【モスクワ大前仁】ロシアで12月の下院選と来年3月の大統領選に向けた本格的な「政治の季節」が始まり、メドベージェフ大統領とプーチン首相による「双頭体制」の行方に関心が高まっている。続投へ積極的な姿勢を見せ始めた大統領に対し、「最高実力者」といわれる首相は、政権与党支持層の拡大策を最優先にする考えを打ち出し、現体制への支持率低下傾向に危機感を強めている模様だ。
二人は「対独戦勝記念日」の9日、モスクワ中心部の「赤の広場」で、恒例の軍事パレードをそろって参観した。二人の間のすれ違いがささやかれ始めた中で、協調路線の堅持を内外に示す狙いもあるとみられる。
プーチン首相は6日、ロシア南部のボルゴグラードで開かれた政権与党「統一ロシア」の地域集会で、他の政党や労働組合、女性や退役軍人団体などの諸勢力を結集した「全ロシア国民戦線」の発足を呼びかけた。首相は「統一ロシアは新たな思想、政策提案、人材の導入を必要としている」と訴え、愛国主義を前面に出した新たな幅広い受け皿を作り、下院選までに支持基盤を強化する姿勢を鮮明にした。
背景には、首相自ら党首を務める「統一ロシア」の支持率が低下していることがある。統一ロシアは下院450議席のうち315議席を占めるが、3月の地方選では得票率が50%を割り込み、07年の下院選当時に比べて20ポイント近く下げた。国民の間でプーチン氏と周辺が権力をたらい回しにしている現状に批判が強まっていることなどが原因とみられる。
シンクタンク「政治情報センター」のムーヒン所長は「(首相にとっては)下院選で統一ロシアの現有勢力を維持することが最優先課題」と指摘し、「国民戦線」の発足呼び掛けもそのための方策の一つとみる。だが「イデオロギーが不鮮明で、他の勢力が参加しない可能性が大きく、統一ロシアの支持率上昇にはつながらない」(コメルサント紙)と懐疑的な見方もある。
一方、メドベージェフ大統領は先月25日、モスクワ近郊スコルコボに先端技術産業の集積地を建設する計画の加速を指示するなど、資源輸出に依存してきた産業構造の改革に取り組む独自の姿勢をアピールし始めている。これまで二人は次期大統領選の候補者を話し合いで一本化する方針を繰り返してきたが、メドベージェフ氏は先月、中国テレビ局との会見で自らの判断で出馬を決める考えを表明。これをプーチン氏が「時期尚早」とたしなめるなど、微妙なすれ違いが関心を呼んでいる。
二人は「対独戦勝記念日」の9日、モスクワ中心部の「赤の広場」で、恒例の軍事パレードをそろって参観した。二人の間のすれ違いがささやかれ始めた中で、協調路線の堅持を内外に示す狙いもあるとみられる。
プーチン首相は6日、ロシア南部のボルゴグラードで開かれた政権与党「統一ロシア」の地域集会で、他の政党や労働組合、女性や退役軍人団体などの諸勢力を結集した「全ロシア国民戦線」の発足を呼びかけた。首相は「統一ロシアは新たな思想、政策提案、人材の導入を必要としている」と訴え、愛国主義を前面に出した新たな幅広い受け皿を作り、下院選までに支持基盤を強化する姿勢を鮮明にした。
背景には、首相自ら党首を務める「統一ロシア」の支持率が低下していることがある。統一ロシアは下院450議席のうち315議席を占めるが、3月の地方選では得票率が50%を割り込み、07年の下院選当時に比べて20ポイント近く下げた。国民の間でプーチン氏と周辺が権力をたらい回しにしている現状に批判が強まっていることなどが原因とみられる。
シンクタンク「政治情報センター」のムーヒン所長は「(首相にとっては)下院選で統一ロシアの現有勢力を維持することが最優先課題」と指摘し、「国民戦線」の発足呼び掛けもそのための方策の一つとみる。だが「イデオロギーが不鮮明で、他の勢力が参加しない可能性が大きく、統一ロシアの支持率上昇にはつながらない」(コメルサント紙)と懐疑的な見方もある。
一方、メドベージェフ大統領は先月25日、モスクワ近郊スコルコボに先端技術産業の集積地を建設する計画の加速を指示するなど、資源輸出に依存してきた産業構造の改革に取り組む独自の姿勢をアピールし始めている。これまで二人は次期大統領選の候補者を話し合いで一本化する方針を繰り返してきたが、メドベージェフ氏は先月、中国テレビ局との会見で自らの判断で出馬を決める考えを表明。これをプーチン氏が「時期尚早」とたしなめるなど、微妙なすれ違いが関心を呼んでいる。