既に新聞等でも決算内容は伝えられておりますが、一応、私のブログでも
何かコメントする必要があるだろうと思い、簡単に気が付いたことを書きました。
毎回この手の投稿は、結論ばっかり書いていて、わかりずらい面も多いかと
思われますので、今回は実験的に「決算短信の見方」という視点で、
コメントしたいと思います。
(本質を外している可能性はありますが、ご愛嬌ということで・・・)
【1】儲けの仕組みを見る
これを手っ取り早く見るには、セグメント情報(連結短信p.45)です。
プロのアナリストはほぼ全員、セグメント別の業績予想を積み上げて
全社売上、利益を予想します。
セグメント情報は営業利益ベースでの開示となっているため、
結果として、プロのアナリストの最大の関心事は、
連結営業利益っていうことになると思います。
楽天の連結営業利益は前年比+198億円の349億円。
これをセグメント別の寄与度を見ますと、
EC +45億円
クレジット・ペイメント(カードローン・信販)+64億円
証券事業 +80億円
この3部門の増益幅でほぼ説明がつきます。
連結営業利益の構成比を見ますと、
証券 37%
EC 33%
クレジット 18%
証券、クレジットといった金融関連事業が現在の稼ぎ頭、ということですね。
でもEC事業で33%(117億円)、利益も大幅増となっている点は評価できそうです。
プロスポーツ事業で1.56億円の黒字は球団経営としては立派ですが、ただケチり過ぎたかも。
【3】では、何故利益が増えたのか?今後はどうなるのか?
いろいろな見方がありますが、当社のように企業買収で成長する会社の場合、
買収先の企業の利益が加算されるだけで増益となります。
そこで、まずは前・当期で連結対象に何が加わっているかを見るべきでしょう。
連結短信のp.4に関係会社の状況という一覧表があり、
右端に「摘要」欄があります。
今期より連結対象となった会社は「(注)2」と書かれています。
これを見ますと、楽天クレジット、楽天KCといったクレジット事業の中核2社が
今期から加わったことが分かります。
よって、増益要因はこの2社の新規連結によるものと推定されます。
しかし、見方を変えれば、いずれ新規連結効果は一巡します。
そこで今後は、いかにカード会員数を増やし、カードの稼働率を上げていくのかが
ポイントになると思います。
これは蛇足ですが、信販・消費者金融業界共通なのですが、
不透明な事業リスクが高まっております。
新聞報道等で見にされている方は多いと思いますが、
いわゆる「グレーゾーン金利」問題です。
信販業・消費者金融業の大半は、いわゆるこのグレーゾーン金利に基づき
個人向け融資(キャシングなど)を行い、主要な収益源としております
(これ自体は違法ではない)。
ただし、個人破産問題などもあって、金融庁がこのグーレゾーン金利を適用
できる要件を厳格化させよう、といった動きなどが新聞の観測記事等で
紹介されております。
最近、アイフルなど消費者金融業の株価が冴えないのは、こうした動きを
投資家が懸念視していることを反映していると思われます。
楽天のクレジット事業のうち、いわゆる貸金業での儲けがどれだけかは
不明ですが、少し留意したほうがいいと思います。
一方、証券事業。
楽天証券は前期も連結対象だったことから、今期の増益は、株式のネット
取引拡大によるオーガニックな成長であることが窺われます。
業界で最も安い手数料を謳っているので、まずは顧客を一気に囲い込んで、
他事業とのシナジー効果を高めていくのでしょうか?
