(本編がまだ購入当日なので、それよりはちょっと未来の日常風景を番外編として2)
「うわぁぁぁぁぁん! うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
なんというか、くやしさが止まりません。
「ばかー! ばかばかばかぁぁぁぁ!」
悪いブタさんはおしおきです。(※9)
聖剣ネギでおしおきです。
―べちべちべち。
あたしの聖剣がブタさんに多段ヒット。
6発、7発、8発。
「おい、ミク」
このブタさんは悪いブタさんです。
クリプトンのお父さんをだましたのです。
日曜お昼の人気(?)番組で、あたしの特集を組みたいと言ってお父さんをだましたのです。
お父さんは、全国に散ったあたしのため。
あたしを買ってくれたみんなのために、取材を受けたのでした。
よかれと思って、受けたんです。
それなのに。
それなのに。
―べちべちべちべち。
悪いブタさんです!
悪いブタさんです!!
9発、10発、11発、12発……
あたしの必殺コンボをたたき込んでいるのに、ブタさんはビクともしません。
「おい、ミク……飛び散ってる。ネギが飛び散ってる!」
正座で待ってました。
番組が始まるのを今か今かと待っていました。
あたしはまだうまく歌えないけれど……
うまく歌えるようになったあたしの活躍が見れる。
あたしでないあたしの活躍を、わくわくどきどきしながら待ってたんです。
でも。
始まった番組は、あたしの期待するものとは大きく異なるものでした。
みんなをとってもバカにした内容でした。(※10)
あたしを買う人は、オタクで、バカだって言ってるような感じでした。
許せません。
ブタさんは、お父さんや全国のあたしをバカにしたんです。
お父さんはこんなつもりで取材に協力したんじゃないのに。
したんじゃないのに!
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「わかったから。お前の悔しい気持は分かったから」
ブタさん退治をしていたあたしを、ケーイチさんが羽交い締めにしました。
「だって、だって……!」
離してくださいケーイチさん。
このブタさんは退治しなくてはいけないブタさんなんです。
泣くまで叩かないといけないんです!
「ほらほら、殿中でござる殿中でござる」
ケーイチさんは意味不明なことを言ってあたしをブタさんから引き離します。
「あーあー。テレビも後で拭かないと……」
「えぐっ……ひぐっ……」
ケーイチさんがチャンネルを変えると、ブタさんは消えてしまいました。
同時に、あたしの全身からも力が抜けていきます。
「とにかく、落ち着け。な」
「ケ、ケーイチさんは悔しくないんですか!?」
冷静なケーイチさんが腹立たしいです。
あ、あんな扱いを受けて。どうしてケーイチさんはこんな冷静でいられるのでしょう!?
「ん、俺?」
「そーです! なんでそんなに平静でいられるんですか!?」
「つってもなぁ」
ケーイチさんはのんきに頭をポリポリ。
「俺、バラエティなんてそんなもんだって割り切ってるし」
「割り切ってるって……」
「ま、いい勉強になったと思えばいいんじゃないか?」
強がりでも何でもなく、本当に気にしてないって感じのケーイチさん。
うぅ……
「そういうもの……なんですか?」
「おお。犬に噛まれたと思って忘れちまえ」
「か、噛んできたのはブタさんですよ。犬さんじゃないですよ、ケーイチさん」
「じゃあ、ブタに噛まれたと思って忘れちまえ。よくあることだろ」
「滅多にないです!」
「あのブタはよく噛むんだよ。だから、気にするな!」
そう言ってニッと笑いました。
「う~~~~」
ケーイチさんの態度は「大人」です。
正しいことを言ってるような気がします。
でも、微妙に納得できません。
あたしが興奮しているからかもしれないけれど。
単に意地をはっているだけなのかもしれないけれど。
その意見には納得できません。
うん、そうです。
嫌なことをされたら、「それは嫌だ」と声をあげないと、何も変わらないんじゃないですか?
