アンファン宣言の取材記事ブログ

アンファン宣言 新川明日菜と光本歩が
子どもの立場の声を取材記事にしてブログに配信していきます。

ケース6母子離婚家庭 ~新たなスタート~

2010-03-21 00:53:47 | 日記


こんにちは、光本歩です。
今日はまた、私の教え子を一人、紹介したいと思います。
中学3年生の小澤舞花さんです。


舞花さんはとても明るく元気な女の子。
そんな彼女はクラスでも人気者です。


その風貌からは両親の離婚と言った悲しみを微塵も感じさせません。
話を聞いていくと、悲しみを乗り越えて彼女なりに頑張ってきた過去が明らかになっていきました。



*******************




舞花さんの両親は、舞花さんが11歳のときに離婚しました。
中学3年生と言えば15歳。
離婚からの月日が浅い分、今は離れて暮らすお父さんの記憶も鮮明に残っています。



【お父さんはキライっ。】


「お父さんはキライっ。」と、よく舞花さんは言います。

お父さんは養育費もきちんと払っていて、月に一回の面会交流もあります。
それでも舞花さんの中でお父さんのイメージは良いものではないようです。

「なんでお父さん嫌いなの?」

『家族のことを考えないから』


実は、舞花さんのお父さんと私の父はよく関わりがあります。
それは同じ「釣り」の趣味があり、釣り公園に行くと会うのだそうです。
私の父からは
「娘がいつも塾でお世話になっています。」
「娘が無事高校に合格したと聞きました。ありがとうございました。」
と彼女のお父さんに言われたよ、なんてことをよく聞いていました。


それを聞けば、お父さんも子どものことをきちんと考えている・・・と思えるのかもしれません。
でも、実際には舞花さんに伝わっていないのです。
それは舞花さんが悪いのではなく、きちんと伝えられなかった大人の責任となるのでしょう。




【冷めた感情】


親の離婚が自分の結婚観に影響を与えたと思う?

『思わない。』

離婚を聞いた時どう思った?

『べつにいいと思ったから。』

一人親家庭に育って良かったって思ったことある?

『ない。』

親の恋愛ってどう思う?

『勝手にすればいいと思う。』


舞花さんに親の離婚の本質やそれにまつわる話を聞くと、こんなに冷たく返ってきます。
それはいつもの優しくて気兼ねなく話かけてきてくれる舞花さんとは全く違う形相です。
ひしひしと感じるのは“親の離婚は私に関係ない”と割り切っている感情です。




【それでも見せる悲しい一面】



そんな感情の中でも、舞花さんらしい解答も返ってきました。


親の離婚が自分の人生の環境に影響を与えたと思う?

『うんうん。家が静か。』

寂しい?

『相手にしてもらえないときもあるから・・・』

・・子どものことを考えてほしいというSOSがここからもまた聞こえました。




【お母さんとは仲良し】



舞花さんが塾に来ている時、お母さんとよく電話をしています。

『迎えにきてー!』
『忘れ物しちゃった!』

お母さんと話している舞花さんはまるでお友達と話しているかのようです。
親子でプリクラをとることだってあります。



私には舞花さんとお母さんが仲良しな理由が少しわかります。




【舞花は宝物】



舞花さんのお母さんが、舞花さんの志望校のことで相談にきたことがありました。

『どうでもいいといって適当に高校を選んでいたけど、将来を見据えて行きたい高校に行かせたい。』

その言葉を聞いて、志望校の変更を進めました。

そのお母さんの目は真剣で、心から舞花さんのことを考えているのが手に取るように分かりました。
親にとって、子どもは宝物なのです。だから、後悔してほしくないんだと仰っていました。