【3】妙な会計方針の変更とかしていないか?(プロ向きですかね・・・)
増益の要因に会計方針の変更よるものがあるのかどうか、一応チェックする必要
はあるでしょうね。
連結短信の表紙には「会計処理方法の変更 無し」としておりますが、
連結短信p.24以降など見ておりますと、前期基準と比べると経常利益で
次のような利益の押し下げ要因があったことが分かります。
ポイント引当金 ▲7.84億円 (今期より同引当金を計上)
連結調整勘定 ▲9.09億円 (連結キャッシュフロー計算書より)
判明する限りで約▲17億円の減益要因。
(このほか、持分法適用会社におけるのれん相当額の償却も始まっているはず。
このためもう少し減益要因は大きいと見られますが。)
連結調整勘定(のれん)については、既にこのブログでも取り上げましたが、
新日本監査法人がのれんの一括償却を認めなくなったことから
定額処理に変更したものです。
過年度分は、特別損失として計上済み。
ポイント引当金については、計上基準については不透明ですが、
小売業・信販業でも計上の流れになっていますので妥当な変更ですね。
一定程度、保守的な処理への変更なので、問題なしでしょう。
【4】おまけ ~今回の短信を見た第一印象~
ずいぶん紙幅を取ったので、残りは後日、書き足しますが、
連・単短信を見た私の第一印象、まだ書いておりませんでした。
何だと思いますか?
「資金調達、どーするんだろう?」です。
単体の株主資本比率は、関係会社向け投融資が膨らんだこともあって、
04/12末80.3%から41.8%まで減少。
この水準自体は、そんなに問題は無いと思います。
クレジットの担当者が純粋持株会社の信用力を見る際に使う指標で、
ダブルレバレッジっていう指標があります。
これは関係会社株式を株主資本で割った数値でして、これが100%を大きく
超えると、信用力の評価でマイナス評価される場合が多い。
楽天のダブルレバレッジは122.6%とやや高い。
要は株主資本の1.22倍、関係会社株式に投資している、ということです。
楽天単体では、EC事業中心に営業利益129億円、しかも前年の1.5倍増と堅調。
事業持株会社なので、特段問題がない水準だとは思いますが、
ちょっと気になります。
また、単体短信p.7に注記として主力銀行からの借入コミットメント契約の
記載がありますが、合計800億円の枠がTBS買収で全額使用済み。
一方、すぐ上に記載されている、関係会社向けの貸出コミットメント、
あと398臆円残しております。契約を結んでいる関係会社
(TBS株式を買い進めているのは楽天メディア・インベストメント?)から
『お金チョーダイ!」と言われたら貸し出さなくてはいけません。
でも新聞報道等によりますと、確か銀行側はこれ以上の買収資金を
融資しないとのこと。
この注記だけからでも、資金調達がTBS買収の大きなネックになっていることが
容易に窺えます。
今後、どう資金調達戦略を展開していくのか、私はここに注目ですね。
2/17日経では、最終黒字となったことで東証一部上場の声もあるとか。
そこでのエクイティ調達っていうのは当面の注目点なのでしょうか?
少々長くなりましたので、また後日。
何かコメントする必要があるだろうと思い、簡単に気が付いたことを書きました。
毎回この手の投稿は、結論ばっかり書いていて、わかりずらい面も多いかと
思われますので、今回は実験的に「決算短信の見方」という視点で、
コメントしたいと思います。
(本質を外している可能性はありますが、ご愛嬌ということで・・・)
【1】儲けの仕組みを見る
これを手っ取り早く見るには、セグメント情報(連結短信p.45)です。
プロのアナリストはほぼ全員、セグメント別の業績予想を積み上げて
全社売上、利益を予想します。
セグメント情報は営業利益ベースでの開示となっているため、
結果として、プロのアナリストの最大の関心事は、
連結営業利益っていうことになると思います。
楽天の連結営業利益は前年比+198億円の349億円。
これをセグメント別の寄与度を見ますと、
EC +45億円
クレジット・ペイメント(カードローン・信販)+64億円
証券事業 +80億円
この3部門の増益幅でほぼ説明がつきます。
連結営業利益の構成比を見ますと、
証券 37%
EC 33%
クレジット 18%
証券、クレジットといった金融関連事業が現在の稼ぎ頭、ということですね。
でもEC事業で33%(117億円)、利益も大幅増となっている点は評価できそうです。
プロスポーツ事業で1.56億円の黒字は球団経営としては立派ですが、ただケチり過ぎたかも。
【3】では、何故利益が増えたのか?今後はどうなるのか?
