東京新聞夕刊2017年11月7日【大波小波】転載
福島第一原発事故の全貌は未だ分からず、廃炉工程表の見直しも余儀なくされる状態なのに、各地で原発再稼動が進む。多くの国民の不安をそらすかのように、政府は北朝鮮の核開発、ミサイル発射実験を声高に非難する。『核の平和利用』への不安など取るに足らない、とばかりに・・・。
文学・文化研究の川口隆行編著の『<原爆>を読む文化事典』(青土社)が出た。原発より原爆が問題といった政治宣伝とは異なる、核の歴史と現在に真摯に向き合った労作である。ヒロシマ、ナガサキから始まり、福島第一原発事故およびその後までを、七十の項目を立てて明らかにする。論争・事件史、表現と運動、語る/騙る、イメージ再考という部立ても新鮮だ。
「朝鮮半島と核危機」という、現在に直接かかわる項目もある。そこで高榮蘭は、政府やメディアが「『朝鮮半島』危機の主体を『朝鮮(韓国)ではなく、『日本』にすり替えている」と指摘する。
北朝鮮のミサイル発射で、日本ではJアラートが鳴り響くが、韓国でここまでの大騒ぎはない。確かに日本が主体とも思える政府の過度の危機煽りである。本当に危機的というなら、再稼動した原発こそ、標的となりうる「危機」そのものではないか。(懐疑派)
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