翌日、なんだかんだ言いつつも航空部隊本部へと向かう未沙の姿があった。
非番だというのに制服でいる。まあ、その方が軍施設内では目立たずに済むが、「休日だけど仕事場まで貴方に会いに来た」という見え見えな態度を取りたくない彼女のプライドでもある。
「一条大尉ですね。唯今呼び出しいたしますので、どうぞあちらにお掛けになってお待ちください」
受付ロビーの一角にあるベンチに座り、輝を待つ。
そうすると観葉植物を挟んですぐ後ろから隊士達の会話が耳に入ってきた。
「あんな若造に大隊長なんて務まるのかねぇ」
侮蔑を含む口調から察するに、あまりよろしくない会話だということが瞬時にわかる。
「いくら先の大戦で活躍したって言ったって、人事不足って事での抜擢じゃね?」
「噂のあったリン・ミンメイが落ちぶれたから、出世で地位を獲得しようって魂胆かもな~!あっはっは!」
なんて事だ。輝の大隊長抜擢は上層部での人選会議の結果、正当に決定されたというのに、それを面白く思わない人間がいた。
しかも、地位や名誉の為と思われているなんて…。
未沙は驚き、隊士達の方を振り返ろうとした瞬間、「少佐」と呼び止められた。
「お待たせしました」と、ウェイトトレーニング途中であった輝が白の半袖Tシャツに黒のウォームアップパンツで現れた。
背筋を伸ばしている事もあって、大胸筋のラインが露になっている。
彼はこんなに筋肉質だったろうか?
パイロットスーツや制服の姿を見ることが多かったので気にすることがなかった。
「部下」と「一人の男性」とでは視線が変わるということを初めて意識した。
そんな自分が恥ずかしくなった未沙はなかなか声を発する事が出来ないでいる。
「…立ち話もなんですから、どうぞこちらへ」
助け舟を出したのは輝だ。促されて未沙は輝についていった。
案内されたのは輝の士官室である。
「…怒ってる?こんな所にまで来て…って」
ようやっと二人きりの時間になって、未沙が口を開いた。
コーヒーを淹れたカップを未沙の前に置き、輝が答える。
「驚いたけど、怒ってはいないよ。それより君だって大変だろう?何か、あったの?」
未沙と向かい合う形でソファに座る。
「あ、ううん…輝、あまり家に帰ってないみたいだから、疲れて体調崩してないかなと思って…」
素直に「会いたかった」と言えない未沙は俯き加減でまともに輝の顔が見られない。
「大丈夫だよ。それより君こそ身体に気をつけないと。まだ人事が決まっていない配置箇所だってあるんだろう?」
労わるような微笑を未沙に向ける。
「ええ…ねぇ、輝」
「何?」
「隣に座っても、いい?」
「…あ、ああ」
未沙は二人掛けソファに座る輝の隣に移動した。
そしてそっと輝と腕を組み、肩に寄りかかる。
「未沙…?」
「ごめんね。少しだけ…少しの間でいいから」
未沙は目を閉じて安心しきった表情をした。
「この一ヶ月…メガロードの事で忙しくて、正直疲れたけど…不思議ね。こうしているとまた頑張れる気がしてくる…」
彼女が素直に心の内を明かしている。
『鬼より怖い早瀬少佐』がこんなに可愛い女性である事は、輝しか知らない。
その事が輝はとても嬉しく思う。
それと同時に、男の衝動を腕から感じ始めた。
未沙の豊かな胸の感触が、制服越しからでも伝わってくる。
ましてや経験の無い、若い男子である輝には充分な刺激だ。
未沙もそのテの事にはまったく無防備なので困ったものだ。
まあ、そこまで至ってしまっても恋人同士なのだからそれはそれでいいのだが、場所が問題だ。
理性と性欲が葛藤する。
無意識に空いている腕が未沙を抱き寄せる。
自然、彼らの顔が近づき、唇を重ねる。
いつになく執拗なキスだった。
ついばむように軽いキスを繰り返していたと思えば、噛み付くように吸い付いてくる。
「…ん…」
未沙は初めての深い口付けに戸惑いを覚えたが、力強い腕に抱きすくめられ動けずにいた。
不器用ながらも長く続くキスに官能を刺激され、力が抜けて行くのがわかった。
輝も性欲に負け、ソファに押し倒そうとした、その時…。
『一条大尉、一条大尉。演習場利用許可が降りました。格納庫へどうぞ。繰り返します…』
アナウンスが輝の理性を呼び戻した。
ハッとなって未沙から身体を離す。
「あ…!…ごめん」
そしてようやっと自分が何をしていたのか理解した。
「う…ううん」
同じく理性が戻った未沙も顔を赤らめて俯きながら微かに答える。
「あ…、あの、そろそろ帰るわね。ごめんなさい、トレーニング中に来たりして」
まだ恥ずかしさの残る表情で席を立った。
「いや、いいんだよ。気にしないでいい。ありがとう、来てくれて…嬉しかったよ」
『嬉しかった』そう言われて未沙は更に顔を赤らめた。
「そ、それじゃあ、これで…」
「玄関まで送るよ」
勤めて冷静に装う輝。
しかし、今は恥ずかしさが勝る未沙は
「い、いいのよ!ここで!トレーニング、頑張ってね!…それじゃ!」
と、慌てる様に出て行った。
士官室から玄関へ走り去る足音が聞こえる。
ひとり残された輝は、自分の青さに自己嫌悪に落ちる。
Continuer
非番だというのに制服でいる。まあ、その方が軍施設内では目立たずに済むが、「休日だけど仕事場まで貴方に会いに来た」という見え見えな態度を取りたくない彼女のプライドでもある。
「一条大尉ですね。唯今呼び出しいたしますので、どうぞあちらにお掛けになってお待ちください」
受付ロビーの一角にあるベンチに座り、輝を待つ。
そうすると観葉植物を挟んですぐ後ろから隊士達の会話が耳に入ってきた。
「あんな若造に大隊長なんて務まるのかねぇ」
侮蔑を含む口調から察するに、あまりよろしくない会話だということが瞬時にわかる。
「いくら先の大戦で活躍したって言ったって、人事不足って事での抜擢じゃね?」
「噂のあったリン・ミンメイが落ちぶれたから、出世で地位を獲得しようって魂胆かもな~!あっはっは!」
なんて事だ。輝の大隊長抜擢は上層部での人選会議の結果、正当に決定されたというのに、それを面白く思わない人間がいた。
しかも、地位や名誉の為と思われているなんて…。
未沙は驚き、隊士達の方を振り返ろうとした瞬間、「少佐」と呼び止められた。
「お待たせしました」と、ウェイトトレーニング途中であった輝が白の半袖Tシャツに黒のウォームアップパンツで現れた。
背筋を伸ばしている事もあって、大胸筋のラインが露になっている。
彼はこんなに筋肉質だったろうか?
