◆「財務アナリストの雑感」 2024◆

会計士兼アナリストによる屈指の歴史だけがウリの会計・財務・株式・金融ブログ。異常な経済金融環境を一刀両断!できるかな?

この決算書・会計処理はおかしい(1)

2005-08-20 | この決算書・会計処理はおかしい
財務アナリストをしている中で
違法・粉飾ではないけれども
会社側の会計処理・開示姿勢等に
疑問を持った事例を
ご紹介したいと思います。


なお、全て個人的な意見でして、
私の所属する団体とは一切関係ありません。
また、公表情報に基づくものであります。


今回は、
「連結子会社に含み益のある土地を売却後、
 その連結子会社と合併するケース」です。


これだけを読まれると、何か問題あるの?
と思われるかも知れません。


しかし、これは
「部分的な土地再評価」による剰余金嵩上げです。



ご存知のように土地再評価法に基づく土地含み損益の
計上は、一定の期間は可能でしたが、現在ではできません。
しかも同法では、再評価に際しては全ての物件が対象となりました。


しかし、財務体力が無く、とりあえず土地の含み益だけを実現させて
名目上でも自己資本を充実させたい、というニーズがあったのでしょう。


事例で見てみましょう。
①親会社が、保有する土地(簿価50)を時価100で連結子会社に売却
  ⇒親の単体決算では売却益50が発生
②しかし、連結決算の中ではこの取引は内部取引で消去される
③それでは、連結上は全く意味が無い。
④そこで、この子会社と合併する。
 合併時点の子会社の土地の取得価額は100。
 合併時点の親会社の剰余金には売却益50(厳密には税効果考慮後30)を含む
 両者、この状態のまま合併してしまえば良いのです。
 ポイントなのは、連結と違い、内部取引の消去が無いこと。
⑤一連の流れの結果、
 親会社がもともと保有していた土地の再評価が完了。
 剰余金も含み益見合いで増加させることができた。
 しかも連結上も内部消去なし。
と、いうわけです。


このように何ら違法性の無い取引ではあるので見過ごしがち
かもしれませんが、
「何故このようなことをしたのか」という目で見ていきますと、
会社側の意図・思惑が透けて見えます。
本件も、何か胡散臭い印象がしますね。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« LLPを活用した節税は可能... | トップ | この決算書・会計処理はおか... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

この決算書・会計処理はおかしい」カテゴリの最新記事