・ 四季の代表魚Representative fish of the four seasons しきのだいひょうぎょ
旬の魚には、それぞれに特徴がありました。寒い時期の魚は、油が乗っています。
鱈は、肝臓に油をため込んでいます。暑い時期を旬とする魚は、淡白なものが多い様です。
春:さわら、とびうお、さより、にしん、あじ、桜鯛、きびなご、ます、初カツオ
夏:きす、あゆ、すずき、するめいか、あなご、はも
秋:さば、かます、鮭、さんま、はぜ、きんめだい、かれい
冬:いわし、わかさぎ、はたはた、ふぐ、あんこう、たら、ぶり、まぐろ、ほっけ、ひらめ、うなぎ
などがあります。
最も季節を代表としている鰆(さわら:春)、鱸(すずき:夏)、秋刀魚(さんま:秋)、話題の鮪(まぐろ:冬)についての記載です。
*鰆、狭腹、小腹、馬鮫魚Spanish mackerel さわら(さごし)
サバ科に属する。季節により移動する回遊魚で北海道南部以南でとくに産卵期に瀬戸内海で多く水揚げしています。関西以西ではサゴシと呼ばれ成長すると体長が1m、重さ5kgにもなり成長するに従いサゴシ(青箭魚:サゴチとも・40~50cm)、ナギ(50~60cm)、サワラ(60cm 以上)ともいいます。
名前は腹部が狭いという意味の狭腹(さはら)、旬が春で魚偏に春をつけ鰆(さわら)とした説がある。細長く頭の小さい銀白色をした駿足のスマートな魚で4~5月の産卵期が旬です。花盛りの頃に獲れるサワラを和歌山では「桜鰆」と呼び、サワラを春の使者ともしています。
真子(まこ)といわれる卵巣は、旬の食材と一緒に煮物に使われたり、からすみがつくられ、白子は、吸い物、味噌汁に使われます。10月からは寒さわらとして油がのったのも、おいしく食べられます。
肉質が柔らかく身割れしやすい魚なので取り扱いは、丁寧におこないましょう。一般に、尾頭付きで頭のほうが好まれますがサワラは、尾っぽのほうがおいしいといいます。
白身であっさりとした感じもしますが実は赤身魚で大海を長距離回遊するのが特徴で脂肪が9.7%と比較的多く新鮮でアニサキス(-20℃2日で死滅)の寄生虫の危険性のないものは刺身に、押し寿司、塩焼き、焼き魚、西京焼き、粕づけ、フライ、煮込み料理に用いています。魚肉にくせのないことから西洋料理、中華料理にも使われ、クリーム煮、グラタン、衣あげに調理もしています。
100g中でエネルギー177kcal、水分68.6g、蛋白質20.1g、脂質9.7g、炭水化物0.1gを含み、カリウム(490mg/100g:浸透圧の調整、高血圧予防)、ビタミンB2(0.35mg/100g:エネルギー代謝に関与)、ナイアシン(9.5mg/100g:胃腸疾患・皮膚炎の改善)、EPA(0.5g/100g)DHA(1.2g/100g)を特徴的成分として含む。
*鱸Seabass すずき
温帯性、白身の魚で、あまり泳ぎ回らず日本全国河口付近で秋から冬にかけ産卵し終わった頃の夏の6~8月を旬とします。
春の桜鯛(鰆)、夏のすずき、秋のさんま、冬のひらめ(まぐろ)とともに旬の代表的魚として知られます。出世魚(ヒカリゴ→コッパ→セイゴ→フッコ→スズキ)です。
あっさりした旨みのある白身の魚で刺し身、夏に清涼感の食べ方として山椒酢味噌、わさび醤油をつけ洗い(新鮮な生きている活魚[かつぎょ]をストレスを与えないようにして刺身とし氷水にくぐらせ硬直させ縮み、しこしことして旨みが増す)にするとよいでしょう。出来れば死後血抜きし冷蔵で3日置いた方が美味といいます。
他に塩焼き、椀だね、鍋物にも、洋式料理でフライ、バター焼き、グラタン、煮込み、中華料理で寄せ鍋にも利用していす。
活魚が洗いとしてよいのは、新鮮魚肉中のATP(アデノシン三リン酸:筋肉を収縮するのに必要なエネルギー)が氷水中でイオン平衡が崩れ、急激に分解が進むことによります。硬水のほうがより筋肉の縮み、硬直が見られます。
100g中でエネルギー123kcal、水分74.8g、たんぱく質19.8g、脂質4.2gを含みます。
*秋刀魚Pacific saury さんま
サンマ科、寒流に乗り群れをなし移動、8月千島より南下し翌年1月に和歌山沖に達します。寒帯性の魚で産卵が10~12月でそれ以前のものが油がのり九月に三陸沖で主に北太平洋沿岸で捕獲しているものを旬としています。
