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インターネット失敗百選

ECコンサルタントがネットサービスの失敗事例を1日1個紹介しそのメカニズムを解剖。中尾政之著「失敗百選」のパロディです。

【その10】Yahoo!モバイル

2006年01月19日 | Weblog


Yahoo! JAPANの圧倒的な知名度と優位性がありながら、いまだDoCoMoやAU、vodafoneの公式メニューの牙城を崩せていないばかりか、非キャリアサイトの中ですらNo.1を名乗ることも覚束ない現状は明らかに失敗といえる。

Yahoo!モバイルの利用者が爆発的に増えなかった原因はコンテンツ不足に尽きる。

PC、Mobile問わずYahoo!のサービスモデルはコンテンツプロバイダ(以下CP)から買った情報をユーザーに「無料」で閲覧させ、そこで稼いだページビューで広告収入を得ることだが、Yahoo!モバイルには一つ誤算があった。

有力なコンテンツを持つ会社ほど、モバイル無料サービスへは情報提供に非協力的であったことだ。
理由は簡単で、PCサイトで無料配信している同じ情報が携帯では「売れる」からだ。

例えば、各新聞社はPCのサイト上で無料で記事を閲覧させているが、携帯電話では同じ記事を月額200~300円の情報料で販売している。

この小額決済は携帯電話の通話料と一緒に行うからこそ可能であるのだが、Yahoo!オークションとYahoo!BB会員以外へは課金手段を持たないYahoo!は、モバイルで特定多数向けに有料情報サービスを行うことはもともと不可能だったのである。

したがって広告収入に活路を見い出すしかなかったが、サービス開始から5年が経過した今日に至ってもメニューがたいして増えないことから、CPとの交渉、説得が不調に終わったと結論付けて問題ないだろう。

昨年10月にYahoo!モバイル内に「Yahoo!コンテンツストア」を開設すると華やかな記者会見内で発表された。

着メロ、占い、電子書籍など約60社、120種類のコンテンツが用意され、Yahoo!はプラットフォームとして決済の回収代行を担当するという。
いよいよYahoo!モバイルもコンテンツ課金ビジネスに本腰を入れるとうことらしい。

しかし、このYahoo!コンテンツストアの誕生は、モバイル上での無料サービスおよび広告ビジネスをYahoo!が諦めた象徴的な出来事といえるだろう。

2006年11月にナンバーポータビリティが始まれば、確かにダウンロードしたコンテンツを他キャリアの携帯電話に持っていったり、共通して使えるメールアドレスの需要はあるかもしれない。

しかし、仮にCPが端末のコンテンツ移行を許したとしても、その役割を果たすのはYahoo!ではなく、miniSDカードなどの記録メディアとなるであろうし、携帯版Yahoo!メールについても、Yahoo!メールアプリの対応機種が現時点でこの程度の数では、消費者を馬鹿にしているといわざるを得ない(携帯でWEBメールというのも論外である)。



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【その9】GAZOO(トヨタ)

2006年01月18日 | Weblog


まだサービス自体は継続しているようだが、開始当初に比べると、
まったく存在感も話題性もなくなってしまったという点で、失敗百選入りさせた。

次期社長候補の一人である豊田家の御曹司が2000年にGAZOOについて
収益事業にするということではなく,責任を持つということです。
などと発言しているあたりから先行きの暗さを読み取れたのかもしれない。

もともと総合的な商品を扱うECサイトとして立ち上がったにもかかわらず、
現在は自動車の資料請求サイトの体裁に成り下がっている(失敗を隠している)。

主原因は上記豊田章一郎氏の「収益事業にすることではない」発言に集約されるだろう。
人間や会社は設定した目標以上の結果を出すことはできない。

GAZOOは世界有数の資金力を持つ大企業がネットサービスで失敗した事例として
米国からももっと議論されるべきだろう。


【サービス名称】GAZOO
【URL】http://gazoo.com/
【サービス概要】インターネットによるアクセスだけではなく様々な場所で利用できる
   「車でインターネット」のコンセプトで売り出そうとしたサービス。
    カーライフを始めとしたさまざまな情報提供をするトヨタの総合Eコマースサイト。
【参考記事】
  Gazoo事業はとんとんであればいい~トヨタ取締役 豊田 章男氏
   http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/NC/ITARTICLE/20001130/2/



