仮タイトル

『超時空要塞マクロス』(初代)輝×未沙中心だが
美味しい所はミンメイが持って行く二次創作(SS)ブログ。

UMUI(2)

2009-10-28 | メガロード編3
タクシーを降りて玄関に向う。
外灯は付けているが、中は真っ暗だ。
未来はもちろん、輝もすでに眠っているであろう、ドアを静かに開閉し、小さい声で「ただいま」を言う。
なんとなくリビングのドアを開け、明かりをつけて見回してみる。
誰もいない。当たり前の事だがこれを見ただけで何故か淋しい気持ちになってしまうのだった。
小さく溜息を吐き、出しっぱなしのDVDケースなどを片し始める。
収納棚の戸を閉めて、今度はキッチンへ。
食器などはきちんと洗われている。ここは心配がないようだ。
明かりを消して、なるべく音を立てないように2階へと上がった。
寝室のドアを開けるとフットライトがほのかに部屋を照らしている。
大きなダブルベッドの真ん中に未来。その隣に輝が寝息をたてていた。
音を立てないようにクローゼットを開け、着替えを取り出す。
すると背後から呼ぶ声が聞こえた。
「未沙…?いつ帰ってきたんだ?」
「ごめんなさい、起こしちゃった?」
「いや、うとうとしてただけだから。振動波のデータは取れたのか?」
眼をこすりながら状態を起こす。
「未来が起きるわ」
「大丈夫、たくさん遊ばせたからぐっすりだよ」
輝の言う通り、両親の声を聞いても起きる様子もなく、未来はすやすやと眠っている。
「解析はまだ出来てないわ。それに、監察軍のものらしき戦艦が大破した状態で見つかって…たぶん、バルキリー隊に偵察要請する事になると思う」
輝とは反対のベッドの端に座り、娘の頭を触れるように撫ぜた。
「そうか…未来を保育所に預ける時間が長くなるな…」
「うん…」
「明日、早いのか?」
「ええ、しばらくは早く出て遅く帰るか、帰らないかもしれないわ」
「そうか」
「迷惑かけるわね…」
「それは言わない約束だろ?」
心配させないようにニコッと笑う。
「だけどバルキリー隊が動くかもしれないとすると俺も早めに出た方がいいな」
「…未来に淋しい思いをさせちゃうわね」
「保育所は軍施設内にあるんだから、時間が出来れば会いに行ってやればいい。俺も様子を見に行くようにするよ」
「そうね…じゃ、私お風呂に入ってくるから…」
そう言って立ち上がろうとした未沙の腕を急いで掴んで止めた。
「何?」
「何か言い忘れてない?」
「何を?」
輝は四つん這いの格好になりながら未沙へと身体を近づけた。
そしてまだわからない表情の未沙の唇に軽くキスをする。
「おかえりなさい」
もう一度輝は満面を笑みを浮かべる。
「た…ただいま」
思わず未沙は赤面してしまうのだった。

「ぶはーーーーーっ!」
ミンメイは家に着くなりベッドに飛び込んだ。
ようやく新しいアルバムの歌録りが終わり、あとはディスクが作成・販売されるのを待つだけだ。
これからしばらくは休日となる。
そういう訳で今までメンバーと飲んでいたのだ。
「ああああああ。化粧落とすのめんどくさーい」
したたかに酔っている様子で、うつ伏せに飛び込んだ姿勢のままなかなか動けそうになかった。
そんな時に携帯のメール着信音が聞こえた。
「うにゅううう?」
もぞもぞと動き出し、ベッドの下に投げ置いたバッグを手探りで寄せる。
頭をはみ出させた状態でスライド式携帯のディスプレイでメール送信者の名前を確認した。
「ベンちゃんだ~。仕事終わったのかなぁ~?」
ベンジャミンとはお茶友として結構マメに連絡を取り合っている。
とはいえ、お互い仕事の都合上電話での連絡はリアルに繋がる事が難しいのでもっぱらメールのお世話になっていた。
そのベンジャミンのメールは、仕事の休憩時間である事、新しいパティセリーを発見したので時間があったら一緒に食べに行きましょう、とあった。
「わーい!ケーキ♪ケーキ♪」
足をパタパタと躍らせながら返信のメッセージを打つ。
『お仕事お疲れ様!アタシは明日からしばらくはお休みなの!ベンちゃんの都合でいいから日にちの指定お願いね♪』
「えい!」
送信ボタンを押してメールが送られる。
きちんと送信されたのを確認して携帯を閉じた。
「どんなケーキがあるのかな~?」
ミンメイは本当に化粧を落とす事を忘れ、いい気分で眠りに落ちそうになっている。

同時刻の格納庫。
ルーシーの愛機VF-1Jの調整が行われている。
コクピットでは何本ものコードが一台のノート型コンピューターと繋がり、蜘蛛の巣が張ってあるようであった。
シートにはちょこんと座り、コンピューターの小さなキーボードを、これまた小さい手でパタパタと叩くルーシーがいた。
「シュミレーションD…この展開での有効兵器は…射程圏に入らない、か…」
いつにない真面目な表情をしている。
雅持がタラップを昇ってひょこっと顔を覗かせた。
「ルーシー、コントローラーの整備は終わったの?」
「はい。今攻撃パターンの演算コンピューターの調整してます」
「そう。一休みしましょう。今、エルバにコーヒー持ってきてもらってるから」
「は~い!」
いつもの笑顔になって元気良く返事すると、またキーボードをパタパタと叩き一時停止のボタンを押した。
シートから立ち上がり、代わりにコンピューターボードを座らせてルーシーはタラップを降りた。
程なくしてエルバが小さいトレイにカップを3つ載せて歩いてくるのが見えた。
「遅くなりました。ごめんなさい。なんだかVE-1(エリント・シーカー)のピットに整備班が集まっていて、給湯室もこの時間にしては人がいっぱいいたので」
小さなバッテリーボックスの上にトレイを置き、まず雅持にカップを手渡しながらそう言った。
「VE-1?何かレーダーに映ったのかしら?」
「わかりません。3機のVE-1が急ピッチで計器点検などしているそうです」
今度はルーシーにカップを渡しながら静かに、給湯室で耳に入れた情報を口にした。
「…そか。じゃあ、これ飲んだらあなた達も自分のバルキリーのコンピューターを通常モードにしていつでも動かせるようにしておいてね」
真剣な顔つきになり、コーヒーを一口、口に含む。
「了解」
「ラジャ!」
ルーシーとエルバは左手にカップを持ちながら右手で敬礼を掲げた。



つづく



3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
拍手レス (かりな)
2009-11-01 19:42:37
>ゆばさん
ウチの輝は少年であり性年であったりするwww
寝ている時は顎を枕にくっつけて寝ているんだきっとwww@犬習性
だから物音と未沙のにおいに敏感www

ワンコへのお言葉ありがとうございます。
先に逝ってしまうものとわかっていても、やはり寂しいものですね。
返信する
拍手レス (かりな)
2009-10-31 20:11:09
>いろはさん
”ただいまのちゅー”って、なんからしくないなぁ…とか思いつつも書き入れました。
じゃないと色気も面白みもなくなっちゃうんでwww

歳だし、ワンコも4代目だったので、母も私も覚悟はしておりました。けどやっぱり淋しいですねぇ…。
円楽師匠と一緒に…なんだか西郷どんの像を思い浮かべてしまいました。
頼むから向こうで師匠に犬キックかまさないでね~~~~~!(私は何度か蹴られている)
返信する
あとがき (かりな)
2009-10-28 22:08:18
亀はいつものこって。
甘さ控えめも入ってます。
返信する