◆「財務アナリストの雑感」 2024◆

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「スタートアップフレンドリースコアリング」に思う

2024-01-29 | 会計・株式・財務

いつもご覧下さり、誠に有難うございます!

29日の日経朝刊にこんな記事がありました。

新興買収、世界企業では「日常」 脱・停滞へ「動的な組織」カギ - 日本経済新聞

経団連が16日、「スタートアップフレンドリースコアリング」という耳慣れない活動への参加を会員企業に呼びかけた。スタートアップとの連携への取り組み状況を報告してもら...

日本経済新聞

 


スタートアップフレンドリースコアリング。私も初めて聴く、舌を噛むような名前ですが、この話をするには、なぜそれが必要なのか、その背景を記事の中から確認したほうがよさそうです。

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米巨大IT(情報技術)企業の高速成長の裏には、日常的に繰り返すスタートアップ買収がある

今月英ロンドン大研究者らが発表した論文によると、2000年から22年までの間にアルファベット(グーグル)は341回、マイクロソフトは272回、アマゾン・ドット・コムは144回、企業買収を実行。

動画共有のユーチューブ、スマートフォン基本ソフト(OS)のアンドロイドなど、グーグルの主力級のサービスや技術の多くはスタートアップの買収で獲得。アマゾンの音対話人工知能(AI)「アレクサ」も欧州の小さいスタートアップが源流。

ビッグテックが年間10件や20件のM&A(合併・買収)を日常的に実行できる1つのカギは、対象候補企業探知のための全社的な情報吸い上げの仕組みだ。

もう一つのカギが、買収した企業の組織や人材がうまくできるような、柔軟な雇用、賃金、組織の仕組みだ。グーグルの最大の強みは人事とさえ言われる。

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ということで、ざっくり言えば、遅まきながら日本でも経団連加盟の大企業に、どんどん革新的なスタートアップ企業を買収しながらイノベーションしていきましょう!
そのための買収候補先リストを作って行きましょうや!ってなことかと。

しかしどうなんですかね。
大きく2点で疑問が残ります。

①今さら、米国型ですか?

拙稿米国流「ガバナンス」が企業を弱くするで警告しておりますが、今の今になって慌てて米国型のスタイルにするんですかっ?

拙稿では、以下の通り指摘。

米国では今でもグーグルやアップルが研究開発に巨額資金を投じているように感じるかもしれないが、やっていることの大半はベンチャーの買収。米国ではベンチャが研究開発を支え、大企業がM&Aで吸収する仕組みがある。

米国は、会社法、税法、会計基準やコーポレートガバナンスまでありとあらゆる仕組みが短期投機家にとって都合がよく、M&Aを促進しやすいエコシステム(生態系)になっている。

形だけ真似ても、どうなんでしょうか?

②それよりまず経営改革が必要では?

日経記事にも登場し、21世紀政策研究所スタートアップフレンドリースコアリング検討会首席研究委員でこのプロジェクトの推進役とも言える入山章栄 氏は、DX白書2023にて次のような寄稿をしております。DXを念頭に論じておりますが、根っこは一緒ではないかと思います。
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日本企業はまずイノベーティブな企業体質へと変わるというのが課題となるが、これを阻む要因となっているのが経路依存性
会社というのは、さまざまな仕組みが上手く、そして複雑に絡まっている経路依存性に陥っており、一部だけデジタルを入れてもうまくいかず、全体を変えることが必要となる。ただし仕組みを会社全体で変えると色々な部署で軋轢が生じ時間もかかるため、言うは易く行うは難しい。
経路依存性から脱するには、会社全体に対する長期的で徹底的な変革が必要であり、日本企業は二つの経営改革が必要であると考えている。

一つ目が、経営陣の任期の見直し日本企業の役員任期は大抵の場合2年から3年であり、長期的な変革を遂行するには短すぎる。取組む社長や役員がすぐに替わってしまうと、DXも一過性のバズワード的な取組みで終わりがちになる。米国では終身雇用がないために経営陣は1年単位の任期であるが、結果を出し続ければ長期的に役職を継続することができるため、経営者が責任をもって長期的な変革に取組むことが可能となっている。
トップが長期的にビジョンと責任を持ってこそ徹底的に変えられる、経路をぶっ壊すことができると考えている。

二つ目は権力の集中である。日本企業、とくに大企業は○○担当役員などの役員が多すぎる。担当役員が大勢いると会議で軋轢が生じて決まるものも決まらない。争点となっている担当を一人の役員に集中させれば、軋轢を起こさずに解決することができる。経路依存性の高い大企業ほど権力を集中させるべき。

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ということで、後半は組織論・ガバナンス論になってしまいましたが、本気でスタートアップとフレンドリーな関係構築をしたいと思うのであれば、それ相応の本気度と覚悟が必要ではないかと。

またいきます。

有難うございました。



P.S.入山先生といえばこの本。

私の座右の書にもなってます。









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