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棚卸資産の評価原則に係る会計基準(案)に思う

2006-04-16 | 会計・株式・財務
4月14日、企業会計基準委員会は「棚卸資産の評価原則に関する会計基準」
の公開草案を公表しました。
国際的な会計基準との調和などの観点から、棚卸資産について、
これまでの原価法と低価法の選択適用を見直し、収益性の低下による簿価切下げ
という考え方に基づいた評価基準、トレーディング目的で保有する棚卸資産に関する
時価評価の適用についても検討しています。 

<詳細はここからどうぞ>
企業会計基準公開草案第12号
「棚卸資産の評価原則に関する会計基準(案)」 http://www.asb.or.jp/j_ed/inv/inv.pdf


(簡単にコメント)

① 釈迦に説法ですけど、改正内容をサクっとまとめます。
  これまで棚卸資産(要は在庫)の期末貸借対照表額は原価法か低価法の
  どちらか選択できました。在庫の価値下落があっても「原価法」の場合ですと、
  含み損は計上しなくてよかったので大半の企業が原価法を採用しています。
  で、今回の改正案によりますと、H20年3月期決算会社から「低価法」に強制
  適用されます。

  「低価法」となりますと、在庫の価値下落分を損失として毎期の決算に反映
  (=損失を計上)しなくてはなりません。


②では、これが導入されるとどういう業界に影響が出るのか?
   4月12日の日経では、建設や不動産など販売用不動産を抱える企業の一部
  含み損処理が業績に影響を与える可能性があるとしています。
  もちろん販売用不動産だけでなく、他にも不良在庫を抱えやすい業種・業態は
  多く、こうした企業でも影響は出るでしょうね。
  例えば、家電量販店。取扱商品のライフサイクルが短い反面、相応に高額品
  も多い。宝飾品の小売業にも影響が出るでしょうね。

  ですので、こうした業種・業態(低価法を既に採用している会社は除く)の
  上場企業が、改正に向けてどう対応していくか、注目したいですね。


③ご存知のとおり、棚卸資産は粉飾決算に用いられやすい勘定です。
  期末の棚卸資産を過大に計上すれば、当期の売上原価を抑えるころが
  できます。売上総利益=売上高-売上原価ですので、売上高が一定であれば、
  売上総利益は増えるからです。
  連結キャッシュフロー計算書の導入もあり、棚卸資産の異常な変動はチェック
  しやすくなりましたが、それでもまだ透明度という点では不安がありました。
  今回の案通りに改正すれば、資産価値の透明化はある程度進むでしょう。

  国際会計基準との整合性も取れることになります。
  なお、このブログで何度も書いていますように、
  国際会計基準は「M&A促進会計」だと思っております。
  買収候補先の財務内容を少しでもガラス張りにさせて、
  「この会社の価値が今いくらなのか」の算定を容易にするからです。

  まぁ、M&Aを仲介する投資銀行等のための会計基準ということもできますけどね。

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