Corugen's Workplace

日常の風景をつづり、社会の非道を断じ、自らの趣味を披瀝するアナーキーな広場

■知人の死

2010年06月25日 | 001近時随想
最近、知人友人の訃報に触れることが多い。病に倒れて帰らぬ人となった先輩、自死を選んだ救われない若者、孤独のうちに死出の旅立ちをした朋友・・・・人はいつか死ぬ。でもいずれにしても残された者は、その悲報に接したり、骸(むくろ)に相見えた瞬間、衝撃を受け、悲嘆に暮れ、あるいは原因に対する慟哭と怨念を抱き、そして時間の慰撫を受けながら、その事実を意識無意識に受け入れ、受け入れながら忘却していく。忘却できるから生きていけるとも言えよう。

▼一緒に仕事をした先輩、懇意にしてもらった先輩、ある意味同志でもあった先輩お二人が、相次いでこの世を去った。これはいずれも病。でも定年過ぎても嘱託として社業や我々後輩の指導に力を尽くしてくれたその先輩方はいずれも60代半ば。これから自分の時間を謳歌されるべきだったところが・・・・・一人はガンが見つかったときは末期で手遅れであったし、もう一人はあるプロジェクトの終盤で病に倒れ、3年強の闘病生活の末に亡くなられた。東京と福岡で離れていたこともあり、葬儀にはついぞ行くことができなかったが、このお二人の死はとにかく悲しいの一言に尽きる。そして、お二人とやった仕事のあれこれを思い出しては、自省するのである。また、こうも思うのである。今度は先輩方が私にしてくれたように、後輩たちに与えていこう・・・・・・・知識を、知恵を、人間としてのあたたかさを。関係を作ることの大変さと喜びを。

▼自死を選んだ若者・・・・・これは昨年の今頃の話だ。T大を出て、会社に入って、でも世間ずれしていた挙句に、悪さもして、配転させられ、元気でやっているかと思えば最期は首を吊って the end 。将来何やりたいか?と問うたところ、彼は、「僕はCEOになりたい」という。「なぜ?」と質すと、「経営をやりたい、人の上にたって仕事がしたい。それだったらCEOでしょう」と云う。「社長じゃないのか?」と更に・・・・・・まあ、社長だろうが、CEOだろうがどちらでもいいが、結局、彼は、人の上に立つ以前に、与えられた仕事すらもできていなかった、組織として通すべきルールも身に着かなかった、組織への適応においてかなり問題があった、そんな彼がCEOというのは片腹痛い。女性との交際もマニュアル本を臆面もなく取り出してひけらかし。「お前、その前に童貞捨てろよ」とも云いたくなったが。もう止めた。そして最期は周囲への期待にこたえられない自分に嫌気が差したというような趣旨の遺書を残してあの世へ行った。私の中では近年珍しい思いだが、何の同情も悲しみも起こらなかった。寧ろ迷惑かけまくりの挙句に、何の義理もない会社の同輩後輩たちに葬式の手伝いをやらせたことへの怒りだけが残った。非常ながらある意味、彼の選択は間違ってなかったとすら思った。蓋し、この先生き永らえていても、20代後半の彼には自省と生き方における方向転換は出来なかった。人間やり直しは何度でも出来るなんて美辞麗句はあるが、三つ子の魂百までもという言葉の方が経験則的に納得する。そういうことも踏まえて、彼が入った会社に混乱を巻き起こし、彼自身の死を招いた一番の戦犯は結局この彼の親であると。<会社に来て彼の会社での話を聞きたいなどと云って、最期は納得しました、彼自身が選択したことですし>などとマヌケなことを云っていたこの親こそがこのような騒動を作り出したのだ。

▼孤独死というのは、貧困の末に働くことも出来ず病院にいくこともできず、ひとり部屋の中で孤独に最期を迎える、テレビの中で報道されることだと思っていた。本当にお恥ずかしいことだが、身近なことと思ってなかったのだ。しかし、その報は突然やってきた。つい数日前のことだ。
 亡くなった彼と特に親しかった先輩から<それ>を知らせるメールが来たのだ。先輩自身も親族の方から連絡を受けた際に聞いた限りの情報だったのだが、亡くなって10日も経ってからの発見だったという。遺体の状態はここでは書かないが想像されるとおり。葬儀もせず、荼毘に付すだけ、それもごく近い身内だけで。もはやかける言葉も、友人間で弔いに寄せる言葉すらも出てこない。
 彼とは仕事で知り合った。その後、彼は類似の業種の中で転職を何回かしたが、付き合いは続いていた。最後に会ったのが、2,3年前だったと思う。その間に一体何があったのか?部屋でひとり最期のときを迎えるような窮地が彼にあったのか?病気?貧困?まったくわからない。
 彼と交誼を結ぶ前述の先輩や友人たちと今度会ったとき・・・・・・おそらく誰も触れたくもない、でも何か言わずにはいられない「彼のこと」について、話をすることになるのだろう。でもそれは今回非業の死を遂げた彼にしてあげられる弔いなのだと思う。

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