大戦後の冷戦時代、一極時代が終わり混沌の時代に入りました。その世界の新しい情勢のなかでの日本は、これまで以上の大きな防衛予算という支払いが待ち受けています。また、人口減少時代が到来して、国民生活全体に今まで経験したことのない大きな負担が襲ってきています。その一番バッターとして、象徴的にいえるのは水道代の値上げではないでしょうか。財政問題や社会保障・医療問題に目が行きがちです。しかし、水道代の問題こそ地方の自治問題も含めて、大きな問題として捉えるべきと思います。‘ただ’のように錯覚する時代から‘金食い虫’の時代になります。

 ●人口減少は健全経営の破綻 前項でも記しましたが、人口減少時代の収入源の減少問題、耐震化も含めた設備更新問題、設備技術者の高齢化が進み若年技術者の不足問題の3点が、これからの大きな経営課題です。その中で一番の課題は、人口減少による収入減問題です。この問題で既に経営破綻状態になっている自治体の水道事業は、全国各地に多く見受けられます。冒頭にも述べましたが、水道事業は装置産業ですから、人口減少での収入源はそのまま利益減となります。人口減少問題は国家の問題と思いがちですが、それとは別に個人の生活問題に直結した大きな問題です。国民一人一人が肝に銘じる必要があります。

 ●節水技術の向上や産業構造の変化  節水技術にも多くの技術があります。バルブの絞り技術で使用量も大きく変わります。また、排水の濾過装置により、水の再利用が大きく節水可能となります。更に、水そのものを大量に使わなくても出来る、洗濯物や便器などが開発されています。それ等の技術進歩が節水技術として、水道使用量の減少をもたらします。それとは別に、産業構造の変化が、水道使用量の変化をもたらしています。重化学工業は、多くの水を使用してくれます。しかし最近の日本の産業構造は、軽薄短所の産業へと移行しています。それだけ水道料の減収に繋がっているといえます。その上更に言えることは、海外への工場移転が行われる産業の空洞化現象です。水道料の大きな減収に拍車をかけています。 

●別荘地の水道事情  大型別荘地などの給水・下水事業は、独立して簡易水道事業になっている場合があります。高度経済成長の時代に大型別荘地が開発されました。それ等の大型別荘地は簡易水道事業となって現在も運営されています。40年が経過して更新する時代になっています。特に、寒冷地は凍結防止のために、地中深く埋設されています。経年劣化で継ぎ手から漏水していても、そこを探すだけでも大仕事で、その工事費も多額を費やします。高度成長時代、別荘の所有は大きなステータスとして人気がありましたが、今の時代は必ずしもそうでもありません。まして、老朽化した別荘に今の若者は拒否的な傾向があり、古い別荘地は空き家問題を先取りしているともいえます。(以上)


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