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トーマツ、お前もか

2010-12-16 | 会計・株式・財務
お疲れ様です。
久々に5日連続で投稿しておりますが、さすがに疲れますね。
本日は手短に。


トーマツの決算が公表されました。
まずは日経記事より。

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トーマツ、赤字転落 前期経常

大手監査法人トーマツが2010年9月期決算で経常赤字に転落したことが16日、
明らかになった。景気低迷で顧客企業から得る監査報酬が減ったため。
トーマツが経常赤字に陥るのは、1990年に合併を通じて現名称となってから初めて。

 経常損益は1億7600万円の赤字(前の期は12億円の黒字)だったようだ。
金融危機後に進んだ企業再編などに加え、新規上場数の減少で顧客企業数が減った。
内部統制制度への対応が一巡したことも響いた。ただ保険解約益の計上で最終損益は黒字を確保した。

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(コメント)
決算書はこちらをご覧ください。
 ↓ ↓ ↓
第43期 事業報告

赤字決算は仕方ないでしょう。
しかし、いくつか興味深い点がありました。


まずは、保険解約益
PDFの28枚目に損益計算書がありますが、経常赤字は▲176百万円。
しかし特別利益として保険解約益2,336百万円が計上されたことから、最終黒字は949百万円を確保。


貸借対照表に計上されている保険積立金は前年の4,451百万円から2,349百万円へと
21億円減少しておりますので、それに伴って利益が発生したということなのでしょう。

でも待って下さい。
だとすると、解約益、多すぎませんかねぇ?
そもそも何の保険だったのでしょうか。被保険者への還元は不要なのでしょうか。
まぁ、こんなに良いパフォーマンスでしたら、監査なんてやめちゃって、
資産運用業に特化したほうがいい業績が出るかも。



次が本日の目玉です。
PDF 31枚目、貸借対照表に関する注記をご覧ください。

(3)偶発債務

②重要な係争事件
元監査対象会社のニイウスコー株式会社の監査証明業務に関して、
同社の株主たる3事業体及び個人株主3名から合計15,636百万円の損害賠償請求を受けているが、
当該監査証明に過失は無かったとして係争中である。



エッツ!? 156億円!マジっすか?

トーマツの純資産は183億円しかありません。しかも繰延税金資産が89億円占めております。

ですから、万が一の話ではありますが
本業でも黒字が定着せずに繰税を取り崩し、
しかも全額損害賠償となれば一気に債務超過になってしまいます。


しかも前年の損害賠償額は僅か1,199百万円しかありません。
請求している顔ぶれに変化はないようですから、何故この1年で請求額が13倍になったのでしょうか?
どなたかご存知の方、このカラクリを教えて下さい。

(たしかに、巷間伝えるところによれば、ニイウスコー粉飾事件ではトーマツの責任問題も
 取りざたされておりますが、何がこじれれば13倍にもなるのでしょうか・・・・・・。)
    参考: 東洋経済 H20年5月13日 「疑惑・ニイウスコーの破綻とIBM、トーマツの影」
         日経ビジネスオンライン「元会長逮捕のニイウスコー、架空取引のからくり 問われる「監査法人」の責任と抑止力

トーマツは本業の黒字確保ももちろんですが、
この訴訟の行方も大きな経営問題になってくるかも知れませんね。


ニイウスコー事件については、この本でも取り上げております。
ご参考まで。
黒字倒産と循環取引―および粉飾企業の追跡調査
井端 和男
税務経理協会



トーマツを監査したのは新創監査法人。

この法人のメンバー紹介ページでは
代表パートナーの松下さんと高橋さんのプロフィールが笑わせてくれましたが、
今回の監査は笑いごとではない。
つまり、「巨額な損害賠償金の負担の可能性」があるかもしれないのに、トーマツはGC注記ありませんでした。
なぜ負担の可能性が低いと判断されたのか教えてほしいものですね(教えてくれないけど)。



またいきます。



なかのひと

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