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【その8】クリック保障型広告

2006年01月17日 | Weblog
クリック保障型広告とは、消費者がクリックするごとに広告主から媒体サイトに広告料が支払われる広告。

広告の効果があるのかが不明確なバナー広告に比べ、確実にトラフィックを誘導できることが評価され、クリック保障型広告市場も拡大した。

しかし、

・自己クリック(明らかに不正だと思われる同一人物からの大量のクリック)
・クリックはするが何もしないで帰ってしまうお客の急増(物を買わないし会員登録も資料請求もしない)
・アフィリエイト広告(物が売れなければお金を払わなくてもよい)の登場

などを理由に広告主から敬遠されるようになり、WEB広告の表舞台からはほぼ姿を消す。

ただし、現在もモバイル広告においてはクリック広告は快調で、DoCoMoの公式メニューのランキング上げを目的とした「順位上げ」と呼ばれる携帯クリック保障広告は相変わらず売れている。

ケータイのキャリア公式メニューはユニークユーザー数で表示順位が決まり、且つ表示順位で上に行くことが最大の集客方法であるため、買おうが買うまいが集客さえしてくれれば目的達成と考える広告主がまだまだ多い。

しかしキャリアのランキングのロジック変更という大きな事件が起きる場合は存在意義が問われることになるだろう。

主流となるネット広告の移り変わり
 バナー広告
  ↓
 クリック保証型広告
  ↓
 アフィリエイト広告
  ↓
 ???



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【その7】2003年までのYahoo!ショッピング

2006年01月16日 | Weblog


最近はモール事業でようやく楽天の背中が見えてきた感もあるYahoo!ショッピングだが、2003年までは利用者から見てまだまだ魅力に足らないモールであった。

2003年までのYahoo!ショッピングはオンラインやリアルで実績のある優良店舗のみしか出店を認めない「少数精鋭主義」をとっており、店舗数、商品数ともに「来る店拒まず」の楽天を大幅に下回っていたからだ。(Internet Watchの記事によると、2003年5月の時点で、Yahoo!ショッピングは231店舗、商品数は約141万品目。一方の楽天市場の当時の取扱い商品総数は約220万点。)

当時、インターネット利用者にとって、情報量が多ければ多いほど良いのか、またはノイズの少ない激選された情報のほうが良いのかは賛否が分かれていた。Yahoo!ショッピングの伸び悩みが、前者が求められているのではないかという結論を導くひとつの材料になった。
「フリーワード」「絞込み」「価格順並び替え」という検索技術が発達したインターネットの世界では、商品点数は多ければ多いほど良いのだ。

楽天に売上げで差を広げられた状況を見れば、Yahoo!が少数精鋭主義からの方向転換をもっと早い段階でとることもできたはずだが、2003年までまったく進まなかった理由としては、その少数精鋭主義こそが楽天との最大の違いとして強調されていた点と、少数精鋭に選ばれた既得権を持つ店舗側からの市場開放への圧力があったのではないかという点が考えられる。

もうひとつ、Amazonや楽天は同一商品の新品商品と中古品がうまく連動しているが、Yahoo!ショッピングは規模が10倍あるYahoo!オークションとはまったくと言って良いほど連動していない。Yahoo!のような大企業になると悪い意味でのセクショナリズムが出てきているのではないか。

店舗側はYahoo!ショッピングとオークション双方への同時申込みが可能となっているが、サービス自体はまだまだ別のものだ。今後利用者側から見たYahoo!ショッピングとYahoo!オークションの統合が実現されるといよいよ楽天の牙城も崩れるのではないかと考える(というか、オークションの取扱高を足せばすでにYahooo!が楽天を圧倒的に超えている)。

また、Yahoo!の社員が手で登録していたYahoo!検索が、ロボット型のGoogle検索に事実上、敗れてYSTに移行したことも本件と酷似しているので近いうちに取り上げたい。


【参考記事】
ヤフー、「Yahoo!ショッピング」の出店枠を拡大。商品数で国内トップ目指す
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0513/yahoos.htm



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【その6】切込隊長BLOG(ブログ) ~俺様キングダム~

2006年01月13日 | Weblog


ネットビジネスというくくりで語っても良いのかわからないが、
間違いなく日本のEコマースに影響を与えた情報サービスだろう。

Eコマース企業がこれからブログを導入していくに際して、
俺様キングダムのような人気ブログを研究するのは当たり前のこと。

この作者である切込隊長氏は、資産数百億円をはじめとした華麗なる経歴を紹介されていたが
実はその経歴に疑惑がもたれているらしい。

嘘をつくのは良くないことだが、ポイントはこの作者が「自作自演」テクニックを使ったという点だ。
マーケティングの観点からは、自作自演それ自体は悪いことではないからだ。
(もっともそれが自作自演だとバレることは悪である)