いろいろな見方がありますが、当社のように企業買収で成長する会社の場合、
買収先の企業の利益が加算されるだけで増益となります。
そこで、まずは前・当期で連結対象に何が加わっているかを見るべきでしょう。
連結短信のp.4に関係会社の状況という一覧表があり、
右端に「摘要」欄があります。
今期より連結対象となった会社は「(注)2」と書かれています。
これを見ますと、楽天クレジット、楽天KCといったクレジット事業の中核2社が
今期から加わったことが分かります。
よって、増益要因はこの2社の新規連結によるものと推定されます。
しかし、見方を変えれば、いずれ新規連結効果は一巡します。
そこで今後は、いかにカード会員数を増やし、カードの稼働率を上げていくのかが
ポイントになると思います。
これは蛇足ですが、信販・消費者金融業界共通なのですが、
不透明な事業リスクが高まっております。
新聞報道等で見にされている方は多いと思いますが、
いわゆる「グレーゾーン金利」問題です。
信販業・消費者金融業の大半は、いわゆるこのグレーゾーン金利に基づき
個人向け融資(キャシングなど)を行い、主要な収益源としております
(これ自体は違法ではない)。
ただし、個人破産問題などもあって、金融庁がこのグーレゾーン金利を適用
できる要件を厳格化させよう、といった動きなどが新聞の観測記事等で
紹介されております。
最近、アイフルなど消費者金融業の株価が冴えないのは、こうした動きを
投資家が懸念視していることを反映していると思われます。
楽天のクレジット事業のうち、いわゆる貸金業での儲けがどれだけかは
不明ですが、少し留意したほうがいいと思います。
一方、証券事業。
楽天証券は前期も連結対象だったことから、今期の増益は、株式のネット
取引拡大によるオーガニックな成長であることが窺われます。
業界で最も安い手数料を謳っているので、まずは顧客を一気に囲い込んで、
他事業とのシナジー効果を高めていくのでしょうか?
【3】妙な会計方針の変更とかしていないか?(プロ向きですかね・・・)
増益の要因に会計方針の変更よるものがあるのかどうか、一応チェックする必要
はあるでしょうね。
連結短信の表紙には「会計処理方法の変更 無し」としておりますが、
連結短信p.24以降など見ておりますと、前期基準と比べると経常利益で
次のような利益の押し下げ要因があったことが分かります。
ポイント引当金 ▲7.84億円 (今期より同引当金を計上)
連結調整勘定 ▲9.09億円 (連結キャッシュフロー計算書より)
判明する限りで約▲17億円の減益要因。
(このほか、持分法適用会社におけるのれん相当額の償却も始まっているはず。
このためもう少し減益要因は大きいと見られますが。)
連結調整勘定(のれん)については、既にこのブログでも取り上げましたが、
新日本監査法人がのれんの一括償却を認めなくなったことから
定額処理に変更したものです。
過年度分は、特別損失として計上済み。
ポイント引当金については、計上基準については不透明ですが、
小売業・信販業でも計上の流れになっていますので妥当な変更ですね。
一定程度、保守的な処理への変更なので、問題なしでしょう。
【4】おまけ ~今回の短信を見た第一印象~
ずいぶん紙幅を取ったので、残りは後日、書き足しますが、
連・単短信を見た私の第一印象、まだ書いておりませんでした。
何だと思いますか?
