アンファン宣言の取材記事ブログ

アンファン宣言 新川明日菜と光本歩が
子どもの立場の声を取材記事にしてブログに配信していきます。

ケース8 父子離婚家庭 ~ぼくはお父さんみたいになる~

2010-04-20 15:19:27 | 日記




こんにちは。光本歩です。


昨日はNPO法人Winkがつくった記念日、「養育費の日」でした。
アンファン宣言もトークセッションを行いました。
会場に来ていただき、このブログをみてくれている方も
いらっしゃるかもしれないですね。



本日はアンファン宣言の取材が始まって以来初の、父子家庭の男の子に取材しました。



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颯太くんは現在小学5年生。
颯太君のお父さんは学校の先生をしており、
私が塾を立ち上げる際にお世話になった方です。
そういうわけで、私は颯太君のお父さんに、よく話を聞いていました。



【お父さんに聞いたこと】

「9年前に私達夫婦は離婚しました。颯太が2歳の誕生日を迎える前のことです。」
お父さんは話してくれました。

「お互い教師をやっていて、仕事が一番だったんです。」
夫婦共々、小学校の先生。
そして当時は別の小学校でお互いに6年生の担任をされていました。

「颯太が産まれたにも関わらず、家族の時間はほぼゼロ。もともとどちらも育児休暇をとる予定はなかったんです。むしろ妻は『この子が産まれても仕事がしたい・・大丈夫かしら』と子育てよりも仕事復帰を心配していたんです。」

颯太君を妊娠したことがわかったときに、夫婦は新しい命が宿ったことにとても喜んだと言います。しかし、

「ずっと教師になることが夢だったし、自分の生徒も自分の子どものように可愛がっていたから、辞めたくも休みたくもなかった。」

私も将来の夢は学校の先生になることでした。
だから、その気持ちは分からなくもありませんでした。

でも、育てられるかどうかという不安な気持ちがあったのに、“颯太君を産んだのは何故?”私は聞いてみました。

「本当に無責任を承知ですが、率直にいうと、中絶に抵抗があったからなんです・・」

私は寂しく思いました。もちろん颯太君の妊娠は嬉しかった。でも、それが仕事との兼ね合いを考えない結果だったこと。お父さんは振り返って言います。

「颯太には本当に申し訳ないことをしたと思っているし、反省している。だからこそ颯太は僕の手で、必ず幸せにします。」

夫婦はそうして、颯太君に手をかけられない日々を原因に喧嘩が続いたと言います。
「颯太のことは2人とも愛している。でも、すれ違いからパートナーを嫌いになってしまったんです。」
その後、夫婦は離婚しました。

「颯太は僕たちのことを好きではないと思う。」お父さんはそう言います。
「でも仕方ないと思っている。好きになってもらう資格はないんですよ。」



・・・・さあ、颯太君に話を聞いてみましょうか。




【リコンしてないみたいなんだよ!】


颯太君は1人でいる時間がとても多いです。
お父さんは小学校の先生を続けていて、朝も早く夜も遅い。

寂しくない?と聞いてみました。
「寂しくないよ」

ママとは会ったりするの?
「おうちが近いから毎日会うよ。週に一回一緒に御飯も食べるし。リコンしてないみたい!パパとママはとってもなかよしだよ。」

そっか!離婚したのはパパにきいたの?
「ぼくが2さいくらいのときにリコンしたんだよ~。ぼく覚えてるよ!」

私はとても驚きました。

覚えてるの!?すごい!!
「あのときはパパとママはいつも喧嘩してた。リコンしてからのほうが仲良しだよ。リコンしてよかった~。」

きらきらした笑顔で素直に話す颯太君。
同時に颯太君は、とてもしっかりして見えました。

「ママとはお出かけもするよ。その時ぼくにおこづかいもくれる。パパにもいつもおこづかいを封筒にいれて渡してるよ。」

養育費の事です。お父さんから聞いていました。月に一度5万円を元妻からもらっているんだそうです。『子育てより仕事を選んだ身分ですから、お金くらいはきちんと』と。




【もういやだって思わないよ】


「もっとちっちゃい時は、ママがいないのがとっても嫌だった。」
颯太君は教えてくれました。

「なんでママはいないのって、パパに聞いたらお仕事だって嘘つかれたの」
颯太君は全て知っていました。パパが嘘をついたことも、ママは戻ってこないことも。

颯太君は何てパパに言ったの?
「うそつきはどろぼうの始まりだよ~って(笑)」
笑いながら颯太君は言いました。

それって何歳くらいの時?
「小学校はいった時くらい。」

子どもは良く覚えているものですね。
それに親のことをよく見ている。
昨日の養育費の日のイベントでもお話しましたが、まさに“子どもは親が思っている以上に子どもじゃないな”と改めて感じました。

「でももう5年生だし、放課後クラブもあるから寂しくない」

パパに早く帰ってきてほしいとか思わないの?
「パパはお仕事忙しいから。ぼくの先生もいつも“ざんぎょう”してる。パパもおんなじ。」




【お父さんへの気持ち】


一番聞きたいことを聞いてみます。
“颯太君、お父さんのこと、好き?”

お父さんは、先述にもあったように、「颯太はお父さんが嫌い」と思っています。
颯太君の本当の気持ちは・・・


「好き。お休みの日はキャッチボールしたり、一緒に掃除したりする。ママにも会わせてくれるし」


私はほほえましかったのと同時に、“ママにも会わせてくれるし”という部分に胸を打たれました。あえて聞きませんでしたが、颯太君の中には「リコンしたら普通はママに会っちゃいけない」というイメージがあるのかもしれません。


また、子どもたちに取材すると、親の職業に憧れるケースが多いと感じます。
颯太君もそんな一人でした。

「パパみたいに先生になりたい」

どうして先生になりたいの?
「パパと一緒に働きたい」


颯太君のお父さん、颯太君はパパのことが大好きなようですよ。



アンファン宣言では、子どもたちに必ず聞く質問を用意しています。
颯太君にも少し噛み砕いて聞いていきました。
最後にこんなことを聞いてみました。


「颯太君のパパとママのリコンってさ、颯太君にはどんな影響があったと思う?寂しくなったとか、色々あると思うんだけど・・・」

颯太君はきっぱり言います。
「リコンはぼくには関係ない」

小学校5年生の子どもが言う言葉とは信じられませんでした。

きっと影響はたくさんあったと思います。
心の中にそれを上手く隠しているのかもしれません。



もちろん子どもにとっての親は、お父さんとお母さんの2人です。
今まで言ってきたように、その2人こそが一番信頼できる人で、一番近い存在の人で、一番大好きな人です。


でも、親の人生が子どもの人生ではないし、子どもの人生が親の人生ではない。


小学校5年生の颯太君は、立派にそれを理解しているようでした。