舞花さんは見事志望校に合格し、公立高校への入学を決めました。

舞花さんは「兄弟いるし、親離婚してるから私立の併願をしたかったけど、お金かかるしやめた」と言います。

それでもお母さんの気持ちは届いていました。

『合格したよ!』

弾けるようなその言葉には、お母さんが娘のことを一緒に考えてサポートした軌跡が表れていました。




【中学校の卒業式】



3月19日、舞花さんは中学校の卒業式を迎えました。

そこで、舞花さんのお母さんに声をかけられました。

『本当に・・・ありがとうございました!!良かったですよ~!!!!』

私の体を揺さぶりながら、満面の笑みで言ってくれました。
舞花さんの節目に対する心からの悦びを感じました。



卒業証書を手にした直後、舞台を降り、座席に戻る途中で舞花さんはお母さんに向かって一礼しました。
育ててくれてありがとう、という感謝の気持ちを込めてです。

卒業を迎えた舞花さんの目には光るものがありました。
もちろん、その姿を見るお母様にも込み上げてくるものがあったようです。


辛いこと、悲しいこと、受け入れられないことも一生懸命舞花さんなりに認めようとしてきたのです。
心も体も大きく成長した舞花さんを私も頼もしく感じました。

お父さんのことも、まだまだ「キライっ」と言ってしまうかもしれません。
でもそれは子どもから大人への率直な言葉。
離婚は元々マイナスイメージのものであり、子どもの中で完全に消化し、生きる糧として考えられるようになるまでには時間がかかるのです。





両親が離婚し、新たな家庭環境をスタートしてから早4年。
そしてまた新たなスタートラインに経った舞花さん。

将来の夢は、看護師になること。
それを達成したら結婚し、子どもは3~4人欲しいそうです。

『多い方が楽しい!楽しいのが一番だしっ!!』

きっと舞花さんの未来像は明るく楽しい家庭像なのでしょう。




ケース5母子離婚家庭~ふたりでも幸せ~

2010-03-13 11:23:30 | 日記
今回、私新川明日菜が取材をしたのは
山川美奈ちゃん、中学校1年生です。
今回美奈ちゃんと会うのは初めてでした。
お母さんからは、自分の気持ちを沢山表現するタイプではないし
一人っ子だから私には言えない気持ちがあるかもしれない。聞いてみてね。
と言われていました。

初めて会った美奈ちゃんはたんぽぽのようにふんわりとした天然の雰囲気を
かもちだす女の子。バレエをやっているせいかスタイル抜群で顔立ちも美人。
人見知りなのになぜか親しみやすさを感じるとても素直な女の子でした。


“取材”と録音機を取り出すと、少し緊張した面持ちになった美奈ちゃん。
緊張をほぐすためにまずは、中高生に行っている「家族観・結婚観」を調査する
アンケートを書いてもらいました。

【離婚はしたくない】

よし、じゃあアンケートで気になるところから聞こうかな。
☆項目と美奈ちゃんの回答

・もしいま妊娠したら産む NO
・降ろせと言われたら一人でも産む YES
・結婚願望が強い YES
・結婚はしたくないが子どもは欲しい NO
・理想の夫婦は自分の親だ NO

もし妊娠して降ろせと言われたら1人でも産むは
YESじゃん?それはどうして?
「だって自分の子どもだから、生きてるんだから産んであげなきゃ」
とハッキリとした口調で答えた美奈ちゃん。
私としては、結婚願望が強いにYESが意外だったんだけど!」と私の発言に
「結婚はしたい」と照れながらも。

【お父さんはいなくてもいい】

理想の夫婦は自分の親だ にNOはなんで??
「離婚したくないから!」
あまりに素早くハッキリと答えたので思わず私も取材を忘れて
「そうだよねぇ!!!」なんて答えていました。

寂しいなぁとか、お父さんがいればいいなとか思う?
「うーん、小さい頃はお父さんがいれば遊んだりできたなぁって、
思ったけど今は怒られるときに2人から怒られるのは嫌だから
いなくてもよかったかなって(笑)」

思った以上に美奈ちゃんはお父さんへの執着心はない様子。
お父さんはいなくてもいいというのは心の底から出ている
本音だなと私は感じました。それほど美奈ちゃんは素直だし真っ白な女の子だからです。
今までの取材では「心の傷」を追った子ども達の現状を紹介しましたが、
美奈ちゃんのように「傷のない姿」も少なからず存在するケースです。
大人が思ってる以上に、子どもは大人だしケロッとしているんです。
そもそもお父さんという存在が初めからないのだから執着心もあるわけないんですけどね。