油ののりが産卵前の旬のもの(25%)と産卵後(5%)1月のものとでは大きな差がみられています。
塩焼き、マリネ、酢の物、蒲焼、刺身、缶詰、生干し、みりん干し、燻製に利用します。
油の抜けた秋刀魚は、姿鮨、干物に加工に回されます。
青魚でEPA、DHAを多く含み、脳梗塞、血栓症予防効果があります。ハラワタ、血合いにビタミンB12、鉄分(貧血予防)を多く含みます。
*鮪Tuna まぐろ
サバ科、世界中の海を回遊するカツオやマグロは持久力に優れた筋肉で赤筋 (遅筋)が発達しています。
冬季にかけてが漁獲の最盛期を迎えますが、暖海性の魚で九州以南では年中水揚げしています。日本では、世界の漁獲高の4割を日本人が消費しているようです。
本鮪(全鮪漁獲量の2%程度で珍重している)で近海物の10~12月に捕獲する脂肪の多い津軽海峡の荒波と餌、水温に恵まれた青森県大間で水揚げされるのが美味しいといいます。江戸時代には、下等の魚と見られていました。
現在では新鮮な油ののりのよいところを「とろ」と称し好まれ刺身、寿司ネタ、赤身を山かけとするものが最も多く、照り焼き、フライ、しぐれ煮、鍋物にもしています。
工場廃水の多いところで捕獲した脂身には、ダイオキシンの濃度が強く大量摂取は避けたほうがよいでしょう。
とろの部分は、不飽和脂肪酸のEPA、DHAを含み、喘息改善、動脈硬化予防、脳の活性化作用があり本鮪脂身(とろ:DHA2.9g/100g中)には多く含みます。
*魚類Fishes ぎょるい
魚肉の成分組成は、およそ水分60~86%(標準71~79%)、タンパク質10~27%(17~23%)、脂質0.5~20%(1~6%)、炭水化物0.1~1.8%(0.1~0.8%)、
灰分0.6~3%(1.0~1.5%)、ナトリウム30~150mg(60mg)%、カリウム250~500mg(400mg)%、カルシウム5~200mg(30mg)%、マグネシウム10~60mg(30mg)%、リン100~400mg(220mg)%、鉄0.4~5mg(1mg)%、銅0.04~0.6mg(0.35mg)%、イオウ100~300mg(200mg)%、ヨード0.01~0.2mg(0.17mg)%、
ビタミンA3μg~8,500μg(30μg)%、ビタミンD0~35μg、ビタミンB1:0.01~0.85mg(0.1~0.2mg)%、ビタミンB2:0.01~6mg(0.01~0.44mg)%であり、ビタミンCは殆ど含みません。
血合い肉は、脂質が多くビタミンA、B1、B2、B12を普通の肉に比べ数倍から数10倍に達し栄養的価値が高くなります。
魚は、季節により脂肪量に大きな差があり味も異なってくるので美味しい時期の旬のものを選ぶのがよいのですが冷凍技術の発達により旬のものが冷凍され旬がわかり難(にく)くなっています。
蓄肉類と異なり魚肉は、筋繊維が短く、組織が柔らかいことから、熟成期間が短く(牛肉で0℃で10日・魚5℃で3日位)生きた活魚(かつぎょ)、または死後硬直期間中のものを用いた方が歯切れ、味がよいといわれます。
素材そのものの味を重視することから刺身、煮魚、焼き魚など単純な料理法が好まれます。脂肪は、常温で液体で血清コレステロールを抑制する作用があります。
まぐろの赤身、かつお、鮭、鮫に多く餌を追う魚の驚異的スピードの源になる赤身にアンセリンの疲労回復、すじにコラーゲンを多く含み美肌、美容によく血合い部分にタウリンを含み解毒作用があります。
ヒスチジンが青身の魚(いわし、さば、さんま、かつお)で血合い部分に多く血管を柔軟にし血流をよくし、脂肪分解酵素としてエネルギー代謝に関与しています。100g中でかつお2.3g、本マグロ赤身2.6g、さば1.2gなどに多く含みます。
赤身魚と白身魚、魚油の含有量の多少によって、栄養素の含む量、その持つ作用が異なって、食感、旨味(腐敗の一歩手前)が異なり旬な新鮮な魚の保存方法が美味しさ、栄養の決め手となるようです。
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