
中学2年の時のポップグループの洗礼でスタートしてしまったパンク/ニューウェーブ体験は、結構その後に影響大で、クラッシュを一聴でダビングもしないで友達に返してしまったり、その後中学3年になってすぐピストルズやハートブレイカーズを聴いて「何だ、パンクってただのロックンロールじゃん」と思ってしまったりと、まあ今考えるとある意味正しいんだが、とにかく小生意気で耳年増な中学生を作ってしまったのだった。
とはいえ、ダムドやジャムやバズコックス、オンリーワンズ、ワイヤー、マガジン辺りまで聴くようになると、何だかんだ言いながらもかっこいいなと思っていたし、その辺のオリジナルパンクはカセットテープにとって、後々までせっせと愛聴していたのだから、ロックのストライクゾーン自体は、そんなに狭くもならなかったんだろうとも思う。ただ、「聴いたこともない音楽」に対しての欲求は確実に培われたのは、間違いない。
PILは、実はまだジャズしか聴いていない頃から名前だけは知っていた。というのは山下洋輔と親交の深いジャズ評論家の相倉久人の本で、何故か後半にPILの評論が収められていて、バンド名についてや、ファーストの曲「PUBLIC IMAGE」の冒頭の「ハローハロー」というセリフ(歌)について書いていたのを読んでいたからだ。<国分寺もとまち図書館>の本棚のどの辺にあったかとか、余計な事はいまだに覚えているのに、本のタイトルが思い出せないのだが、基本的にジャズ評論の本の中に、ニューウェーブの評論のみ何本か収録されていたのは何だったのか。まあ、そんなわけでわりと予備知識はあったバンドだった。
最初に聴いたのは丁度リリースされたばかりの「THIS IS NOT A LOVE SONG」の12インチシングルだったと思う。わりとダンサブルだし、普通に聴きやすいと思っていたが、その次に聴いた「FLOWERS OF ROMANCE」のインパクトが凄かった。
「FLOWERS OF ROMANCE」については、クラスメイトの石原(当時B.B.GUNでボーカル、現在NY在住、当時から天才肌の男)が、友達にこのアルバムを借りて「ドラムソロばっかり入ってるね」と感想を言って返したというエピソードがあり、「ジョン・ライドンはボーカルなのに、何故にドラムソロ?」と思っていたが、聴いてみて言ってること間違っていることに気がついたが、意味は理解できた。
このアルバムの曲は全てドラムがでかい、っていうかほとんどドラムと歌だけのような曲ばかりだ。当時1stも2ndも聴く前でサウンドの変遷も知らないし、何故かレンタルしてきたその「FLOWERS OF ROMANCE」は輸入盤だったようで、ライナーも入ってなかったので、この時期オリジナルメンバーのPILが崩壊し始めていた事などまるで知らない状態だった。しかしこの、引き算されすぎてほぼマイナスになっている状況で作ったはずのやけっぱちなアルバムは、やっぱりPILの最高傑作なのだと思う。このアルバム全体に流れる禍々しい感じは、結局ジョン・ライドンの声によるところが大きいんだろうと思うし、1stや2nd、いやもっと言えばピストルズにもそういう部分はあったとは思うが、ここまで「呪いブシ」とでもいえるような禍々しさは、他にはない。
ドラマー的な話をするなら、楽器を演奏する人間は、知っている人が聞けば、人の声と同じようにすぐに誰か分かるような、音色やリフやフレーズを持ちたいとみんな思っているはずだ。例えばボ・ディドリーやチャック・ベリーのギターのフレーズや、ジョン・ロードのオルガンのファズトーンや、アート・リンゼイのギターの音色といったようなのは、どんなに簡単なものでも、オリジナルとして認知されてしまえば、他の人がやると「マネ」になってしまう。これはある意味プレイヤーとしてより、もはや個人として認知されているのに近い。それはある意味、不特定多数を相手にして音楽を演奏するという事から考えると、とてつもなくすごい事だと思う。ところが、ドラムの場合もともと楽器がアコースティック楽器なわけで、基本のセットが大体同じだから、チューニングでいい音にすればするほど似た音色になってくるところがある。そうなると個性を出すためにはリズムパターンやフィルイン(オカズ)で勝負するしかない。ジョン・ボーナムが凄いのは、普通なら絶対に(物理的に)演奏しにくいベロベロのチューニングをしているため、音色が他のドラムとは違う上に、タイム感(リズムの捕らえ方)が独特だったことで、誰が聞いても「あ、ボンゾだ」と分かるところだ。初期のキース・ムーンもそうだが、音色とフレーズという切り札を二枚も併せて持っているのは、この二人くらいしか、いまだに存在しない。
そんなわけでドラマーは誰もやってない特徴的なフレーズを作るのに四苦八苦するわけだが、このアルバムの時のドラマー、マーティン・アトキンスは一曲目「FOUR ENCLOSED WALLS」のフレーズだけで、俺のオリジナリティ殿堂入りに決定となった。リハーサルとかでごくたまにこのリズムパターンを叩くことがあるのだが、これまたごくたまに何の曲だか気がつく人がいて、同じ音楽が好きなのが分かると、ちょっとうれしくなる。
それにしても、今回ネットでジャケットの画像を探してみたら、どれも画像が時計と反対周りに90度回っている。アナログは横になってて「ああ、きっとこれは花が縦になるようになっているんだ」と勝手に解釈していたんだけど、これって勘違い?
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