今から私が話す一連の出来事を信じてくれる人間がいるだろうか。
こんな非科学的で馬鹿げた話、今どき誰も信じるわけがないのは十分わかっている。
気がふれていると思われるかもしれない。
しかし、それを承知で今これを読んでくれているあなただけには真実を伝えておきたいのだ。
そして、今から話すことは他の誰にも話さないで欲しい。
平成19年10月7日。午後2時半。
私は空腹だった。
空腹でふらつく足を半ば引きずるようにし、冷蔵庫の前にようやく辿り着いた。
震える手で冷蔵庫を開き、ゴハンのおかずになりそうな物を探す。
マーガリンが1つ入っていた。
だめだ。こんな物、おかずになんてなりゃしない。
ヨウカンが入っていた。
これもだめだ。こんな物、おかずになんてなりゃしない。
ろくな物が入っていない。
おかずになりそうな物は何も見当たらなかった。
深い溜息をつき、諦めかけたそのとき突如としてある物体が視界に飛び込んできた。
高さ10cmほどの小ビン。
ラベルには『イカの塩辛』と書かれてある。
それは私にとって、長くて暗いトンネルから抜け出すための光明だった。
私は想像した。
アツアツのゴハンにコイツをのせて、おいしそうにソイツを頬張りながら微笑む私の姿を。
私はビンを手にした。
透明のビンの内側にたっぷりの塩辛が確認出来る。
しかしまだ安心出来ない。賞味期限が切れているかもしれないからだ。
はやる気持ちを抑え、ビンの後ろ側を見た。
そこにはこう印刷されてあった。
賞味期限 S59.4.10
私は激怒した。
アツアツのゴハン云々という俺の未来予想図はもろくも崩れ去った。
多少の賞味期限切れなら目をつむる私だが、さすがにこれを食す勇気は持ち合わせていない。
「なぜだ!なぜこんなものが冷蔵庫の中に・・・」
私は号泣しながら冷蔵庫の前で膝からガックリと崩れ落ちた。
最後の希望は消えた。
もう空腹で一歩も動けそうにない。こぼれ落ちる涙をぬぐう気力すらない。
意識が遠のいていく過程が自分自身でもよくわかった。
また私は暗闇へと逆戻りするのだろう。
思えばつまらない人生だった。
小・中・高とイジめられ、親のコネで入った職場でもイジメに遭い退職。
その後バイトを始め、現在まで食いつないでいるものの収入は微々たるもの。
ゲームと漫画と音楽と映画の知識を増やすことで自己の存在を確認し自己満足に浸る。
友人と呼べる者はいない。
彼女いない歴は先月でめでたく30年目を迎えた。
将来の展望など何もありゃしない。
「本当につまらない人生だったな」
私は声に出してそうつぶやいた。
・・・そのとき、どこからともなく声がした。
「君はひとりじゃない」
ついに幻聴まで聞こえるようになったか。
私は苦笑いした。
「君はひとりじゃないんだ」
もう一度聞こえた。これは幻聴じゃない。
私は最後の力を振り絞り、顔を上げた。
・・・イカだ。
そこには、イカがいた。
「君はひとりじゃないんだよ、成海ケイタ君」
私の第二の人生とも言えるべき不思議な物語は、まさにここから始まったんだ。

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こんな非科学的で馬鹿げた話、今どき誰も信じるわけがないのは十分わかっている。
気がふれていると思われるかもしれない。
しかし、それを承知で今これを読んでくれているあなただけには真実を伝えておきたいのだ。
そして、今から話すことは他の誰にも話さないで欲しい。
平成19年10月7日。午後2時半。
私は空腹だった。
空腹でふらつく足を半ば引きずるようにし、冷蔵庫の前にようやく辿り着いた。
震える手で冷蔵庫を開き、ゴハンのおかずになりそうな物を探す。
マーガリンが1つ入っていた。
だめだ。こんな物、おかずになんてなりゃしない。
ヨウカンが入っていた。
これもだめだ。こんな物、おかずになんてなりゃしない。
ろくな物が入っていない。
おかずになりそうな物は何も見当たらなかった。
深い溜息をつき、諦めかけたそのとき突如としてある物体が視界に飛び込んできた。
高さ10cmほどの小ビン。
ラベルには『イカの塩辛』と書かれてある。
それは私にとって、長くて暗いトンネルから抜け出すための光明だった。
私は想像した。
アツアツのゴハンにコイツをのせて、おいしそうにソイツを頬張りながら微笑む私の姿を。
私はビンを手にした。
透明のビンの内側にたっぷりの塩辛が確認出来る。
しかしまだ安心出来ない。賞味期限が切れているかもしれないからだ。
はやる気持ちを抑え、ビンの後ろ側を見た。
そこにはこう印刷されてあった。
賞味期限 S59.4.10
私は激怒した。
アツアツのゴハン云々という俺の未来予想図はもろくも崩れ去った。
多少の賞味期限切れなら目をつむる私だが、さすがにこれを食す勇気は持ち合わせていない。
「なぜだ!なぜこんなものが冷蔵庫の中に・・・」
私は号泣しながら冷蔵庫の前で膝からガックリと崩れ落ちた。
最後の希望は消えた。
もう空腹で一歩も動けそうにない。こぼれ落ちる涙をぬぐう気力すらない。
意識が遠のいていく過程が自分自身でもよくわかった。
また私は暗闇へと逆戻りするのだろう。
思えばつまらない人生だった。
小・中・高とイジめられ、親のコネで入った職場でもイジメに遭い退職。
その後バイトを始め、現在まで食いつないでいるものの収入は微々たるもの。
ゲームと漫画と音楽と映画の知識を増やすことで自己の存在を確認し自己満足に浸る。
友人と呼べる者はいない。
彼女いない歴は先月でめでたく30年目を迎えた。
将来の展望など何もありゃしない。
「本当につまらない人生だったな」
私は声に出してそうつぶやいた。
・・・そのとき、どこからともなく声がした。
「君はひとりじゃない」
ついに幻聴まで聞こえるようになったか。
私は苦笑いした。
「君はひとりじゃないんだ」
もう一度聞こえた。これは幻聴じゃない。
私は最後の力を振り絞り、顔を上げた。
・・・イカだ。
そこには、イカがいた。
「君はひとりじゃないんだよ、成海ケイタ君」
私の第二の人生とも言えるべき不思議な物語は、まさにここから始まったんだ。


