日曜恒例、ヴェリタスを見てのコメントです。
■P.3 米英当局、背水の危機管理 ~時価評価凍結など禁じ手も視野
4/1付英紙「フィナンシャル・タイムズ」などが報じた、
G7会議の金融安定化フォーラムの有事対応策 に注目です。
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■激変緩和による息継ぎ機会の提供
・ 資本や経営報告に関するルールの一時停止
・ 財務報告におけるある種の資産に対するフェアバリュー(公正価値)適用の停止
■バランスシート圧力を緩和するためのその他の公的支援策
・ 民間の買い手の組成。証券化市場の再起動での銀行支援。
・ プットオプションンの付与(商品に底値の目処を示すため)。
・ 質の高い証券化資産に対する公的機関によるビッド(買い気配)提示。
・ 問題資産の銀行のバランスシートからの分離
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金融のキューバ危機との声も上がっており、劇薬シナリオまで用意されつつ
あるところに問題の根の深さを感じます。
時価評価凍結→含み損の計上凍結→自己資本毀損の回避・・・・・・。
しかし見方を変えれば、そこまでして支えられる自己資本は、
まさにウォータード・ストック。
これこそ、昨年1月の拙稿「ウォータード・ストックの恐怖」
http://blog.goo.ne.jp/dancing-ufo/e/5f00d41d64162e45bca888597bcd2607
で懸念していたこと。
価値の下落した証券化商品等の償却原資が無いので、とりあえず、
時価評価そのものを凍結しちゃえ!というなりふり構わずの政策対応。
1920-30年代の米国市場に似てきました。やはり、歴史は繰り返すんですね。
■p.8 ポイント、衣料にカンバン方式
女性向け衣料専門店「ポイント」の紹介記事。
この記事で当社について、
企画から販売まで2ヶ月(通常は半年)と短サイクルで次々と流行商品を
投入できるため、売れ残りロスは少なく、いわば「アパレル版かんばん方式」と好評価。
身軽な経営ゆえROEも35.8%と抜群。
しかし、記事にあるように市場の関心は例に漏れず既存店売上にあるようです。
08年2月期決算ハンドアウトのp.8 売上高・客数・客単価前期比推移をご覧下さい。
http://www.point.co.jp/ir/cms/press/080404_DATABOOK_0802final.pdf
(決算短信→http://www.point.co.jp/ir/cms/press/20080403_155822mgyQ.pdf)
既存店売上は08/2期で▲2.2%。流行がなかったなど女性アパレルの状況を考えれば
大健闘のように見受けられます。
しかし、昨年は+5.8%。この変化率を見ることが妥当なのかどうかはわかりませんが、
▲8ポイントもの悪化。やはり、市場の変化は当社にも影を落としていたようです。
で、ヴェリタス紙では、今後も年80店の純増、1店売上1.4億円の想定で、
株価はもっと評価されていいのでは、というニュアンス。
ただ、どうでしょうか、この試算では「既存店売上はフラット」という暗黙の想定が
入っております。市場はそこに疑問を投げかけているワケですよね。
記事中、当社の福田会長は「既存店売上が多少低下しても出店を続け、
商品調達などの面で規模のメリットを出していく」と述べておりまして、
市場との意識に多少ギャップがあるのかも知れません。
高成長には必ず反動、ひずみが出てきます。
08/2期業績は2割増益ながら営業利益は+5.5%増と辛うじて増益確保。
母集団が大きくなっているため、成長は徐々に鈍化。
既存店の建て直しが大きな課題でしょう。
基幹ブランド依存度の低下などリスク管理に長けた会社だと思うので、
他社のような失敗事例に陥る懸念は少ないと思いますが、
やはり
「ポイントのポイントは既存店売上」
ではないでしょうか。
■p.12 JT たばこはまだ伸びる
・前回の「一休」でひと休みして、再び大型株路線。こうでなくっちゃ。
・業界の国際競争の状況を見ますと、JTによるガラハー買収により、
業界はアルトリア、BAT+ロスマンズなど大手4グループに集約。
これ以上のM&Aは独占禁止法などに抵触するとの見方から起きないと見られており、
最後の大きな出物であったガラハーを傘下に入れたJTを評価する論調です。
私もJTの最新の短信を見てみましたが、確かに合併効果で営業利益は1千億円近い増益。
08/3第3四半期http://www.jti.co.jp/JTI/IR/08/B.S.20080207R_J.pdf
でも・・・・財務への負担も大きい。上記短信のp.9の貸借対照表。
のれんが2兆円(前年度末比約+1.7兆円)。一方、自己資本が・・・・2.1兆円!。
ちょっとデカくないですか?
ガラハーに万が一、何かがあったら・・・・のれん減損→自己資本急減・・・。
まっ、こんな可能性は極めて低く、非現実的なのでしょう。
でも投資家に注意を喚起する意味で、
社名も「JT&G(ガラハー)」などと同社を前面に出した方がいいんじゃないでしょうかねぇ?
ついでに当社に関して言えば、例の在外子会社の会計方針統一の影響を
受ける先です。要は、ガラハーの、のれん非償却→償却へと変わります。
EBITDAには影響はないのですが、利益を重視されている方はご留意下さい。
参考=3月27日付拙稿「会計の平成20年問題に思う」
http://blog.goo.ne.jp/dancing-ufo/e/65cf28665460ab69d384401f31f61ea2
ところで、・・・・・タバコといえば、
日本では6月か7月から「タスポ」という大人識別カードというのが発行されて、
それが無いと自動販売機でタバコが買えなくなるそうですね。
で、何が起こるか。
さる著名アナリスト氏は、面倒を嫌がる顧客がコンビニに流れて、
それがコンビニの増収要因となると見ているようです。
非常に面白い視点ですが、まさか、あぶれた未成年の需要の取り込みまでは
計算していないでしょうね・・・?
ではまた。