「資金調達、どーするんだろう?」です。
単体の株主資本比率は、関係会社向け投融資が膨らんだこともあって、
04/12末80.3%から41.8%まで減少。
この水準自体は、そんなに問題は無いと思います。
クレジットの担当者が純粋持株会社の信用力を見る際に使う指標で、
ダブルレバレッジっていう指標があります。
これは関係会社株式を株主資本で割った数値でして、これが100%を大きく
超えると、信用力の評価でマイナス評価される場合が多い。
楽天のダブルレバレッジは122.6%とやや高い。
要は株主資本の1.22倍、関係会社株式に投資している、ということです。
楽天単体では、EC事業中心に営業利益129億円、しかも前年の1.5倍増と堅調。
事業持株会社なので、特段問題がない水準だとは思いますが、
ちょっと気になります。
また、単体短信p.7に注記として主力銀行からの借入コミットメント契約の
記載がありますが、合計800億円の枠がTBS買収で全額使用済み。
一方、すぐ上に記載されている、関係会社向けの貸出コミットメント、
あと398臆円残しております。契約を結んでいる関係会社
(TBS株式を買い進めているのは楽天メディア・インベストメント?)から
『お金チョーダイ!」と言われたら貸し出さなくてはいけません。
でも新聞報道等によりますと、確か銀行側はこれ以上の買収資金を
融資しないとのこと。
この注記だけからでも、資金調達がTBS買収の大きなネックになっていることが
容易に窺えます。
今後、どう資金調達戦略を展開していくのか、私はここに注目ですね。
2/17日経では、最終黒字となったことで東証一部上場の声もあるとか。
そこでのエクイティ調達っていうのは当面の注目点なのでしょうか?
少々長くなりましたので、また後日。
TBSに手を出した「らくてん」が、「てんらく」にならなければ良いですね。
スパイラルドラゴン様
早速のコメント有難うございました。
実は私も昨年11月に、
「楽天、転落」っていうスカスカ記事を
書いていたことを思い出しました。
http://blog.goo.ne.jp/dancing-ufo/e/cf446722f801b129c631fbb0e1bcb2c6
仰るとおり、TBSをどうするか、
ここが当面、最大の関心事。
投資家、銀行などステークホルダーを
納得させる財務戦略、どう打ってくるか、
会計から離れて、経営の視点から
非常に興味がありますねー。
引き続きよろしくお願い申し上げます。
自民党が、永田議員の首だけでなく民主党首脳部の首を
あげようと考えて・・・いないでしょう、常識あるなら。
第2次世界大戦の欧州戦線、新規配属された狙撃兵に、
古手の下士官が敵の塹壕から見え隠れする人物を指さして・・・
36軍曹「あそこにいるのが、敵軍の将軍だ、よく覚えておけ」
狙撃手「はい!故国のため一発でしとめて見せます」
36軍曹「違う、あいつだけは殺してはならん!」
狙撃手「なぜです、軍曹。あいつが敵の指揮官なんでしょ」
36軍曹「次の将軍が、あいつよりマトモだと、わが軍は困る」
いない状態なのですが、楽天ポイント事件は
どんな傷跡をのこしたのでしょうか?
猛者になると、一人で2000万円近くのポイント
を稼いで楽天市場で使いまくった人もいるとのこと。
12月末から正月の間、ネットを騒がせまくったあの
事件。
まったく影響が出ないはずは無いと思うのですが。
それとも、ポイント引当金に含めて被害額は
公表しないつもりなのでしょうか。
非常に気になります。
まず、ハリマオ様
毎度毎度、本編よりも楽しいネタのご提供、
誠に有難うございます。
ネタ仕込みの秘訣、
今度ご教示下さい。
続いて、たすく様
ご指摘有難うございます。
確かにそういう話ありましたねー。
決算短信でいいますと、
おそらく過年度ポイント処理の中で
こそっと一緒に処理しているかも知れませんね。
(特別損失▲10.22億円)
世間を騒がせた問題であるなら、
自発的に開示して素直に謝っちゃった方が
意外と好感持てるんですけどね。
妙なところでプライドが邪魔をして
大本営発表みたいなIRにならなければ
いいのですが・・・・。
引き続きよろしくお願い申し上げます。