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Musica Poetica

音楽や本について語ります。

リヒテルのバッハ ~ 平均律クラヴィーア曲集

2012-03-13 | ディスク

バッハの鍵盤楽曲を聴くときに好んで聴くのはグールドなんですが,《平均律》に関してはグールドに馴染めませんでした。それでもバッハの《平均律》は折に触れて訊きたい曲なので,グールド以外で誰の演奏を聴こうかなぁ……ってあれこれとディスクを調べていたときに「リヒテルってどうだろう?」と思い購入したのがこのディスクです。


それで,このディスクですが,当たりかハズレかどちらかといいますと……

 

大当たりですっ!

 

とはいえ,このリヒテルの演奏が気に入らない人もいると思います。特に僕とは逆にグールドの《平均律》に馴染んでいる方の中に。リヒテルの演奏とグールドの演奏を比べてみると以下のような違いがあります。

 

リヒテル…ウェット/韻文詩的/ロマン派的   ,などなど

グールド…ドライ /散文詩的/ポスト・モダン的,などなど


二項対立的図式でまとめるとこんな感じじゃないでしょうか。


リヒテルの演奏は,一言でいえばロマンティックといえます。ですが,19世紀のバッハ解釈にみられるような“ロマン派”的な演奏とは異なります。バッハの楽曲構造がくっきりとみえる演奏です。ヴィクトル・ユゴーのような熱情的なロマンティックさではなく,ステファヌ・マラルメなどの象徴派詩人にみられる“冷やかなロマン”が,リヒテルの演奏には表れています。その冷やかさを通して,バッハの楽曲構造が浮かび上がってくる感覚を感じます。


音楽演奏において楽曲構造の提示を重視する姿勢について,当然のことながら,グールドはとても意識的です。しかし,グールドの《平均律》は,構造性への意識が強く出てしまったが故に“奇を衒った演奏”のように感じられるのです。一方,リヒテルの演奏は,実に素直です。彼がバッハの楽譜から読み取ったものをそのままそっと差し出した結果が,楽曲構造の意図的ではない提示に繋がったのだと思われます。


リヒテルとグールド。どちらの演奏も名演には違いないので,できればどちらも聴いて頂きたいです。


ところで,この記事の画像は国内盤ディスクのものなのですが,リンク先は輸入盤にしてあります。なぜってそちらの方が安いからです!


Sviatoslav Richter(pf), <<J.S. Bach: The Well-Tempered Clavier>>, RCA


4か5か,それが問題だ ~ モーツァルトの弦楽四重奏曲と弦楽五重奏曲

2012-02-26 | ディスク
 
 
モーツァルトの器楽曲は協奏曲をもってその頂点とする,というのが僕の基本的な感想なんですが,たまには小規模の楽器編成の楽曲も聴きたくなるものです。モーツァルトに限らなければ,もともと大規模管弦楽曲よりも室内楽を好む性質なので,なおさらです。
 
そこでモーツァルトの室内楽ついて,あれこれ考えるのですが,もし仮に誰から「モーツァルトの室内楽でオススメってなぁ~に?」と尋ねられたら,迷うことなく菅を含んだ室内楽を紹介するでしょう。これは僕の持論なんですが,声楽を得意としている作曲家は器楽曲においては管の扱いが上手い,と思われます。「上手い」という表現に語弊があるならば,管を含む楽曲の方が面白い,と言い換えてもよいです。例えば,ぐっと現代の作曲家になりますが,プーランクなどもそういう人です。様々な楽器編成の室内楽を作曲したプーランクですが,聴いていて面白いのはフルート・ソナタや六重奏曲などの“管モノ”です。ヴァイオリン・ソナタやチェロ・ソナタも悪くないですが,“管モノ”と比較すると落ちます。特にドビュッシーやラヴェルの同編成の曲と比較すると,はっきり言ってつまらないです。あのフルート・ソナタを書いた人とは思えないくらいに。
 
話が脱線しましたが,モーツァルトも同じような傾向があって,彼の室内楽で聴いていて飽きないのはやはり管を含んだ楽曲です。クラリネット五重奏曲というモーツァルトにとってのみならず,クラシック音楽というジャンル全体にとっても白眉と言えると作品もありますしね。ただし,モーツァルトの場合,他の室内楽がつまらないか,と言われると困ってしまいます。結論から言えば,弦楽のみの楽曲だって充分に面白いのです! 凡百の作曲家が束になって掛かってきても全然負けないくらい名曲なのです。しかし,他のモーツァルトの楽曲と比べてしまうと,やや落ちるということですね。
 
