燦(9)
2008-10-04 | 燦
薄暗い夕方とは言え、誰もいないはずの家に明かりが点いていた。
「おかしいわね。輝の終業時間は5時なのに…」
その5時までにはまだ10分ある。
変に思ったが、未沙は玄関のノブを回す。鍵は開いていた。
「輝…?帰ってるの?」
ポーチで声を掛けるとダイニングの方から足音が聞こえてきた。
「ああ、未沙。お帰り。買い物にでも行ってたのか?携帯にかけてくれてたら帰りに…あっ」
未沙と並んで立っているミンメイに気がついて言葉を止めた。
「お久しぶり、輝」
「あ、ああ。久しぶり…ミンメイ」
初夏の頃、未来がまだ未沙のお腹にいた時に会って以来だ。
しかもミンメイに改めて告白された事もあって、輝は少し気まずそうに返事をした。
だがそんな事を知らない未沙はどうしてこんな時間に家にいるのかを輝に強く問いかける。
「いや、だって…さ。なんか今朝のお前、変だったから、その…」
「貴方指揮官でしょ!そんな個人的な理由で仕事を放ってきたっていうの?!」
突然の大きな声に未来が驚いて泣き出した。
「ああ、ほら、そんな大声出すから…」
「出させてるのは貴方でしょう!」
いきなりの夫婦喧嘩に未来の泣き声が加わり、玄関に不協和音が響く。
ミンメイの存在は忘れられているようだった。
「二人共!一時停止!!」
耐えかねたミンメイが叫んだ。
すると、二人の怒声はピタリと止まる。
「未沙さん、未来ちゃんをこっちに渡して」
そう言って両腕の未沙の前に差し出した。
「え?」
「子供の前でケンカするもんじゃないわよ。リビングで待たせてもらうから、輝と話合ってきたら?」
「話し合うって、未沙が勝手に怒ってるだけだよ」
「なんですって!?大体あなたが…」
まだ大声を出す未沙の腕から、ひょいと未来を抱きかかえてミンメイは中に上がった。
「あ!」
「ミンメイ?!」
二人は驚いたがミンメイはすたすたとリビングへと向う。
「夫婦喧嘩は犬も食べません。だけど未来ちゃんから見えないとこでやってちょうだい。聞こえた?」
「ミンメイさん!」
「聞・こ・え・ま・し・た・か?!」
ミンメイは二人を睨みつけながら強く言い放った。
あまりの勢いに二人は一瞬凍りつき、「はい」と小さく答える。
「じゃ、借りるわね。どうぞごゆっくり」
そう言ってミンメイはリビングのドアを閉めた。
残された二人はバツが悪くなり、とりあえず2階の寝室へと移動する。
泣き叫ぶ未来をミンメイが精一杯あやしている。
「おーよしよし。未来ちゃんのせいじゃないのよ」
左腕に乗せるようにして抱き、右手で背中を軽く叩きながらリビング内を歩いた。
しばらくしてようやく未来が泣き止んでくれた。そして改めてリビングを見渡す。
初めて目にする二人の家。
ふとサイドボードの上に飾ってあるフォトフレームに目が行った。
軍の白い礼服にウェディングドレス。輝と未沙の結婚式の写真。
「……」
ミンメイはそれをじっと見つめた。
以前だったらこんな写真を見た瞬間に逃げ出していたかもしれない。
だが今のミンメイはこの写真を見て、切なさと同時に愛しさも感じた。
そんな思いにふけるのをさえぎるかのように上着のポケットから携帯の着信音が鳴り始める。
「ん、もう」
と、ふてくされながらもソファに腰を下ろして片腕で未来を抱きながら携帯を取り出し、通話ボタンを押す。
「もしもし」
『ミンメイ!どこにいるの?!』
思わず耳から携帯を離してしまう程の大きな声を出したのはマネージャーである。
「ちょっと、大きな声出さないでよ」
『集合時間になっても来ないから心配で掛けてるんだぞ!』
