その日、マクロスシティはいつもよりにぎやかだった。
今日はミンメイのコンサート。千秋楽だ。
会場周りは溢れんばかりの人、人、人。
「こんなに大勢の人にもまれるのも久しぶりだわ」
輝の後ろを歩きながら未沙が言った。
「そうだな。他の都市からも大勢来ているから余計だな」
無理も無い。地球でミンメイの生の歌声が聴けるのは今日で最後なのだから。
「きゃっ!」
人に押されて未沙がよろけ、輝の背中にしがみついた。
「おっと。大丈夫か?未沙」
顔だけ後ろに向けるようにして気遣いの言葉を掛ける。
「ええ。ごめんなさい」
未沙はすぐに姿勢を立て直した。
「こんだけ人がいるんじゃまともに歩けないよな」
ほら、と言って輝は未沙の手を握りしめた。
「確か前にもこんな事あったわね…」
寄り添い歩きながら未沙は何かを思い出した。
「そうだっけ?…ああ、『小白竜』初日の時だ」
あの時は輝がよろけて未沙のお尻にぶつかったのだった。
「『誰がアンタの尻なんか触るかよ』って、言ったわよね貴方」
拗ねるように軽く睨みあげた。
しかし輝はそれに臆する事も無い。
「今じゃ尻だけじゃなくあちこち触らせてもらってます」
輝は開き直ったようにニコニコ笑っている。
「もう!そういうこと人前で言わないでよ!」
未沙は顔を真っ赤にした。こういう話題を人前でするのはまだ抵抗がある。
「誰も聞いちゃいないって」
ようやっと入り口にたどり着き、席へと案内された。
ミンメイが輝達に用意した席はステージが正面見える3階特別観覧個室だった。
「『恋するニワトリ』歌ってくれるかしら?私、あの歌大好き」
ステージ周辺にはライト効果の為のスモークがたちこもっている。
もうすぐ開演だ。
「考えてみれば私、ミンメイさんのコンサートは初めてだわ」
なんだかドキドキする、と未沙はずっとはしゃいでいる。
そんな未沙の姿を見て輝は素直に『可愛い』と思った。
ふっと照明が落とされ、ハミングが流れ出した。
そしてハミングが途切れた一瞬。
「WELLCOME!!」
ミンメイの歓迎の言葉が会場に響き渡った。
続いてエレキギターがかき鳴らされ、『Parachute Limit』のイントロが始まる。
上手からミンメイが走って出てくると、観客が一斉に黄色い声をあげた。
中央で立ち止まり、頭の上で手を叩きリズムを取ると、観客もそれに合わせて手を叩いた。
どこまで行くの水晶の瞳 ささやかすぎる勇気を秘めて
光の果ては限りなく 超高速のイアリングが鳴る
歩きながら、くるくる回りながら、とても楽しそうに歌うミンメイの姿がそこにはあった。
気がつくと未沙も笑顔でリズムを取っていた。
もう君をどこへも逃がしたりしない
そう。逃がしたりしない。逃げたりしない。
「LaLaLa,LaLa!」
エコーをかけたミンメイのコーラスを合図に伴奏が止まると大きな歓声と拍手の音が響いた。
「今日は来てくれてありがとー!みんな、楽しんでねー!」
歓声は止む事が無く、あちこちからミンメイを呼ぶ声も聞こえた。
続いて歌いだしたのは『GO-GO-GIRLS!』。
「この歌聴くと女って強ぇ~って思うよ」
唐突に輝がぼそっとつぶやいた。
「強くて悪かったわね」
脹れるように未沙が答える。
「悪くないです。全然。はい」
アタシ綺麗になるの オトコ振り返らせりゃFEEL SO GOOD!
「綺麗よね、ミンメイさん」
未沙が感嘆の言葉を発した。
「そうだね」
とても綺麗で、とても輝いて、そしてとても幸せそうだ。
盛り上がっている観客席を見渡すと、やはりミンメイは音楽に愛された人間なのだと感じる。
---歌を取り戻してくれて、本当に良かった。
輝は心からそう思った。
この後『恋するニワトリ』と数曲が演奏され、一旦袖に消えたミンメイが衣装を変えてステージに戻って来た。
アルバムのジャケットと同じ、白のロングドレス。
中央に用意された椅子に座り、スタンドマイクを寄せる。
「少し疲れたぞなもし」
冗談交じりのMCが観客の笑みを誘った。
アコースティックギターがイントロを爪弾き、ミンメイもタンバリンを持ってリズムを取っている。
僕の世界はこの小さな町 君の匂いは噎せるように溢れる
怖い怖い話の後 痛い痛い胸のひだに当てた暖かい手のひらが愛しいけれど
『小さな町』が演奏されている頃、キャシーとクローディアはバー・トリスタンで飲んでいた。
「普通デートに元カノのコンサートなんて行かないよねぇ」
キープボトルのスコッチは一晩で新しいのに変わる。
「でも未沙は結構喜んでいたわ」
クローディアも笑っていいのか、呆れたほうがいいのかわからない。
「人が良すぎるのか、天然なのか…」
「それより姐さん…メガロードに乗らなくていいんですか?」
ママ笑ってて パパ×××
遠く離れても祈ってくれる?
