サブブリッジからメインブリッジのブレンダに連絡が入った。
振動波らしきものをキャッチしたと言うのである。
真空であるはずの宇宙空間で。
だが、何かがレーダーに引っ掛かると言う以上、無視する訳にはいかず、ブレンダはチェアを回転させ斜め後ろに座る人物に報告をした。
「どうします?艦長」
亜麻色の髪に深緑の瞳をしている、艦長と呼ばれた人物は女性で、名は一条未沙。
「まずは分析を急ぎなさい。分析不能であればバルキリー隊に調査の要請を考慮します」
女性である事を感じさせない、キリッとした返答にブレンダは緊張を覚えた。
「はい!」
ブレンダも切れのいい返事をし、レーダー班への分析・解析の指示を伝える。
---敵でなければ、いいのだけれど。
「こんばんは~一条です」
その日の任務を終えた輝が軍の託児施設に愛娘を迎えに行った。
担当していた保育士から抱き渡され、思わず顔が綻んでしまう。
「イイコにしてたかぁ?未来」
未来と呼ばれた赤ん坊はキャッキャッと笑った。
「未来ちゃんはいつもイイコですよ。はい、記録帳です」
保育士はクスクスと笑いながら何時にミルクを飲んだとかどれくらい眠ったか等を書き込まれたノートを差し出した。
「ありがとうございます。明日もよろしくお願いします」
輝は軽く頭を下げて施設を出た。
駐車場で助手席側の後部シートにとりつけてあるチャイルドシートに未来を乗せてから運転席にまわってエンジンスタートキーを回す。
軍ブロックと民間ブロックを分けるゲートを抜けてから、カーオーディオのスイッチを入れた。
スピーカーからは童謡が流れる。これはもちろん、未来の為。
輝も時折口ずさむ。
おかあさん煙が目に沁みる 涙がいっぱい出てくるよ
よしよし泣くな 今日の夕飯はなんだろね?
自宅に着いてまずTVを付ける。子供番組のビデオを流して未来の気を引いてもらい、寝室で部屋着に着替えた。
先ほどの歌じゃないけれど、今夜の夕食は何にしようかと冷蔵庫を開いていると、テーブルの上に置いておいた携帯が着信を知らせる音を鳴らした。
発信者を知らせるディスプレイには「未沙」と表示されている。
「もしもし?…え?!…うん…うん、そうか。…わかった。ああ、大丈夫だよ。うん、それじゃ」
謎の振動波の解析がどうでるのか、様子を見る事にした未沙は、家に帰れないかもしれないので未来の食事や寝かしつけの事を頼む為に電話を掛けてきた。
通話切断ボタンを押し、「大丈夫」と言った口からは溜息がこぼれた。
艦長である未沙が通常任務時間で帰れるのは稀で、今更しょげる事では無い。
携帯をたたみ、振り返るとTVを見ていたはずの未来がきょとんとした顔で輝をじっと見つめていた。
輝は苦笑いをして歩み寄る。
「未来、ママは帰りが遅くなるんだって。今夜はパパと一緒にイイコにしてよーな」
そう言って未来の頭を撫でた。
そして再びキッチンに戻る。
背中でTVから流れてくる童謡が車の中で聴いていたのと同じだとわかると、輝も一緒に歌いながら夕食の準備をした。
お父さん仕事から戻ったよ カボチャとニンジン
お芋も煮えてるよ たくさんおかわりしちゃったよ
「解析は時間が掛かります。艦長は帰宅されてはいかがですか?未来ちゃんの事もありますし、何かありましたらすぐ連絡いたしますよ」
必要書類を艦長室に持ってきたシュリック艦長補佐が未沙に進言した。
「連絡した時には遅かった、では話になりません。それに任務に子供は関係ないわ。夫もいるし、大丈夫です」
無表情に近い顔でにべも無く答える。
「…失礼しました。せめて食事だけはしっかり摂っていただきます。今、お持ちしますので、お願いしますよ」
諦めてシュリック艦長補佐は踵を返した。
「ありがとうシュリック大佐」
眼を通し終えた書類に判を押しなが未沙は礼を言った。
ドアが閉まり、机の上で書類を整える。
ディスプレイを起動させ、解析室とのラインを繋げる。
やはり未だ解析途中で振動なのか信号なのかもわからないと言った状況だった。
敵か味方か、それとも中立しているものなのか。
一番はっきりさせたいのはそれである。
”わからない”ものは、どうしても不安になる。
---メガロードに乗る全ての人々を守る為にも。
一番優先しなければならない、と未沙は使命感を感じていた。
ピーッ!ピーッ!ピーッ!