「あ。ごめんなさい。連絡するの忘れてたわね、少し遅らせてもらえるかしら?」
仕事の事をうっかり忘れていたのを思い出して、申し訳なさそうに告げた。
『少しってどのくらい?』
「どのくらいって…う~ん…」
ミンメイは腕の中の未来を見下ろした。
「お腹が空くまで」
『はぁ?』
「とにかくごめん!今は一大事なの!許されて!」
『ちょっっと!ミン…』
マネージャーの呼びかけの途中で通話を切った。
「ごめんねぇ、マネージャー」
我ながらとんでもない事してるなぁと思い、携帯に苦笑いを見せる。
携帯をポケットに戻し、未来に視線を戻すと目が合った。未来はずっとミンメイを見つめていた。
輝譲りの碧い瞳で。
「…お歌、歌ってあげようか?未来ちゃん」
呼びかけると未来はにこっと笑った。
なにか聞きたいな
あのことについて
あの子のことについて
この期に及んで
Minmay's song:「あしたのこと」
「おかしいわね。輝の終業時間は5時なのに…」
その5時までにはまだ10分ある。
変に思ったが、未沙は玄関のノブを回す。鍵は開いていた。
「輝…?帰ってるの?」
ポーチで声を掛けるとダイニングの方から足音が聞こえてきた。
「ああ、未沙。お帰り。買い物にでも行ってたのか?携帯にかけてくれてたら帰りに…あっ」
未沙と並んで立っているミンメイに気がついて言葉を止めた。
「お久しぶり、輝」
「あ、ああ。久しぶり…ミンメイ」
初夏の頃、未来がまだ未沙のお腹にいた時に会って以来だ。
しかもミンメイに改めて告白された事もあって、輝は少し気まずそうに返事をした。
だがそんな事を知らない未沙はどうしてこんな時間に家にいるのかを輝に強く問いかける。
「いや、だって…さ。なんか今朝のお前、変だったから、その…」
「貴方指揮官でしょ!そんな個人的な理由で仕事を放ってきたっていうの?!」
突然の大きな声に未来が驚いて泣き出した。
「ああ、ほら、そんな大声出すから…」
「出させてるのは貴方でしょう!」
いきなりの夫婦喧嘩に未来の泣き声が加わり、玄関に不協和音が響く。
ミンメイの存在は忘れられているようだった。
「二人共!一時停止!!」
耐えかねたミンメイが叫んだ。
すると、二人の怒声はピタリと止まる。
「未沙さん、未来ちゃんをこっちに渡して」
そう言って両腕の未沙の前に差し出した。
「え?」
「子供の前でケンカするもんじゃないわよ。リビングで待たせてもらうから、輝と話合ってきたら?」
「話し合うって、未沙が勝手に怒ってるだけだよ」
「なんですって!?大体あなたが…」
まだ大声を出す未沙の腕から、ひょいと未来を抱きかかえてミンメイは中に上がった。
「あ!」
「ミンメイ?!」
二人は驚いたがミンメイはすたすたとリビングへと向う。
「夫婦喧嘩は犬も食べません。だけど未来ちゃんから見えないとこでやってちょうだい。聞こえた?」
「ミンメイさん!」
「聞・こ・え・ま・し・た・か?!」
ミンメイは二人を睨みつけながら強く言い放った。
あまりの勢いに二人は一瞬凍りつき、「はい」と小さく答える。
「じゃ、借りるわね。どうぞごゆっくり」
そう言ってミンメイはリビングのドアを閉めた。
残された二人はバツが悪くなり、とりあえず2階の寝室へと移動する。
泣き叫ぶ未来をミンメイが精一杯あやしている。
「おーよしよし。未来ちゃんのせいじゃないのよ」
左腕に乗せるようにして抱き、右手で背中を軽く叩きながらリビング内を歩いた。
しばらくしてようやく未来が泣き止んでくれた。そして改めてリビングを見渡す。
初めて目にする二人の家。