「友達の家を見て凄く羨ましくなるとかもない。
でも“おもしろいお父さん”はいるといいなぁって思う。
友達のお父さんでおもしろくてよく遊んでくれるお父さんがいるんだよね。
それはいいなぁって思った。
お出迎えとかがすごいんだ!おぉ、いらっしゃい!みたいな元気でおもしろい感じ」

【寂しいけど、ひとり親でも恵まれている】

「美奈ちゃんは、結婚したらどういう夫婦になりたい?」
「うーん、どうなんだろ。働いてみたいのはあるけど子どももお母さんが
家にいないと寂しいだろうし。どっちかといえば家にいてご飯作ったりしたいな」

それはさママが仕事してるじゃん?おうちにいないことも多いし
寂しいってのがあったりするの?
美奈ちゃんのお母さんは大手マスコミに働くキャリアウーマン。
仕事もこなして美奈ちゃんを育てています。
「うん。友達の家は家に帰ったらお母さんがいて、憧れる」
でも経済的に悩んだことも、親の離婚で悩んだこともない。
とアンケート回答した美奈ちゃんにとって、ママは学校のこと、相談、なんでも話せて友達のように仲良しな存在。
ふたりを見ていても信頼関係が深いんだなぁと温かい気持ちになります。

【親の離婚について聞き出しにくいことはある】

お父さんのこととか聞いてもいい?
答えたくないこととかはいいからね。

ママとパパはいつ離婚したの?
「パパとママが別居しはじめたのがうちが1歳くらいで
離婚したのが2歳くらいだったと思う。」
それはママから聞いた情報?
「ううん。お父さんと会ったときに聞いた」
養育費ってわかる?
「わかんない…あっでも今でも月に5万円送られてきてるってママが言ってた」

アンケート項目に
・親の離婚に関して聞きたくても聞けないことはありますか?
の回答に「今までママとあまりパパの話をしなかったから
聞き出しにくいことはある」との回答。
でも私は、その“聞き出しにくいこと”の詳細は聞けませんでした。

じゃあ、離婚した理由を親から伝えられたことはある?
「ない、お父さんからちょっと聞いて、結婚してしばらくは
仲良かったけどお父さんに他に好きな人ができちゃって、それで離婚したって言ってた」
ママとは何も話してないんだ?「うん」

【10年経ってはじめて会ったパパは…】

話をしている美奈ちゃん宅のダイニングテーブルには1冊の本と、その間に
挟まった1枚の写真。そこには美奈ちゃんとパパが2人で写ってる写真がありました。
美奈ちゃんは去年の8月、10年ぶりにお父さんと会いました。

パパと会ってみてどうだった?
「もうちょっとカッコイイかと思った(笑)」
と、なんとも間の抜けたかわいい回答に2人で大爆笑

なんでさ、会うことになったの?だって10年も会ってなかったわけじゃない?
どういうきっかけで会ったの?
「ある日、突然ママからお父さんが会いたいって言ってるんだけど会ってみる?
って言われて。それまではこっちが会いたいって言ってもパパが、まだ時間をおいたほうがいいって会わなかったから。」

そういう話は前からママとしてたんだ?
「うん、時々ね」

どう思った最初?
「最初は会いたいなって思ったけどなんか、だんだん緊張してきて
やっぱやめればよかったかなって思ったりして」
「会ったのは去年の8月」
どうやって会ったの?
「品川で待ち合わせして、ママと3人でご飯食べて、それからママは仕事に行って、
ふたりで水族館行ったり喫茶店みたいなところに入って話したりした。」
どうだった最初さ緊張するじゃん?