ブリッジからのコールシグナルが唐突に鳴った。
音声回線を繋ぐボタンを押しながら「どうしたの?」と訊ねた。
『振動波が流れてくる方向に大破した戦艦を発見しました。護衛艦ウィンダムによると監察軍のものではないかとの報告が入っております』
「監察軍の戦艦ですって?!」
未沙は急いでブリッジへと駆け戻った。
途中、ワゴンを押してくるシュリック艦長補佐とすれ違ったが、そのワゴンには自分の食事が乗せられている事を忘れている。
ブリッジのドアが開くや否や「ウィンダムと回線を繋げてちょうだい」とブレンダに告げる。
「バルテル艦長、発見した戦艦が監察軍というのは本当ですか?」
モニターにゼントラーディ人で構成されたメガロード護衛艦・ウィンダムの艦長、テズレ・バルテルの顔が映し出された。
『メルトランのタノワ少佐にも確認してもらったが、メルトランでもああいった艦は見た事が無いと言っていたので、おそらくではありますが…』
「その艦の映像を出せますか?」
『はい。まだ遠方なので小さいですが…』
答えると同時にモニターが二分割し、右側に例の戦艦、左側にバルテルが移動した。
『拡大を試みたのですが、何故かノイズのようなものが入りこみ、キレイには撮れなかったのです』
「ノイズ…もしかしたらレーダーに引っ掛かったものかもしれませんね…」
未沙は腕を組み、右手で拳を作り口元に当てて考え込む。
三良の魂が落ちちゃった 前田のおばさんがお祈りするよ
トートゥトートゥアートートゥ
つづく
振動波らしきものをキャッチしたと言うのである。
真空であるはずの宇宙空間で。
だが、何かがレーダーに引っ掛かると言う以上、無視する訳にはいかず、ブレンダはチェアを回転させ斜め後ろに座る人物に報告をした。
「どうします?艦長」
亜麻色の髪に深緑の瞳をしている、艦長と呼ばれた人物は女性で、名は一条未沙。
「まずは分析を急ぎなさい。分析不能であればバルキリー隊に調査の要請を考慮します」
女性である事を感じさせない、キリッとした返答にブレンダは緊張を覚えた。
「はい!」
ブレンダも切れのいい返事をし、レーダー班への分析・解析の指示を伝える。
---敵でなければ、いいのだけれど。
「こんばんは~一条です」
その日の任務を終えた輝が軍の託児施設に愛娘を迎えに行った。
担当していた保育士から抱き渡され、思わず顔が綻んでしまう。
「イイコにしてたかぁ?未来」
未来と呼ばれた赤ん坊はキャッキャッと笑った。
「未来ちゃんはいつもイイコですよ。はい、記録帳です」
保育士はクスクスと笑いながら何時にミルクを飲んだとかどれくらい眠ったか等を書き込まれたノートを差し出した。
「ありがとうございます。明日もよろしくお願いします」
輝は軽く頭を下げて施設を出た。
駐車場で助手席側の後部シートにとりつけてあるチャイルドシートに未来を乗せてから運転席にまわってエンジンスタートキーを回す。
軍ブロックと民間ブロックを分けるゲートを抜けてから、カーオーディオのスイッチを入れた。
スピーカーからは童謡が流れる。これはもちろん、未来の為。
輝も時折口ずさむ。
おかあさん煙が目に沁みる 涙がいっぱい出てくるよ
よしよし泣くな 今日の夕飯はなんだろね?
自宅に着いてまずTVを付ける。子供番組のビデオを流して未来の気を引いてもらい、寝室で部屋着に着替えた。
先ほどの歌じゃないけれど、今夜の夕食は何にしようかと冷蔵庫を開いていると、テーブルの上に置いておいた携帯が着信を知らせる音を鳴らした。
発信者を知らせるディスプレイには「未沙」と表示されている。
「もしもし?…え?!…うん…うん、そうか。…わかった。ああ、大丈夫だよ。うん、それじゃ」
謎の振動波の解析がどうでるのか、様子を見る事にした未沙は、家に帰れないかもしれないので未来の食事や寝かしつけの事を頼む為に電話を掛けてきた。
通話切断ボタンを押し、「大丈夫」と言った口からは溜息がこぼれた。
艦長である未沙が通常任務時間で帰れるのは稀で、今更しょげる事では無い。
携帯をたたみ、振り返るとTVを見ていたはずの未来がきょとんとした顔で輝をじっと見つめていた。
輝は苦笑いをして歩み寄る。
「未来、ママは帰りが遅くなるんだって。今夜はパパと一緒にイイコにしてよーな」
そう言って未来の頭を撫でた。
そして再びキッチンに戻る。
背中でTVから流れてくる童謡が車の中で聴いていたのと同じだとわかると、輝も一緒に歌いながら夕食の準備をした。
お父さん仕事から戻ったよ カボチャとニンジン
お芋も煮えてるよ たくさんおかわりしちゃったよ
「解析は時間が掛かります。艦長は帰宅されてはいかがですか?未来ちゃんの事もありますし、何かありましたらすぐ連絡いたしますよ」
必要書類を艦長室に持ってきたシュリック艦長補佐が未沙に進言した。
「連絡した時には遅かった、では話になりません。それに任務に子供は関係ないわ。夫もいるし、大丈夫です」
無表情に近い顔でにべも無く答える。
「…失礼しました。せめて食事だけはしっかり摂っていただきます。今、お持ちしますので、お願いしますよ」
諦めてシュリック艦長補佐は踵を返した。
「ありがとうシュリック大佐」
眼を通し終えた書類に判を押しなが未沙は礼を言った。
ドアが閉まり、机の上で書類を整える。
ディスプレイを起動させ、解析室とのラインを繋げる。
やはり未だ解析途中で振動なのか信号なのかもわからないと言った状況だった。
敵か味方か、それとも中立しているものなのか。
一番はっきりさせたいのはそれである。
”わからない”ものは、どうしても不安になる。
---メガロードに乗る全ての人々を守る為にも。
一番優先しなければならない、と未沙は使命感を感じていた。
ピーッ!ピーッ!ピーッ!