ふとサイドボードの上に飾ってあるフォトフレームに目が行った。
軍の白い礼服にウェディングドレス。輝と未沙の結婚式の写真。
「……」
ミンメイはそれをじっと見つめた。
以前だったらこんな写真を見た瞬間に逃げ出していたかもしれない。
だが今のミンメイはこの写真を見て、切なさと同時に愛しさも感じた。
そんな思いにふけるのをさえぎるかのように上着のポケットから携帯の着信音が鳴り始める。
「ん、もう」
と、ふてくされながらもソファに腰を下ろして片腕で未来を抱きながら携帯を取り出し、通話ボタンを押す。
「もしもし」
『ミンメイ!どこにいるの?!』
思わず耳から携帯を離してしまう程の大きな声を出したのはマネージャーである。
「ちょっと、大きな声出さないでよ」
『集合時間になっても来ないから心配で掛けてるんだぞ!』
「あ。ごめんなさい。連絡するの忘れてたわね、少し遅らせてもらえるかしら?」
仕事の事をうっかり忘れていたのを思い出して、申し訳なさそうに告げた。
『少しってどのくらい?』
「どのくらいって…う~ん…」
ミンメイは腕の中の未来を見下ろした。
「お腹が空くまで」
『はぁ?』
「とにかくごめん!今は一大事なの!許されて!」
『ちょっっと!ミン…』
マネージャーの呼びかけの途中で通話を切った。
「ごめんねぇ、マネージャー」
我ながらとんでもない事してるなぁと思い、携帯に苦笑いを見せる。
携帯をポケットに戻し、未来に視線を戻すと目が合った。未来はずっとミンメイを見つめていた。
輝譲りの碧い瞳で。
「…お歌、歌ってあげようか?未来ちゃん」
呼びかけると未来はにこっと笑った。
なにか聞きたいな
あのことについて
あの子のことについて
この期に及んで
Minmay's song:「あしたのこと」
このままやさしいまんまなのかな…
…「ある意味三角関係」って…
…今回はやきもきしています。
わがまま言いたいなあ、お早めに。
だからと言って一条家引っ掻き回す役目もアレだし。
そうなると結果が出ている三角関係続行しかないな~と。
神様にもっとこまめに来てもらうよう祈っててくだいな♪
ミンメイ大人や・・・エエ子や・・・つД`)
二人はどんな話し合いをするのやら。気になるわ~。
この夫婦、もう少しミンメイの気持ちを察してあげればいいのに・・・
余裕なし。
TVのミンメイ嫌いだったけど、ここのミンメイは好きです
私達が計り知れない孤独や苦悩を経験し、優しさを知ったんでしょうね。。
私も見習わなきゃッ^^;
余裕これっぽっちも無し!(笑)
ミンメイはオリキャラ扱いですな。もう。はははは(汗)
>瑛理子さん
そうだよなぁ。良く考えたらミンメイ20歳だもんなぁ。やっぱり大人っぽいよねぇ。
でももう後には退けん…っ。
つまずいたらひと回り大きくなって立ち上がる。
そんなミンメイが書けてたらいい…な…。
カウドットなお腹でも中身は霜降り?(爆)
風邪、気をつけます。そろそろ窓閉めて寝ないとね!
微妙ならいいですけど、数日経った食材は気をつけましょう(笑)野菜は赤青黄色、ちゃんと摂ってくださいね♪
ノルマンディー上陸作戦は成功しましたか?
ボッコボコは免れたでせうか?
ウチの拍手は後ろに誰かいないか確認してから…あ、遅いって(^^;
えーと。10円玉を鼻の穴にいれて3分間?
それなんて赤電話…(殴)
冗談です。
いつも読んでいただき、そして楽しいコメントありがとうございますm(_ _)m
退屈させないよう、なるべく神様にこまめに来るよう説教…じゃない、説得します(いや、説得する時間あったら書け、と)