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『超時空要塞マクロス』(初代)輝×未沙中心だが
美味しい所はミンメイが持って行く二次創作(SS)ブログ。

インディゴブルー

2008-01-04 | 懐古編2
まだ夜が明けきれぬ頃、ぐったりと眠る未沙を起こさぬように輝はベッドから降りた。
トレーニングの上下を着てランニングの為外に出る。
昨夜自分が未沙にした事を思い起こした。
---あれじゃあ、まるでレイプだ。
ベッドから出る時に、シーツに赤黒いシミがポツポツと出来ているのが見えた。
強引に入れた時に少し傷つけたのであろう。
自分のした事の無残さに輝は苦みを感じた。
どうして自分はいつもこうなんだ。
もうしたくないと言いながら、同じ事の繰り返し。
いつも、いつも、未沙を傷つけてばかりいる。
未沙を愛している。その事に嘘は無い。だけど未だにミンメイに惹かれる自分がいる。どうして?何故?
答えの出ない自問を頭の中で繰り返す。
---俺は…一体何をしているんだ…。
走りを徐々にスローダウンさせ、やがて歩みに変わっていく。
脇目も振らずに走ってきた輝だが、今いる通りにはキャシーのマンションがある事を思い出した。
早朝である事を忘れ、輝はキャシーの家の戸を叩いた。
キャミソールにガウンを羽織っただけの格好をしていたが、憔悴した輝の顔に驚き、キャシーはリビングに通してコーヒーを淹れた。
「どうしたの?輝」
カップをテーブルに置き、一人掛けソファーに腰を降ろす。
「…彼女とケンカしたの?」
「…わからない」
答えがかみ合ってない。
輝は膝に肘をつき、手を組んで背を丸めている。視線はずっと床に向けられたままだ。
「輝?」
「自分がわからないんだ、キャシー…」
輝は突然ミンメイと再会した事、ミンメイから手紙が来た事、昨夜未沙にした事を正直に話した。
キャシーはそれを黙って聞いていた。
「俺は、未沙が大好きだよ。愛している。だから結婚するんだ。なのにミンメイの顔がちらついて、胸がざわめくんだ」
苦しそうに吐き出す輝をじっと見ている。
「…ミンメイが好きなのね、輝」
その言葉に弾かれるように輝は顔をあげた。
「違う!俺が好きなのは…!」
「そうやって反論するのがいい証拠よ」
輝は言葉を詰まらせた。
「彼女を愛してると口にして自分に言い聞かせてる」
「違う…俺は本当に…」
「確かに彼女はお互いを尊敬しあい、高みを目指せるパートナーだわ。でも初恋という甘い想いがミンメイを忘れさせてくれない」
私やクローディア、そして早瀬さんのように相手が死んでしまったならいつか諦めもつく。だけどミンメイは生きている。しかも、一瞬とはいえ、輝と心を通じ合わせていた。
そう簡単に忘れられるものではないだろう。
おそらくはミンメイも、同じ想いでいるであろう。
お互いを磨き合えるという事は、お互い気が抜けないという事。
だからこそ、柔らかい空気に焦がれる。
未沙は輝に柔らかさを求め、輝はミンメイに求めている。
しかしミンメイは柔らかいままではいられない。
彼女もまた、歌姫として羽ばたかなくてはならなかったのだから。
「頭でわかっていても、心がわかってくれないのね…」
「違う!違う!」
思い切り頭を振って否定した。
「否定すれば否定するほど、自分が誰を愛してるかわからなくなるでしょう」
輝は膝の上で拳を握り締める。悔しくて言い返せない。怖くてキャシーに顔を向けられない。
「認めてしまえば、楽になれるわよ」
「そんな…未沙を裏切るような真似は出来ない」
「自分を裏切るとは思わないのね」
ぎり、と奥歯を噛み締めた。
「でもね輝、貴方のミンメイへのそれは愛じゃないわ」
「…言ってる事が矛盾してる」
「そうね。矛盾だわ。…優しすぎるのよ、貴方」
輝はようやっとキャシーに顔を向けた。
「貴方を頼りにしてきたミンメイを振り切って、それでも彼女が幸せかどうか気にしている。自分ばかりが幸せでいいのかって」
「同情しているって言いたいのか?」
「少し違うわ。でもそれは輝、貴方が気がつかなくてはいけない事よ」
「…わからないよ」
そう言ってまた顔を床に向けてしまった。
「もう、帰りなさい輝。彼女が待ってるわよ」
輝は何かに気がついたように顔を強張らせた。
「……」
「輝?」
「怖い…」
「何が怖いの?」
「帰って…未沙がいなかったらどうしよう…」
あんな酷い事をした後だ。未沙が指輪を外して出て行ってしまってもおかしくは無い。未沙のいない家に帰るのが怖い。
「大丈夫。彼女は待ってるわよ」
キャシーは確信していた。
『こんな、他の女を心に棲まわせているような男と結婚する気なのか?!』というグローバルの問いに『今更』と答えていた彼女。
未沙もわかっているのであろう。輝がミンメイを捨てきれない事。
未沙は輝の中のミンメイごと、愛そうとしている。
世間知らずのお嬢様と思っていたけれど、なかなかの女ではないか、とキャシーは関心した。
「さ、輝。帰りなさい」
彼女の元へ。
キャシーは立ち上がり、輝の肩を叩いて帰宅を促した。
床を睨んでいる輝の顔は青ざめている。