ブリッジからのコールシグナルが唐突に鳴った。
音声回線を繋ぐボタンを押しながら「どうしたの?」と訊ねた。
『振動波が流れてくる方向に大破した戦艦を発見しました。護衛艦ウィンダムによると監察軍のものではないかとの報告が入っております』
「監察軍の戦艦ですって?!」
未沙は急いでブリッジへと駆け戻った。
途中、ワゴンを押してくるシュリック艦長補佐とすれ違ったが、そのワゴンには自分の食事が乗せられている事を忘れている。
ブリッジのドアが開くや否や「ウィンダムと回線を繋げてちょうだい」とブレンダに告げる。
「バルテル艦長、発見した戦艦が監察軍というのは本当ですか?」
モニターにゼントラーディ人で構成されたメガロード護衛艦・ウィンダムの艦長、テズレ・バルテルの顔が映し出された。
『メルトランのタノワ少佐にも確認してもらったが、メルトランでもああいった艦は見た事が無いと言っていたので、おそらくではありますが…』
「その艦の映像を出せますか?」
『はい。まだ遠方なので小さいですが…』
答えると同時にモニターが二分割し、右側に例の戦艦、左側にバルテルが移動した。
『拡大を試みたのですが、何故かノイズのようなものが入りこみ、キレイには撮れなかったのです』
「ノイズ…もしかしたらレーダーに引っ掛かったものかもしれませんね…」
未沙は腕を組み、右手で拳を作り口元に当てて考え込む。
三良の魂が落ちちゃった 前田のおばさんがお祈りするよ
トートゥトートゥアートートゥ
つづく
ひと季節越えちゃったなぁ。
なんとなくネタが理沙さんとこと被りそうな気がしないでもないが…まぁそうしたらごめんなさい(汗)
やっぱりあっちゃんが歌ってるの見るとヤル気が出ます。
何故なんだろう?
すみません、テンション高くて。(;´▽`A``
お体、検査をするそうですね。
我々の年ともなれば、色々な故障部分が出て来ます。
この際、何でそうなのか知っておくと、結構不安が解消されるものですから、今酷くない内に検診しておく事は、イイ事ですよ。
大事になさって下さい。
実はこの間私も特定検診行ったら、私背が縮んでましたw
…ヒアルロン酸がなくなって来ているのかも。
それとも骨密度が無くなってるのか?
orz
いやあ、原作に「観察軍」のボロ船出ていますし、未沙が何か思いを残している気がするし、こういう事になるのは、誰だって想像出来る範囲です。
こちらのメガロード、どうなるのでしょう?
楽しみです。( ^ω^ )
「そういえば検査入院してから10年経つけどあの時の病気どうなったん?もっぺん検査したら?」と母親に言われた矢先の出来事でした。
色んな科を歩き回ってるので1人総合病院のようです…。歳取ってればそれなりの科は歩くか…(トオイメ)
新作、長くなります。
テーマが自分には大きすぎないか?とすでに負けそうになっておりますが(爆)マイペース貫いて書いていきます。
左頬が痛くて寝ちゃうときあるけどねん♪
こちらは着火剤に火を点てみましたが、メインエンジンが動きません。(笑)
次回、楽しみにしています。
ストレスと冷えは万病の元です。
お気をつけて。
妄想エンジンに火が点きました。
が、病気にも火が点きました。こっちは早く消さねばorz
桜陰堂さんはセルモーターは動くけどエンジン掛からないということですかね?
エンジン点火お待ちしてます♪
そうそう。冷え性なんですよね、私。なお悪いな(笑)