今日はミンメイのコンサート。千秋楽だ。
会場周りは溢れんばかりの人、人、人。
「こんなに大勢の人にもまれるのも久しぶりだわ」
輝の後ろを歩きながら未沙が言った。
「そうだな。他の都市からも大勢来ているから余計だな」
無理も無い。地球でミンメイの生の歌声が聴けるのは今日で最後なのだから。
「きゃっ!」
人に押されて未沙がよろけ、輝の背中にしがみついた。
「おっと。大丈夫か?未沙」
顔だけ後ろに向けるようにして気遣いの言葉を掛ける。
「ええ。ごめんなさい」
未沙はすぐに姿勢を立て直した。
「こんだけ人がいるんじゃまともに歩けないよな」
ほら、と言って輝は未沙の手を握りしめた。
「確か前にもこんな事あったわね…」
寄り添い歩きながら未沙は何かを思い出した。
「そうだっけ?…ああ、『小白竜』初日の時だ」
あの時は輝がよろけて未沙のお尻にぶつかったのだった。
「『誰がアンタの尻なんか触るかよ』って、言ったわよね貴方」
拗ねるように軽く睨みあげた。
しかし輝はそれに臆する事も無い。
「今じゃ尻だけじゃなくあちこち触らせてもらってます」
輝は開き直ったようにニコニコ笑っている。
「もう!そういうこと人前で言わないでよ!」
未沙は顔を真っ赤にした。こういう話題を人前でするのはまだ抵抗がある。
「誰も聞いちゃいないって」
ようやっと入り口にたどり着き、席へと案内された。
ミンメイが輝達に用意した席はステージが正面見える3階特別観覧個室だった。
「『恋するニワトリ』歌ってくれるかしら?私、あの歌大好き」
ステージ周辺にはライト効果の為のスモークがたちこもっている。
もうすぐ開演だ。
「考えてみれば私、ミンメイさんのコンサートは初めてだわ」
なんだかドキドキする、と未沙はずっとはしゃいでいる。
そんな未沙の姿を見て輝は素直に『可愛い』と思った。
ふっと照明が落とされ、ハミングが流れ出した。
そしてハミングが途切れた一瞬。
「WELLCOME!!」
ミンメイの歓迎の言葉が会場に響き渡った。
続いてエレキギターがかき鳴らされ、『Parachute Limit』のイントロが始まる。
上手からミンメイが走って出てくると、観客が一斉に黄色い声をあげた。
中央で立ち止まり、頭の上で手を叩きリズムを取ると、観客もそれに合わせて手を叩いた。
どこまで行くの水晶の瞳 ささやかすぎる勇気を秘めて
光の果ては限りなく 超高速のイアリングが鳴る
歩きながら、くるくる回りながら、とても楽しそうに歌うミンメイの姿がそこにはあった。
気がつくと未沙も笑顔でリズムを取っていた。
もう君をどこへも逃がしたりしない
そう。逃がしたりしない。逃げたりしない。
「LaLaLa,LaLa!」
エコーをかけたミンメイのコーラスを合図に伴奏が止まると大きな歓声と拍手の音が響いた。
「今日は来てくれてありがとー!みんな、楽しんでねー!」
歓声は止む事が無く、あちこちからミンメイを呼ぶ声も聞こえた。
続いて歌いだしたのは『GO-GO-GIRLS!』。
「この歌聴くと女って強ぇ~って思うよ」
唐突に輝がぼそっとつぶやいた。
「強くて悪かったわね」
脹れるように未沙が答える。
「悪くないです。全然。はい」
アタシ綺麗になるの オトコ振り返らせりゃFEEL SO GOOD!
「綺麗よね、ミンメイさん」
未沙が感嘆の言葉を発した。
「そうだね」
とても綺麗で、とても輝いて、そしてとても幸せそうだ。
盛り上がっている観客席を見渡すと、やはりミンメイは音楽に愛された人間なのだと感じる。
---歌を取り戻してくれて、本当に良かった。
輝は心からそう思った。
この後『恋するニワトリ』と数曲が演奏され、一旦袖に消えたミンメイが衣装を変えてステージに戻って来た。
アルバムのジャケットと同じ、白のロングドレス。
中央に用意された椅子に座り、スタンドマイクを寄せる。
「少し疲れたぞなもし」
冗談交じりのMCが観客の笑みを誘った。
アコースティックギターがイントロを爪弾き、ミンメイもタンバリンを持ってリズムを取っている。
僕の世界はこの小さな町 君の匂いは噎せるように溢れる
怖い怖い話の後 痛い痛い胸のひだに当てた暖かい手のひらが愛しいけれど
『小さな町』が演奏されている頃、キャシーとクローディアはバー・トリスタンで飲んでいた。
「普通デートに元カノのコンサートなんて行かないよねぇ」
キープボトルのスコッチは一晩で新しいのに変わる。
「でも未沙は結構喜んでいたわ」
クローディアも笑っていいのか、呆れたほうがいいのかわからない。
「人が良すぎるのか、天然なのか…」
「それより姐さん…メガロードに乗らなくていいんですか?」
ママ笑ってて パパ×××
遠く離れても祈ってくれる?