いじめっ子には、「いじめ、かっこわるい」と言わなきゃ解決しない。
そう思うんです。
だから……
「無抵抗でいたら、ブタさんはますます調子に乗ると思うんです」
「つってもなぁ」
むつかしい顔のケーイチさん。
「何です?」
「別に、番組も100%嘘言ってるわけじゃないし」
「え?」
「ほら、俺も閣下の愚民じゃん」
「……あぅ」
そうでした。
そうだったのでした。
ケーイチさんも、番組で言われた「オタク」の一種なのです。
あたしのことを「俺の嫁」とは言わないけれど……
2.5次元のアイドルに心酔している、愚民と呼ばれるオタクなのです。
しかも、それを誇りに思ってるフシがあります。
「……………………………………」
テンション、ダウン。
ちょっぴり、しょぼん。
もしかしたら、ケーイチさんがマスターのあたしって……他のあたしの迷惑?
「でもまあ……ミクの怒りも分かる」
落ち込んでいたら、ケーイチさんがあたしの頭をくしゃっと撫でてくれました。
「え?」
「そうだよな。確かに、それはそうなんだよ」
うんうんと頷いています。
「一部、キモいのも確かにいるんだよ。俺とか」
「それは自分で言わない方が」
そのキモい人が買い主のあたしの立場がないです。
「でも、一部がキモいからって、全部がキモいわけじゃない」
「ケーイチさん」
「何より……どう見ても悪意を感じる」
そう言うとケーイチさんは台所にから新しいネギを持ってきて……
あたしに、それを渡してくれたのでした。
「止めて悪かった。確かに、自重しない相手に甘い顔をし続けてやる義理はない」
そして、リモコンを手に取り……
「ほれ」
再びブタさんのチャンネルへ。
「掃除くらいは後でいくらでもしてやる。だから、思う存分……やれ」
ニッと笑うケーイチさんの歯がキラリ。
「ケーイチさん」
ああ、ケーイチさん。
とっても男前です。
オタクで愚民だけど……
ミクのケーイチさんは、やっぱりちょっとかっこいいです。
「あ、ありがとうございますケーイチさん」
ミクは、理解ある買い主に巡り会いました!
勇気百倍です!
そして、あたしはネギを大きく振りかぶり。
ブタさんへの攻撃を再開したのでした。(※11)
※9:ここまで露骨だと名前を直接言わない意味があるのかと思われるかもしれませんが、形式上ボカしておきます。
※10:詳しい内容は書きませんが、マジメに使っている人にとっては多分面白くないであろう扱いです。
※11:まったく問題解決してないオチですみません。
「うわぁぁぁぁぁん! うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
なんというか、くやしさが止まりません。
「ばかー! ばかばかばかぁぁぁぁ!」
悪いブタさんはおしおきです。(※9)
聖剣ネギでおしおきです。
―べちべちべち。
あたしの聖剣がブタさんに多段ヒット。
6発、7発、8発。
「おい、ミク」
このブタさんは悪いブタさんです。
クリプトンのお父さんをだましたのです。
日曜お昼の人気(?)番組で、あたしの特集を組みたいと言ってお父さんをだましたのです。
お父さんは、全国に散ったあたしのため。
あたしを買ってくれたみんなのために、取材を受けたのでした。
よかれと思って、受けたんです。
それなのに。
それなのに。
―べちべちべちべち。
悪いブタさんです!
悪いブタさんです!!
9発、10発、11発、12発……
あたしの必殺コンボをたたき込んでいるのに、ブタさんはビクともしません。
「おい、ミク……飛び散ってる。ネギが飛び散ってる!」
正座で待ってました。
番組が始まるのを今か今かと待っていました。
あたしはまだうまく歌えないけれど……
うまく歌えるようになったあたしの活躍が見れる。
あたしでないあたしの活躍を、わくわくどきどきしながら待ってたんです。
でも。
始まった番組は、あたしの期待するものとは大きく異なるものでした。
みんなをとってもバカにした内容でした。(※10)
あたしを買う人は、オタクで、バカだって言ってるような感じでした。
許せません。
ブタさんは、お父さんや全国のあたしをバカにしたんです。
お父さんはこんなつもりで取材に協力したんじゃないのに。
したんじゃないのに!
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「わかったから。お前の悔しい気持は分かったから」
ブタさん退治をしていたあたしを、ケーイチさんが羽交い締めにしました。
「だって、だって……!」
離してくださいケーイチさん。
このブタさんは退治しなくてはいけないブタさんなんです。
泣くまで叩かないといけないんです!