例えば、渋谷の女子高生に謝礼を渡して商品サンプルを使ってもらい、
学校でその商品を褒めちぎってもらうというマーケティング手法は有名だが、
これは企業による「自作自演」ともいえる。

安っぽい物を立派な物に見せる、悪い物を良い物に見せる、
黒いものを白く見せる--。それがマーケティングの基本である。

山本一郎という安っぽい人間(失礼)を「切込隊長」というブランド名で世に売り出し、
数年もの間そのブランド力を維持してきたその力は、
間違いなくマーケティングのプロに匹敵し、賞賛に値する。
売れっ子芸能人でも2年も持たないことを考えれば充分な期間だ。

ネット上の自作自演によりブランドを形成するマーケティング手法を
「切込マーケティング」と命名したいくらいだ。

切込氏の失敗の要因は、言わずもがな、口コミの情報操作をしていたことが発覚してしまったことだろう。
マーケティングはそれがマーケティングであると消費者に察知されてはいけない。
特に商品スペックの誇大広告的な告知は絶対に自社(自分)で行ってはならない。

以前切込氏が
「型落ちして在庫過剰になったデジカメをアルバイトを使った
 ネット上の口コミ(自作自演)を大量に行ったことで完売させた」
という日経ビジネスの記事があったが、まさにそのようなマーケティング力を企業は求めている。(仮にそのデジカメの話が事実でなかったとしても、である)

かくして切込隊長というブランドは、消費者からはそっぽを向かれ地に落ちたが、
人間・山本氏は数年後、消費者がこの事実を忘れても良いと思い始めた時効成立時に、
「切込隊長」とは別ブランド、且つ、自作自演とは別のマーケティング手法で復活することであろう。


企業が注目するブログ、そのブログの大手の一角がひとつの役割を終えたのであえて取り上げた。



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【その5】キュリオシティ(三井物産)

2006年01月12日 | Weblog



大手商社の三井物産が始めたサービス。
昔はモールといえば楽天かキュリオかと言われたほどサービス開始時期は早く、
鳴り物入りでスタートした事業であった。

今やそんな二つのサービスを比べる人もおらず、
2005年にひっそりとYahoo! JAPANに買収されて幕を閉じた。
(買収金額は1億円少々なので、パソコン、机や人員、取引先などの資産を
 タダ同然で引き取ってもらったと見るべきだろう)

さて、失敗の原因は、商社の人間には消費者向けビジネスが創造できなかったと言えばそれまでだが、
要はモールにとってお客様は、店舗側なのか利用者側なのかを履き違えたということだろう。


1、売れもしない時期から、店舗側の参加料金が高かった(三井物産だから契約が取れた)。
 この高い料金設定が「お客様とは、利用者ではなく店舗です」のようなスタンスに陥ったのだ。

2、店舗側ばかり向いた結果として、利用者からみて画面遷移等がわかりずらく使いにくいまま改善されなかった。

3、その結果として、リピーターも増えず、ブランドイメージも浸透しなかった。楽天が独走した。
 (IT業界以外でキュリオシティって知ってる人います?)



【参考記事】Yahoo!、キュリオシティを買収
  http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0503/31/news061.html



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【その4】Lモード(NTT)

2006年01月11日 | Weblog


NTTがNTTドコモ「iモード」の二番煎じを狙ったiモードの固定電話版サービス

家庭の電話機から情報閲覧・メール利用ができるというもの。

2000年当時は"iモードは儲かる"という声もあって、
このLモードにも期待が集まり、私もCP(コンテンツプロバイダ)として説明会に参加してしまった。

携帯電話に続く新しい情報の窓口ができるものと期待したがまったく普及しなかった。

不振の理由
1、WEB/メール機能搭載の携帯電話を一人一台持つ時代にLモードのニーズはなかった。

2、電話機の買い替えが必要であった。
  (わざわざ買い換えてまでほしいサービスではない)

3、認知不足。


NTTとしては失敗の原因は電話機端末の売価が高かったことや
コンテンツ不足と言いたいところだろうが、これはやはり
NTTが単にiモードの二番煎じを狙っただけの短絡的な戦略が
原因だろう。

しかし私はこのサービスは流行するのではないかと当時思ってしまった。
NTTが莫大なTVコマーシャルを流し、一家に一台Lモード対応電話機が普及する
主婦やお年寄りが操作するという日本の家庭の姿を
想像してしまった。実現には至らなかったが……。





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【その3】イーベイ (ジャパン)