5 コメント

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あとがき (作者)
2008-01-04 00:18:35
こういう男は嫌だー!って女性は多いだろうなー。
でも結婚と恋愛は別って女性も多いしなー。って、アタシの周りだけかなぁ?

>web拍手の匿名さん
 >未沙は救われるのでしょうか
 さあて、どうでしょう?
 救われなくても報われたいね。

…なんか未沙に冷たくなってきたな。どうした?女の子大好きな自分!
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いいっすねぇ。 (理沙)
2008-01-04 12:46:12
あけましておめでとうございます。

倒れ切っていない輝君。
いいねぇ。むしろこういう感じも知りたかったよ~。
「合○してえぇ~!!」という、何処かのサッカー小僧の雄叫びが聞こえて来そうです。
(あ、もうした後か。)

結婚と恋愛を分ける事自体私は納得してないんだ。
自分自身も既婚だけど、今でも旦那と恋愛しているから。
ただ「1人の人と一緒に暮らすよ~!」と世間に堂々と宣言しているだけでしょ。
結婚は別だ、ゴールだ、墓場だ、何ていうのは、自分の選んだ人との恋愛を妥協してしまっている人が言う言葉。
むしろ1つに決めた恋愛こそが大変。
だから、27話以降、結婚前の輝君が悩む事は、深い所へ踏み込む前の、大事な行動なんだろね。
先のお話が楽しみですねぇ。
大いに悩め、若者諸君~!!

――何故結婚するかって?
もっと深い「恋」と「愛」を知りたいからさ♪




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うん、うん (A)
2008-01-04 16:23:22
「理沙サン、グッジョブ! ドウカンデース!!」
(いきなりおばちゃん乱入。すみません)
ところで未だにパスワード解けないんですけど、、、、。

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うーむ (作者)
2008-01-04 17:33:35
そーかぁ。やっぱり(自分含めて)アタシの周りが特異なのか。

>理沙さん
あけましておめでとうございます。
うひゃ~。ラブラブ夫婦なのですねぇ。ごちそうさまです(^^)

>Aさん
はじめましてです。
パスワードはマクロスの正式艦名「○○○○○マクロス」の○の部分ですよ。
アルファベット小文字とハイフン(-)と数字。
年齢はともかく(爆)マクロス知らん奴に冷やかしで読まれたくないというつまらん拘りです、はい。
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ありがたや (A)
2008-01-05 06:29:29
あ、な~んだあ!!
パスワードはあれですねー。
なんせもう40が見えてくると頭が堅くて、、、、。
ありがとうございます。
改めましてAです。  宜しくです。

作者様の周りが特異>
  いや、そうでもないですよ。
意外と理沙さんがおっしゃっている通り
結婚後のコミュニケーションの方が重要だという事を
知らないカップル多いですしね。

理沙さん ラブラブ夫婦>
ふっっっ!! こちらと負けてないぜっ!!

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