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会計士兼アナリストによる屈指の歴史だけがウリの会計・財務・株式・金融ブログ。異常な経済金融環境を一刀両断!できるかな?

今こそ地頭トレーニング「米国政府の公的資金、いくら投入?」

2008-10-06 | 会計・株式・財務
週刊ダイヤモンド10/11号p.34に倉都康行氏寄稿による
「商業銀行への資本注入が必須 必要公的資金は約150兆円」
という興味深い記事がありました。



足元では、欧米金融機関の保有する「レベル3資産」などをめぐって
「一体いくら損失が出るんだ?」とか
「時価会計を凍結したらどうか」など
議論がなされているようです。



しかし、忘れちゃぁいませんか?
実体経済が一段と悪化する中、
今後は、商業銀行の保有する「本業の資産の劣化」も考慮すべきでしょう?
・・・という問題提起でして、その視点は非常に重要だと思います。



自分自身の今後の参考のためにメモしておきます。

------------------------------------------------------------------------

■米金融安定化法 最大7,000億ドル ・・・・・・・①
 これは投資銀行などが保有する不良資産の買い取り中心。
 住宅ローン市場12兆ドルの5~6%として概算。

■米金融機関救済 1,390億ドル ・・・・・・・②
  ベア・スターンズ 290億ドル
  AIG      850億ドル
  GSE予想損失  250億ドル(議会予算局による見込)


■全米商業銀行に今後投入が予想される公的資金 5,770億ドル・・・③

ここが今回のポイント。

<計算根拠>

・全米商業銀行の資産合計 13兆3,000億ドル
・不良債権化する資産の割合 5%
・予想回収率        40%
 (要は保有資産の3%が毀損するということ)

 この場合の、政府が当該資産を買い取るとして、必要とする公的資金
   資産時価:13.3兆ドル×5%×40%=2,660億ドル・・・・・(a)

 一方、銀行に生ずる損失
   損失:13兆ドル×5%×(1-40%)=3,990億ドル・・・・・(b)

 全米銀行の資本総額は1兆3,520億ドル(c)
 平均的自己資本比率約10%
      ↓

 不良債権処理の結果
    資本 9,520億ドル (≒c-b)
   資産 12兆6,350億ドル (=13.3兆ドル-a-b)
   
 自己資本比率10%を維持するために、政府が投入すべき資本投入
  12兆6,350億ドル×10%-9,520億ドル=3,110億ドル ・・・・(d)

 政府の負担額=a+d=5,770億ドル

■まとめ

①+②+③=1兆4,160億円 → 約150兆円
----------------------------------------------------------------------


(コメント)

ご覧頂いたように、上記推定式の最大のポイントは、
全米商業銀行の不良債権発生比率とその回収率をどう置くか?
ここに尽きるかと思います。
見方は大きく分かれることでしょう。
(回収率40%はちょっと高いような気がしますけどね)


いずれにせよ、商業銀行の本業でもかなりの損失が
出ると見るべきでしょう。

だとしますと、
巷間、投資銀行の事実上の消滅で「商業銀行 復権!」
言われておりますが、
それを言うにはちょっと時機尚早ではないかと思います。


それと・・・・、これだけの政府負担が膨らむとなると、
やはり巷間言われております「ドル危機」。
これはかなり現実味を帯びてきました。
海外ETFの運用タイミングを狙っている私としては、
また厄介な課題が持ち上がってきました。




これらとは別に、
私が思ったのは、「地頭力」の大切さ。

地頭力の本質は、「結論から」「全体から」「単純に」
考える3つの思考力とされております。
すなわち「結論から」考える仮説思考力、
「全体から」考えるフレームワーク思考力、
「単純に」考える抽象化思考力。
今回の推定にはそれらが良く反映されていたのではないでしょうか。



では、次の問題
「米国の住宅価格は、どこまで、いつまで下がる?」

・・・・結局、今回の金融危機の終着点は
ここにあるような気がしますけどね。




+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

で、今回の1曲。


斉藤和義 「やぁ 無情」

某滋養強壮剤のCMでおなじみ。
”おつかれさまです。”


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2 コメント

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別の推計方法 (たっく)
2008-10-06 21:43:13
初めてコメントさせていただきます。
日経ビジネスに、格付情報会社・三國事務所の三國陽夫代表の分析があり、推計方法が面白いのでご参考まで
その手法は、米国の住宅ローン・消費者ローン残高の合計と米国の名目GDP(国内総生産)の関係に着目、実体経済の伸び以上に融資が膨らんだ部分が「不良化する」との前提に立っている。

 90年から2000年頃までは住宅・消費者ローン残高は名目GDP比60%前後とほぼ一定水準を保っていた。それが、2001年頃を境に、変化が表れ、住宅ローンの割合が急増するようになったという。「明らかに実際の経済活動に見合わない動き。それが、名目GDPと比べて20%ほど多かった」と三國氏は言う。この20%に、米国の名目GDP約14兆ドルを掛けると、2兆8000ドルとなる。日本の不良債権総額が100兆円と名目GDPの2割程度だったのにも符合する。

※三國氏は、マクロデータを用いた分析で、最終的には100兆円近くに膨らんだ日本のバブル崩壊後の不良債権総額を早くから言い当てたことで知られる。当時は銀行や大蔵省などの金融関係者が10兆円前後と不良債権総額を見積もる中で、独自の分析で80兆円と予想していた。
返信する
有難うございます!! (dancing-ufo)
2008-10-07 01:03:00


たっく様

情報提供誠に有難うございました。
私もその記事は拝見しておりまして
「どーしようかなー」と思っていたところです。

確かにシンプルで説得力もありますよね。

で、約3兆ドル(300兆円)の不良債権ですかぁ・・・。
半分が回収不能としますと150兆円・・・・。
それを政府が負担すると・・・・
辻褄が合う、ということになるんですかねぇ?
強引ですけど。

引き続きよろしくお願いもうしあげます。 mOm







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