SHINGOROKU

日常のさまざまな風景…その中に…色々なモノを背負いながら…色々な自分がいて…我が心の風景、今ここに記す。新たな出逢い!?

ある風景②

2006-05-28 12:17:47 | Weblog
彼女はお酒の大好きなポルノ女優であった。深夜の公園。彼女は酔っ払ってつぶれていた。やがて通りがかったあるサラリーマンが声をかけた。「大丈夫ですか?」季節は冬。心配になったその男性は歩くのがやっとの彼女を自分の家に連れていき、ベッドに寝かせた。(そして彼は…と言いたい所だが)彼は畳に寝た。翌日、彼は昨夜の状況などを書いた置手紙を残し、会社に行った。夕方頃に彼女は目を覚ました。あまり記憶は無かったが、彼の好意ある行為に小さな感動を覚えた。そしてその部屋で眼に入ったもの――それは洗濯したままになっていたシャツや下着や靴下だった。彼女はそれらをきれいにたたみ、そして家を出た。そこで神様は素敵なイタズラをした。彼女は自分の鍵をその部屋に忘れてしまったのだ。一方、彼は帰宅し、たたまれている洗濯物を見て小さな感動を覚えた。彼女は再び彼の家へと…ドアをノックする。ドアが開いた。彼は開口一番、「一緒になって下さい!」そして彼女は「はい!」彼女は仕事を辞め、結婚した。ある年の彼女から年賀状――「今でもお酒には感謝しています。」彼女はもうお酒は飲んでいない。

ある風景①

2006-05-12 22:00:05 | Weblog
そのお店は、常連客の集うカウンターだけのスナック。その夜は暇で一人で飲みに来ているお客が2人だけ。カウンター内のボーイと静かな雰囲気の中、静かな会話が続いていた。やがて常連の中年男性が一人の女性を連れて来店。この男性はかなり酔っていた。そしてお酒を注文すると、カラオケは無いのに「歌いたい!」と言う。ボーイは周りのお客を気遣って困ったが、とりあえず1曲だけという事になった。アカペラで大声あげて歌う男性。それも歌はヘタクソ。当然お店はシラけた雰囲気。歌い終わると「もう1曲!」と言い出す始末。そして結局2曲目へと…その酔っ払い男性は「こいつの事、大好きなんだよ!こいつのためにもう1曲歌いたい!俺の好きなこの店で歌いたいんだ!」などと言いながら、更に3曲目、4曲目へと歌は続いた。ボーイと他の2人のお客はただ聞くだけの状況。やがて歌が6曲目、7曲目あたりになった頃、そのお客とボーイは一緒に手拍子を打っていた。そして隣の女性は静かにうつむいたまま、目頭を赤くしていた。その男性の不器用ではあるが一生懸命の想いが、他のお客にもボーイにも、そして彼女にも熱く伝わってきたのだ。2人が帰った後、残ったお客の一人が言った。「いい店だよね。」翌年、ボーイの元に一通の年賀状が届いた。そこには2人の結婚披露宴の写真が載っていた。そしてひと言添えてあった。「あの時のヘタクソな歌がきっかけでした。ありがとう。」