山崎元の「金融資産運用論」

獨協大学特任教授の山崎元です。このブログは「金融資産運用論」の講義資料や講義の補足などを提供する目的で運営するものです。

【春学期 1回目】ガイダンス

2011-04-20 17:46:33 | 講義資料

 2011年春学期の「金融資産運用論」を開講します。

 

(1) 今学期の大まかな講義の予定は、以下のようになっています(シラバスから引用)。今のところ、大きな変更は予定していませんが、最初の4回くらいで、一般向けのお金の運用のガイダンスで話すような「運用入門」的な内容をカバーして、その後に、運用入門の理論的な背景に相当する内容を説明する予定です。

 

  2011年・春学期の予定>

 

1.    ガイダンス(「金融資産運用論」の概要)

2.    主な金融商品の紹介.

3.    主な金融商品の紹介.及び「投資と投機」の区別

4.    個人の資産運用プロセスと方法

5.    運用における合理性とは何か

6.    投資の損得計算の基礎

7.    異時点間の価値比較(割引現在価値、利回り)

8.    「リスク」の意味と扱い方

9.    資産配分(アセットアロケーション)の作成方法

10. モダンポートフォリオ理論の理論構造

11. 「市場の効率性」とアクティブ運用・パッシブ運用

12. 行動ファイナンスの概要

13. ビジネスとしての資産運用

14. 株式運用の方法

15. まとめ(個人の資産運用再説)及び試験ガイダンス

 

(注1. 4回目までで個人の運用入門をカバーしたい

 注2.講義の内容、順番には入れ替わりがある)

 

(2)図を見て下さい。

 この図は、投資に関する理論の大まかな位置づけを図解したものです。

 大まかには、合理的な人間と(概ね)正しい価格を実現する市場を前提とした伝統的なファイナンス理論(「金融工学」などと称しているような分野を含みます)の積み重ねがあって、これを批判しつつ、非合理的な人間と誤りの多い市場を前提とした「行動ファイナンス」が過去30年くらいの間に発達して来ました。

 投資家の立場で実用的に考えると、行動ファイナンス的な視点で自分の誤りを探し、伝統ファイナンスで前提としたような考え方で行動することで、資産運用を改善することができます。

 一方、運用商品を提供する側では、伝統ファイナンス、行動ファイナンスの研究成果を時には金融商品のマーケティングに「悪用」する場合があります。「悪用」の内容は講義の中で追々ご説明していきますが、理論の基本的な考え方を知っておくと、騙されにくくなる、と思っておいて下さい。

 

(3)お金が儲かる心構え(?)

 

 たとえば、皆さんが会社に就職したときに、お金との付き合い方について次のようなアドバイスをする先輩A、B、Cがいたとしましょう。誰のアドバイスを聞くと将来豊かな経済生活を送ることが出来るか、考えてみて下さい。

 

先輩A「貯めたい分を目先の消費から遠ざけておくことが、まず大切だ。毎月の給料の一定額を天引きで積立貯金していくといい。そして、残った分だけで生活をやり繰りするんだ。若いうちは、『節約にまさる運用なし』だよ。ある程度の貯金ができたら、より有効なお金の置き場所を考えていこう」

 

先輩B「お金というのは、経験を買うために使うべきものだよ。小金を貯めたいばっかりに、若いうちにやりたいことを我慢するなんて、それこそ機会の損失だ。食べたいものがあれば買って食べればいいし、行きたい場所があれば行けばいい。学びたいことがあれば、どんどん学べばいい。そのために使うお金を惜しむな。ただし、借金だけはするんじゃないぞ」

 

先輩C「お金というのは、早くから運用を始めた人が多く貯められるものなのだ。時間を味方にできるからね。まとまった資金がなければ投資ができなかったのは昔の話。今は小さな金額でも大きく増やせる金融商品がたくさんある。俺は証券会社に勤める専門家と親しくして、情報をいち早く教えてもらっているよ。今度、一緒に話を聞いてみよう」