パイロットスーツや制服の姿を見ることが多かったので気にすることがなかった。
「部下」と「一人の男性」とでは視線が変わるということを初めて意識した。
そんな自分が恥ずかしくなった未沙はなかなか声を発する事が出来ないでいる。
「…立ち話もなんですから、どうぞこちらへ」
助け舟を出したのは輝だ。促されて未沙は輝についていった。
案内されたのは輝の士官室である。
「…怒ってる?こんな所にまで来て…って」
ようやっと二人きりの時間になって、未沙が口を開いた。
コーヒーを淹れたカップを未沙の前に置き、輝が答える。
「驚いたけど、怒ってはいないよ。それより君だって大変だろう?何か、あったの?」
未沙と向かい合う形でソファに座る。
「あ、ううん…輝、あまり家に帰ってないみたいだから、疲れて体調崩してないかなと思って…」
素直に「会いたかった」と言えない未沙は俯き加減でまともに輝の顔が見られない。
「大丈夫だよ。それより君こそ身体に気をつけないと。まだ人事が決まっていない配置箇所だってあるんだろう?」
労わるような微笑を未沙に向ける。
「ええ…ねぇ、輝」
「何?」
「隣に座っても、いい?」
「…あ、ああ」
未沙は二人掛けソファに座る輝の隣に移動した。
そしてそっと輝と腕を組み、肩に寄りかかる。
「未沙…?」
「ごめんね。少しだけ…少しの間でいいから」
未沙は目を閉じて安心しきった表情をした。
「この一ヶ月…メガロードの事で忙しくて、正直疲れたけど…不思議ね。こうしているとまた頑張れる気がしてくる…」
彼女が素直に心の内を明かしている。
『鬼より怖い早瀬少佐』がこんなに可愛い女性である事は、輝しか知らない。
その事が輝はとても嬉しく思う。
それと同時に、男の衝動を腕から感じ始めた。
未沙の豊かな胸の感触が、制服越しからでも伝わってくる。
ましてや経験の無い、若い男子である輝には充分な刺激だ。
未沙もそのテの事にはまったく無防備なので困ったものだ。
まあ、そこまで至ってしまっても恋人同士なのだからそれはそれでいいのだが、場所が問題だ。
理性と性欲が葛藤する。
無意識に空いている腕が未沙を抱き寄せる。
自然、彼らの顔が近づき、唇を重ねる。
いつになく執拗なキスだった。
ついばむように軽いキスを繰り返していたと思えば、噛み付くように吸い付いてくる。
「…ん…」
未沙は初めての深い口付けに戸惑いを覚えたが、力強い腕に抱きすくめられ動けずにいた。
不器用ながらも長く続くキスに官能を刺激され、力が抜けて行くのがわかった。
輝も性欲に負け、ソファに押し倒そうとした、その時…。
『一条大尉、一条大尉。演習場利用許可が降りました。格納庫へどうぞ。繰り返します…』
アナウンスが輝の理性を呼び戻した。
ハッとなって未沙から身体を離す。
「あ…!…ごめん」
そしてようやっと自分が何をしていたのか理解した。
「う…ううん」
同じく理性が戻った未沙も顔を赤らめて俯きながら微かに答える。
「あ…、あの、そろそろ帰るわね。ごめんなさい、トレーニング中に来たりして」
まだ恥ずかしさの残る表情で席を立った。
「いや、いいんだよ。気にしないでいい。ありがとう、来てくれて…嬉しかったよ」
『嬉しかった』そう言われて未沙は更に顔を赤らめた。
「そ、それじゃあ、これで…」
「玄関まで送るよ」
勤めて冷静に装う輝。
しかし、今は恥ずかしさが勝る未沙は
「い、いいのよ!ここで!トレーニング、頑張ってね!…それじゃ!」
と、慌てる様に出て行った。
士官室から玄関へ走り去る足音が聞こえる。
ひとり残された輝は、自分の青さに自己嫌悪に落ちる。
Continuer
あと出航までに8ヶ月程度しかないって時にのんびりデートする暇なんぞあるめぇ。
てか、もっと早く言えよグローバル!(笑)
Tシャツに浮き出る大胸筋…うっとりです。
そんな人間に惚れていた事もありました(トオイメ)
乳押し付け作戦もやりました…効果は無かったですけど(もっとトオイメ)
士官室でえっち(未遂)はただ単に作者のスケベ心です。ははは。