目指せ、文學界人賞!!

~怠惰な己を叱咤激励~
 小説の進行状況を綴るブログ

沙良 2

2006-11-11 21:42:07 | Weblog
 一瞬たりとも見逃したくないのだろう。CMになっても大樹は決してテレビの前から

離れなかった。他のものには全く眼がいっていない。だが沙良は違った。CMに切り

替わると沙良はベランダに出て行き、手すりの隙間からマンション前に一直線に延

びる道路を見つめていた。

「おねーちゃん、始まったよー。」

 CMが終わり大樹に呼ばれると、再びテレビの前へと戻った。同じ光景がCM毎に繰り

返された。

 午後九時、エンディングテーマと共に番組は終わる。テレビに向かって丸一時間は

しゃいでいた大樹は、疲れ果ててそのままテレビの前で寝入ってしまった。沙良は

タオルケットを大樹の上にそっと掛けた。

 弟と一緒に大好きな番組を見ている間は、確かに何もかもを忘れて楽しい気持ち

になれた。だが番組が終わり弟が寝てしまうと、それまでの楽しさは全てそのまま

寂しさへと移り変わった。沙良は再びベランダに出た。