そんなモーツァルトの弦楽曲ですが,メインは四重奏曲と五重奏曲です。《変ホ長調のディヴェルティメントK.563》という弦楽三重奏曲もあり,これは何と言うか実に素晴らしい曲なんですが,ある程度まとまって書かれた曲でいえば,弦四と弦五になります。それで,今回は“弦四vs弦五”ということで,ディスク紹介をしたいと思います。ところで,弦五は第1番から第6番までの全曲に登場を願えばよいのですが,弦四はどうしましょう? 第1番から第23番までありましねぇ。でも,やっぱりというか何というか,“ハイドン・セット(第14番~第19番)”に登場をお願いしましょう。ハイドンがロシア四重奏曲で確立した古典的ソナタ形式による弦四の形式を踏まえて書かれた傑作群ですしね。
 
そこで,まず,モーツァルトの弦四(ハイドンセット)の特徴ですが,
・形式感が整っていて無駄がない
という点が挙げられるでしょうか。こう言葉にしてしまうと何ともない感じがしてしまいますが,それは僕に音楽を語る表現力がないからです。ごめんなさい。ただ,本当に無駄な音が無くって洗練されているのです。しかし,地味と言えば地味です。
 
一方,弦五ですが,
・実にコンチェルタントである
となります。もう少し書きますと,モーツァルトの弦五は「弦四+ヴィオラ」という編成になるのですが,この結果,第1ヴァイオリンと第1ヴィオラの掛け合いだとか,主旋律上の出入りだとかが面白く,一種の二重協奏曲的な楽しみがあります。
 
それで,僕としてどちらに軍配を上げるかというと......,“弦五”です! って想像がつきそうな結果ですよね。
 
兎にも角にも,モーツァルトの弦四と弦五,どちらも名曲なので一度聴いてみてください。ディスクはいろいろとありますが,僕が聴いているのは以下のディスクになります。

弦楽四重奏曲集(ハイドン・セット)

弦楽五重奏曲全集

清浄な官能性 ~ シェーンベルク《月に憑かれたピエロ》

2012-02-24 | ディスク

 

ラヴェル《ステファヌ・マラルメの3つの詩》のディスクを紹介したからには,いずれは“これ”も紹介しないといけないよなぁ...とは思っていたんです。“これ”というのは,シェーンベルクの《月に憑かれたピエロ》のことなんですけど。ただ,シェーンベルクというか新ウィーン楽派というか,以前集中的に聴いてみて,結果挫折しているんですよね。それで無調から12音技法に至る音楽を理解できない自分に凹んだりして。そういうこともあり,今までは敬して遠ざけておりました。

 

でも,せっかくブーレーズの5CDアルバムに入っているので,聴いてみたんですよ。先に述べたようなラヴェル繋がりもあるしなぁ,と思って。で,聴いてみたら......,

「よかった! それも,すごーく!」

実に官能的な音楽。でも,湿り気や香気にあふれているわけではない。清潔と言ってもよいくらいの官能性。いやはや,不思議な音楽です。

 

編成は,“フルート(持ち替えでピッコロ),クラリネット(持ち替えでバスクラリネット),ヴァイオリン(持ち替えでヴィオラ),チェロ,ピアノ”の室内楽アンサンブルに“ソプラノ独唱によるシュプレッヒシュティンメ”が加わります。

「シュプレッヒシュティンメ?」

って思いますよね。多分,レチタティーヴォと同じようなものです。要するに,「歌のような朗読」みたいなもので,指定されたリズムやピッチに則るけれど,ピッチは安定させず,語るように歌うやり方です。


ラヴェルの《ステファヌ・マラルメの3つの詩》を聴いて気に入っていただけた方なら,絶対にハマる音楽ですので,よろしければご一聴を。


Pierre Boulez(dir) et al., <<Schoenberg: Pierrot Lunaire>>, in <<PIERRE BOULEZ: ORIGINAL ALBUM CLASSICS>>, Sony Music

 


フランス語のススメ ~ ドビュッシー《ビリティスの歌》

2012-02-23 | ディスク

まだまだ寒い気候が続きますが,もうすぐ春ですよね!