2006年01月10日 | Weblog



1、サービス開始が遅れた。
2、金を払う価値がない(コミュニティが成熟していない)時期から有料制にした。
3、自らの成功体験に固執した。

以下、すべて栗潔氏の記事(http://www.itmedia.co.jp/enterprise/0203/11/02031188.html)からの引用



イーベイの日本進出はヤフーに遅れるところ5カ月だったが,この5カ月が取り返しのつかない失敗の原因となってしまっというわけだ。

 また,ヤフージャパンが無料制で会員数を伸ばす中,イーベイジャパンは米国と同じ有料制に固執し,キャッチアップできる唯一の機会を逃してしまった。その後,2001年に無料制を採用したがあまりにも遅すぎた。既にコミュニティの価値で大きな差をつけられてしまったからだ。

 それは,イーベイが米国であまりにも成功しすぎたがゆえに,チャレンジャーとして戦うことに慣れていなかったためだろう。つまり,同社は,自らの成功体験の犠牲となってしまったわけだ。ガートナーのレポートにおいても,業績が悪化した企業の原因分析に,「victim of its own success」という表現が頻繁に登場する。

 例えば,前述の有料制の問題にしても,ヤフージャパンが先行者,無償サービス,(日本国内における)知名度という点で圧倒的に有利な状況の中で,イーベイ側がさしたる策を採らなかったのは,米国ではヤフーが無料オークションを提供していながら,最初から有料制であったイーベイが勝利を収めたという成功体験から来た驕り以外の何者でもないだろう。

 このような教訓は,成功の後に新規市場に進出しようとするあらゆる企業に当てはめられるだろう。例えば,iモードの海外展開を進めているNTTドコモなどだ。個人的には日本発のテクノロジーとして,iモードには成功してほしいと思っているが,そこで,最大の障害となるのは,ドコモ自身の日本での成功体験ではないかとも考えている。




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【その2】先代ライブドア(前刀社長)

2006年01月06日 | Weblog



堀江社長が買収する前の、無料プロバイダのライブドア(前刀禎明社長)。

莫大な宣伝予算に加え、「無料プロバイダの老舗」としてのネット系雑誌媒体にも多く取り上げられ、ネット利用者の間での認知度は高く、契約者も一定件数には達していた。
しかし、堅実な有料プロバイダと併用している利用者が多く、実際にライブドアを重宝している人は少なかったようだ。

失敗の要因として、
1、「無料」と謳いながら実際はアクセスポイントまでの電話料金が発生した。
  (当たり前のことだが利用者はすべてコミコミで無料か否かを判断する)

2、ADSLの普及(ダイアルアップの縮小)
  インターネットに接続するための電話番号を、特定の通信事業者のもの
  に限定させて得られる手数料が目減りしていった。

3、バナー広告が売れなかった
  「無料」を旗印に集めた利用者は、客層も悪い。(消費活動に消極的)
  ブランドイメージ的にも、広告媒体としての価値が低い。

4、社長の前刀氏がやり手だった(投資家からカネを引っ張ってくる力がある)
  これは通常よいことなのだが、同社に限っていえば、
  カネがなくなればまた集めてくればいい的な驕りがあったのではないか。
  そうでなければあんなに大量の広告出稿はできないであろう。


現在、前刀氏はアップル日本法人の社長に収まっている。成功する確率が極めて高い「おいしい職」である。
自分や会社を売り込むプレゼンテーション能力の高さを物語っている。
いつかまた起業するであろう。ぜひ今後もがんばってほしい。



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【その1】アカウントアグリゲーション

2006年01月05日 | Weblog
*概念図は株式会社サイオのサイトから転載

米国発祥のアカウントアグリゲーションと呼ばれるサービス。
複数サービスのパスワードを一括管理してくれるというもの。

銀行やgooなど多くの事業主がいまだ提供しているが、5年前あたりにNRIが参入するときに大々的に報じられていたのも鑑み、2006年時点で日本では定着しなかったサービスと言わざるを得ない。

どうして流行しなかったのだろうか?

1、IDとパスワードをどこかに預ける行為がそもそも気持ち悪い。自分で管理したい。

2、通常パスワードは変更できるので、日本人は、どのサービスのパスワードも同一に設定しているのではないか?
  (つまりIDのみ覚えればパスワードを覚える必要はない)

3、そもそも2~3つ程度のアカウントであれば記憶できる範囲内。

4、ブラウザに記憶させているので記憶する必要がない(オートログイン)。

5、そもそもアカウントアグリゲーションという存在を知らない。


いずれにしても、こういったエンドユーザーに普及していない機能は、
BtoBで東京三菱銀行などの大企業に売りっぱなしにするのが賢いですね。



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