「ほらほら、殿中でござる殿中でござる」
ケーイチさんは意味不明なことを言ってあたしをブタさんから引き離します。
「あーあー。テレビも後で拭かないと……」
「えぐっ……ひぐっ……」
ケーイチさんがチャンネルを変えると、ブタさんは消えてしまいました。
同時に、あたしの全身からも力が抜けていきます。
「とにかく、落ち着け。な」
「ケ、ケーイチさんは悔しくないんですか!?」
冷静なケーイチさんが腹立たしいです。
あ、あんな扱いを受けて。どうしてケーイチさんはこんな冷静でいられるのでしょう!?
「ん、俺?」
「そーです! なんでそんなに平静でいられるんですか!?」
「つってもなぁ」
ケーイチさんはのんきに頭をポリポリ。
「俺、バラエティなんてそんなもんだって割り切ってるし」
「割り切ってるって……」
「ま、いい勉強になったと思えばいいんじゃないか?」
強がりでも何でもなく、本当に気にしてないって感じのケーイチさん。
うぅ……
「そういうもの……なんですか?」
「おお。犬に噛まれたと思って忘れちまえ」
「か、噛んできたのはブタさんですよ。犬さんじゃないですよ、ケーイチさん」
「じゃあ、ブタに噛まれたと思って忘れちまえ。よくあることだろ」
「滅多にないです!」
「あのブタはよく噛むんだよ。だから、気にするな!」
そう言ってニッと笑いました。
「う~~~~」
ケーイチさんの態度は「大人」です。
正しいことを言ってるような気がします。
でも、微妙に納得できません。
あたしが興奮しているからかもしれないけれど。
単に意地をはっているだけなのかもしれないけれど。
その意見には納得できません。
うん、そうです。
嫌なことをされたら、「それは嫌だ」と声をあげないと、何も変わらないんじゃないですか?
いじめっ子には、「いじめ、かっこわるい」と言わなきゃ解決しない。
そう思うんです。
だから……
「無抵抗でいたら、ブタさんはますます調子に乗ると思うんです」
「つってもなぁ」
むつかしい顔のケーイチさん。
「何です?」
「別に、番組も100%嘘言ってるわけじゃないし」
「え?」
「ほら、俺も閣下の愚民じゃん」
「……あぅ」
そうでした。
そうだったのでした。
ケーイチさんも、番組で言われた「オタク」の一種なのです。
あたしのことを「俺の嫁」とは言わないけれど……
2.5次元のアイドルに心酔している、愚民と呼ばれるオタクなのです。
しかも、それを誇りに思ってるフシがあります。
「……………………………………」
テンション、ダウン。
ちょっぴり、しょぼん。
もしかしたら、ケーイチさんがマスターのあたしって……他のあたしの迷惑?
「でもまあ……ミクの怒りも分かる」
落ち込んでいたら、ケーイチさんがあたしの頭をくしゃっと撫でてくれました。
「え?」
「そうだよな。確かに、それはそうなんだよ」
うんうんと頷いています。
「一部、キモいのも確かにいるんだよ。俺とか」
「それは自分で言わない方が」
そのキモい人が買い主のあたしの立場がないです。
「でも、一部がキモいからって、全部がキモいわけじゃない」
「ケーイチさん」
「何より……どう見ても悪意を感じる」
そう言うとケーイチさんは台所にから新しいネギを持ってきて……
あたしに、それを渡してくれたのでした。
「止めて悪かった。確かに、自重しない相手に甘い顔をし続けてやる義理はない」
そして、リモコンを手に取り……
「ほれ」
再びブタさんのチャンネルへ。
「掃除くらいは後でいくらでもしてやる。だから、思う存分……やれ」
ニッと笑うケーイチさんの歯がキラリ。
「ケーイチさん」
ああ、ケーイチさん。
とっても男前です。
オタクで愚民だけど……
ミクのケーイチさんは、やっぱりちょっとかっこいいです。
「あ、ありがとうございますケーイチさん」
ミクは、理解ある買い主に巡り会いました!
勇気百倍です!
そして、あたしはネギを大きく振りかぶり。
ブタさんへの攻撃を再開したのでした。(※11)
※9:ここまで露骨だと名前を直接言わない意味があるのかと思われるかもしれませんが、形式上ボカしておきます。
※10:詳しい内容は書きませんが、マジメに使っている人にとっては多分面白くないであろう扱いです。
※11:まったく問題解決してないオチですみません。