「なんか10年も会ってないから緊張するなぁとか言われたけど。
お父さんがどういう人か知りたかったし、会えたのはよかった。
ママが面食いだからもうちょっとかっこいいと思ったんだけど、
あっ普通だなみたいな(笑)」

パパとはまた会いたい?
「うーん微妙…」
なんで?!
「なんか気まずい。なんか慣れるまでに時間がかかるから人と」
「水族館行ってカフェ行って、話して、でも時間があまっちゃって。
どっか行こうかって、すごく子ども向けのアトラクションに乗って、またカフェに入って
みたいな(笑)ふたりとも口下手で似てるから。
パパは今再婚していて妹が2人いるの。だから妹には会ってみたいな!
でも今はメールのやり取りもしてないよ、大阪に住んでいるの」

【お父さんって実感はできない】

親の離婚が自分の結婚観に影響を与えたと思いますか?の質問
「いやっ、あーでも親が離婚してるからそのぶん自分が
結婚したら仲良くしたいなってのは思うけど、そんなに影響はないかな」

「会ってもこの人がお父さんなんだってわかんなくて。
お父さんが家庭にいることが想像できないし(笑)」

って、おっとりした美奈ちゃんから想像もつかない
発言が出て私は少し驚きました。でもお父さんの話をする美奈ちゃんは、
楽しそうでどこか照れくさそうでもあります。
でも私はすごく共感するところがありました。
そうだよね、物心ついた時からママとふたりが当たり前なんだもんね。
お父さんなんて実感できるわけはない。

「友達の家にお父さんがいるのは、お父さんだってわかるけど
いざ自分の家にお父さんがいたとしても実感湧かない。
この人誰?どんな人?みたいな」

「この家に引っ越したのは小学校2年生、元々は同じ地域のマンションにいて
そこには友達もいっぱい住んでたけど、やっぱりおばあちゃんとおじいちゃんが隣にいるほうがいい」
今美奈ちゃんはおばあちゃんとおじいちゃんのお宅の隣に素敵な一軒家を立てて
ママとりく君(犬)と3人で暮らしています。

【聞けなかった少しの本音】

この取材で私がわかったことは、両親の離婚によって美奈ちゃんが傷を負ったり、
辛い思いをしていないということ。
それはママが仕事を頑張って、経済的にも不自由を感じさせずに育てているから。
そして一緒にいられる時間は、相談や悩みを聞いてあげ、手の込んだ料理を作ってあげ、
何よりも美奈ちゃんを一番に考えているから。
私から見ても「こんなママだったら幸せだろうな」と羨ましく思うほんとうに素敵なママ。
そして美奈ちゃんはその愛情を受けて真っすぐに素直に育っています。

もちろん、おばあちゃんとおじいちゃんのサポートや、地域の家庭との繋がりも支えになっていると思います。
“ひとり親”というのは決してマイナス要素ではありません。
大切なのは親がどうあるか。どう愛情を注いであげれるか。
そして地域や学校で多くの大人が連携して子どもに関ってあげられるかが重要です。
“ひとり親”でも幸せに育つケースは沢山あります。

美奈ちゃんの寂しいの原因は
“パパがいない”ことにはなく、“一人っ子”という理由みたいですし。
でも美奈ちゃんには弟のような存在のりく君(犬)がいるから大丈夫みたいです♪

でも最後に1つ…。
アンケート項目に

親や大人に対して思うことは何ですか?
(子どもの立場からのほんとうの気持ち)

という質問があります。そこに書いてあった美奈ちゃんの回答は

「自分の意見ばかりおしつけないで。子どもの話もきいてほしい。」

これはどういう意味?と私が聞くと
「うーん…でもママいるから…」と美奈ちゃんはママを気遣って話してくれませんでした。

パパに対してなのか、ママに対してなのか、それとも他の大人に対してなのか、
わからなかったけれど、美奈ちゃんなりに感じている気持ちはあるんだと思います。
私は当事者として近い距離で取材をするけれど、それでも聞けないことも、踏み込めない
こともまだまだあるのです。
もし、また話をできる機会があれば、その時は内緒で教えてもらおうと思っています。