仮タイトル

『超時空要塞マクロス』(初代)輝×未沙中心だが
美味しい所はミンメイが持って行く二次創作(SS)ブログ。

唄い人(前編)

2008-01-14 | 懐古編2
その日、マクロスシティはいつもよりにぎやかだった。
今日はミンメイのコンサート。千秋楽だ。
会場周りは溢れんばかりの人、人、人。
「こんなに大勢の人にもまれるのも久しぶりだわ」
輝の後ろを歩きながら未沙が言った。
「そうだな。他の都市からも大勢来ているから余計だな」
無理も無い。地球でミンメイの生の歌声が聴けるのは今日で最後なのだから。
「きゃっ!」
人に押されて未沙がよろけ、輝の背中にしがみついた。
「おっと。大丈夫か?未沙」
顔だけ後ろに向けるようにして気遣いの言葉を掛ける。
「ええ。ごめんなさい」
未沙はすぐに姿勢を立て直した。
「こんだけ人がいるんじゃまともに歩けないよな」
ほら、と言って輝は未沙の手を握りしめた。
「確か前にもこんな事あったわね…」
寄り添い歩きながら未沙は何かを思い出した。
「そうだっけ?…ああ、『小白竜』初日の時だ」
あの時は輝がよろけて未沙のお尻にぶつかったのだった。
「『誰がアンタの尻なんか触るかよ』って、言ったわよね貴方」
拗ねるように軽く睨みあげた。
しかし輝はそれに臆する事も無い。
「今じゃ尻だけじゃなくあちこち触らせてもらってます」
輝は開き直ったようにニコニコ笑っている。
「もう!そういうこと人前で言わないでよ!」
未沙は顔を真っ赤にした。こういう話題を人前でするのはまだ抵抗がある。
「誰も聞いちゃいないって」
ようやっと入り口にたどり着き、席へと案内された。
ミンメイが輝達に用意した席はステージが正面見える3階特別観覧個室だった。
「『恋するニワトリ』歌ってくれるかしら?私、あの歌大好き」
ステージ周辺にはライト効果の為のスモークがたちこもっている。
もうすぐ開演だ。
「考えてみれば私、ミンメイさんのコンサートは初めてだわ」
なんだかドキドキする、と未沙はずっとはしゃいでいる。
そんな未沙の姿を見て輝は素直に『可愛い』と思った。
ふっと照明が落とされ、ハミングが流れ出した。
そしてハミングが途切れた一瞬。
「WELLCOME!!」
ミンメイの歓迎の言葉が会場に響き渡った。
続いてエレキギターがかき鳴らされ、『Parachute Limit』のイントロが始まる。
上手からミンメイが走って出てくると、観客が一斉に黄色い声をあげた。
中央で立ち止まり、頭の上で手を叩きリズムを取ると、観客もそれに合わせて手を叩いた。

どこまで行くの水晶の瞳 ささやかすぎる勇気を秘めて
光の果ては限りなく 超高速のイアリングが鳴る


歩きながら、くるくる回りながら、とても楽しそうに歌うミンメイの姿がそこにはあった。
気がつくと未沙も笑顔でリズムを取っていた。

もう君をどこへも逃がしたりしない

そう。逃がしたりしない。逃げたりしない。
「LaLaLa,LaLa!」
エコーをかけたミンメイのコーラスを合図に伴奏が止まると大きな歓声と拍手の音が響いた。
「今日は来てくれてありがとー!みんな、楽しんでねー!」
歓声は止む事が無く、あちこちからミンメイを呼ぶ声も聞こえた。
続いて歌いだしたのは『GO-GO-GIRLS!』。
「この歌聴くと女って強ぇ~って思うよ」
唐突に輝がぼそっとつぶやいた。
「強くて悪かったわね」
脹れるように未沙が答える。
「悪くないです。全然。はい」

アタシ綺麗になるの オトコ振り返らせりゃFEEL SO GOOD!

「綺麗よね、ミンメイさん」
未沙が感嘆の言葉を発した。
「そうだね」
とても綺麗で、とても輝いて、そしてとても幸せそうだ。
盛り上がっている観客席を見渡すと、やはりミンメイは音楽に愛された人間なのだと感じる。
---歌を取り戻してくれて、本当に良かった。
輝は心からそう思った。
この後『恋するニワトリ』と数曲が演奏され、一旦袖に消えたミンメイが衣装を変えてステージに戻って来た。
アルバムのジャケットと同じ、白のロングドレス。
中央に用意された椅子に座り、スタンドマイクを寄せる。
「少し疲れたぞなもし」
冗談交じりのMCが観客の笑みを誘った。
アコースティックギターがイントロを爪弾き、ミンメイもタンバリンを持ってリズムを取っている。

僕の世界はこの小さな町 君の匂いは噎せるように溢れる
怖い怖い話の後 痛い痛い胸のひだに当てた暖かい手のひらが愛しいけれど


『小さな町』が演奏されている頃、キャシーとクローディアはバー・トリスタンで飲んでいた。
「普通デートに元カノのコンサートなんて行かないよねぇ」
キープボトルのスコッチは一晩で新しいのに変わる。
「でも未沙は結構喜んでいたわ」
クローディアも笑っていいのか、呆れたほうがいいのかわからない。
「人が良すぎるのか、天然なのか…」
「それより姐さん…メガロードに乗らなくていいんですか?」

ママ笑ってて パパ×××
遠く離れても祈ってくれる?