 

春は新たなチャレンジの季節でもありますが,未知の外国語にチャレンジ!って人もいるのではないでしょうか。そんな人たちの中には「外国語やりたいけど,何語にしよーかなー」という方もいるでしょう。まぁ,大概そういう方は外国語学習に失敗するのですけど。

 

それはさておき……,音楽を聴いていて「外国語が分かるともっと理解が深まるのかなぁ」と思うときってありませんか? 単純な例としては歌詞の内容とか。このきれいな響きの言葉の意味は何だろうって感じで。きれいな響きと言えば,言葉って旋律がなくても,ただ美しいこともあるんですよ。詩の朗読など,そうですよね。


そこで登場するのがドビュッシーさんです。ピエール・ルイスの散文詩『ビリティスの歌』の朗読に音楽をつけているんです。付随音楽って奴です。

 

世評では,カトリーヌ・ドゥヌーヴ朗読のディスクが高い評価を得ているようですが,僕は持っていないし,入手困難です。そこでお薦めなのが

ナッシュ・アンサンブル演奏,デルフィーヌ・セイリグ朗読《ドビュッシー:ビリティスの歌》

す。実は画像のディスクは入手困難なのですが,同じ音源がVirginから出ているドビュッシーの5枚組ディスクの5枚目に収められています。セイリグと言えば,アラン・レネが監督し,脚本をアラン・ロブ=グリエが担当した『去年マリエンバートで』に出演していますね。このセイリグの朗読を聴いていると,フランス語が分かるといいなぁって思えてきますよ。ねっ,フランス語を学びたくなってきたでしょ?

そんなあなたにお薦めなのが,このフランス語入門書です。

前田陽一・丸山熊雄『新フランス語入門』(岩波書店,1957年)

という本なのですが,これほど丁寧に発音を重視した入門書はないと思います。発音のみならず,総合的なフランス語力を身に付けさせよう,というコンセプトがひしひしと感じられる良書です。絶版本なのですが,古書が割と出回っているので,入手は比較的容易なはずです(2012年2月現在)。

 

ドビュッシーがきっかけでフランス語ができるようになったんだよ...って数年後に語れたら,ちょっとカッコイイですね。 


モーツァルトの白鳥の歌 ~ ピアノ協奏曲第27番・クラリネット協奏曲

2012-02-21 | ディスク

モーツァルトと言えば“オペラ”を挙げないと片手落ちなのでしょうが,僕はオペラは疎いんです。まぁ,器楽曲も疎いんですが。

 

で,モーツァルトの器楽曲で一番面白いジャンルは何かなぁ,と考えるのですが,僕としては独奏協奏曲ではないのか,と思うわけです。五重奏曲や四重奏曲,ケーゲルシュタット・トリオなどの室内楽も実に素晴らしいのですが,モーツァルトの場合,もう少し色彩感豊かな方が面白く感じます。だったら交響曲でもいいのでは,と思われる方もいるかと思いますが,独奏協奏曲でのオケと独奏楽器の掛け合いの絶妙さを考えると,協奏曲をとるわけです。そのモーツァルトの協奏曲の中でワタクシがとりわけ好んでいるのが,クラリネット協奏曲と最後のピアノ協奏曲なのです。

 

これまで,クラリネット協奏曲では“ジャック・ランスロ(cl),ジャン=ピエール・パイヤール(dir),パイヤール室内管弦楽団”によるロココ感たっぷりのフランスものや,“アルフレート・プリンツ(cl),カール・ベーム(dir),ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団”という本場ウィーンの鉄板盤をよく聴いていました。また,変ロ長調のピアノ協奏曲K.595は,2010年に出た“エフゲニー・キーシン(pf & dir),クレメラータ・バルティカ”を聴くことが多かったかな。このディスクはキーシンによる“弾き振り”なんですが,カップリングの第20番ニ短調K.466もよい演奏で,オススメの1枚です。

 

ですが,今回紹介したいのは,

Andreas Stairs(fortepiano), Lorenzo Coppola(cl), Gottfried von der Goltz(dir), Freiburger Barockorchester, <<Mozart: The Last Concertos>>, Harmonia Mundi

です。

 

フライブルク・バロック・オーケストラなんで,言わずもがなの古楽です。でも古楽だ何だって言う以前に,演奏がイイ! 僕の好きな曲がまとめて入っている! というオススメ盤です。まっ,物凄く主観的な価値判断なんですが,許してください。

 

シュタイアーのフォルテピアノもコッポラのクラリネットも素晴らしいです。フォルテピアノって可愛い音がしますしね。ところで,指揮のゴットフリート・フォン・デア・ゴルツって,やっぱりあの名門ユンカーのゴルツ家の人なんですか?