昔から小説は毒っぽいのが好き。
なんというか、日常的な描写でも、都市伝説的なものでも、人間っぽい、ぞくりとするような。まぁそれはあくまで活字であって、生っぽいだけで現実感はないってとこがいいんだけど。あれです、レディオヘッドを電気消した部屋で体育座りして聴くようなもんです。そうゆうのが日々の日常の中でたまーに必要だったりする。
わたしの場合は音楽とかだと影響受けすぎるからしないけど。だから音楽とか映画はきらきらしたのが好きー。
『風味絶佳』(文春文庫 や 23-6) 山田 詠美
久しぶりに小説買いました。てことで久々にレビュー書いてみました。山田詠美さん短編集。
カバーがキャラメル仕様になってて可愛ーい。ただわたしは文庫で買っちゃったんだけど、単行本だとカバー外すとキャラメルの間をアリンコが歩いてる仕様になってるとか!ななななにー!そうゆうの大好きなのに。失敗した。
まぁそんな可愛い表紙とは裏腹に、わりと飛んだ内容。ちょっとずつ、どこか歪んだ恋愛をする男女のお話。怖いです。でも実はみんなこんなもんだったりして。山田詠美すごいなーって感じで私は好き。好き嫌い分かれそうな小説。全6篇。
「間食」
ひとは誰かに可愛がられてそれが溜まっていつか溢れ出して、次の誰かを可愛がる。愛情は連鎖していて、その愛情が断ち切られると別の連鎖を捜し求める。その連鎖から外れた人は…みたいな話。
「人とのつながりって、何か共通のもので、どんどん続いて行くでしょ?食物連鎖って知ってるでしょ?それみたいな気がするんだよね。でも、人間は、おやつ食べるから動物とは違うかも。」
愛情の連鎖にもおやつを間食してしまう(=浮気しちゃう)人間。ううーん。
あとやっぱり、暴力を当たり前に愛情として示す男も受け入れる女もキモチ悪くて怖い。「花にしかしないんだよ、こんなこと。」「雄太は、ほんとにあたしを愛してるんだね。」はぁー。
「夕餉」
愛情をひたすら完璧過ぎる料理で示す美々ちゃん。「私の作るおいしい料理は、彼の血や肉になり、私に戻ってくる。」この人もちょっと行き過ぎてる。
ただわたし、美々ちゃん嫌いじゃないんだよなぁ。愛情なんて人それぞれだし。男に寄りかかりっぱなしにみえて、実はそうじゃない。しっかりしなきゃ、この幸せを手放さないためにってちゃんと分かってるもの。
そして美々ちゃんの恋人の鉱くんが素敵すぎ!
アルファベットマカロニで遊んでて、「FORGET ME(私を忘れて)」になっちゃってヘコんでる美々ちゃんに“NOT”をわざわざスープから探し出して、「フォアゲット・ミー・ノット、忘れな草のことだよ。」ってまじ惚れる!!
全編通して出てくるお料理の描写もなかなか。そういえばどっかの国では男女で食事を摂るのは結婚を意味するんだっけ。
「風味絶佳」
はい、柳楽くん主演のシュガー&スパイスの原作です。あとで知ったんだけど(笑)
あたしはまだシュガー&スパイス観てないんだけど、志郎が柳楽くん…イメージ違う。でも映画も観てみたい。
人間は誰でも誰かの影響を色濃く受けちゃうわけで。
読み進めていくうちに、なんか不二ちゃん(アメリカかぶれの70歳)て…って思ってたらやっぱり福生(ふっさ)の人でした。福生ってほんと独特なんだなー。よく知らないから気になる。行ってみたい。
「女の子は、シュガー・アンド・スパイス。私は、いつも女が優先と言って来た。それは、男より体力がないからだよ。それだけの理由。女は、決して弱い代物じゃないんだから」
「海の家」
いちばん綺麗なお話。初恋をやり直す大人。私は特に気持ち悪いとも思わなかった。初恋をやり直しても、最後まで彼女は日向のママで居てくれてたし。どっちかってゆーと日向があまり好きになれなかった。誰の中にもこっそり隠れてるような、諦めきってる大人の顔したコドモ。そして私の中にも居そうで嫌。
「大人が初恋やり直すって、いやらしくて最高だろ?」ってゆう作並くんのセリフがなんとも。
「アトリエ」
怖い!!もうひたすらに怖い。男女共にいい感じに歪んでます。裕二の自己満足の世界だけで創られたアトリエは、所詮歪んでいて。
ラストは手放しに投げかけられてるけど、きっときっと…きゃー!
久しぶりにぞくりです。小説読んで怖かったのは江戸川乱歩の『芋虫』読んで以来。あれはマジで怖かった。人生怖い小説ナンバワン。怖すぎて泣いた。
「春眠」
なんだか色々と切ないお話。普通にいい話なんだけど、異色。男や女であることをやめろとは言わないけど、一度親になったなら親であることを放棄しないで欲しい。子供は一生子供。
あと弥生ちゃんがあまり好きになれませんでした。理由はどうあれ、自分と旦那が幸せならいいって、それで他人傷付けちゃダメでしょう。綺麗事かもしれないけど。人間ってそんなもんかもしれないけどさ。
あたしは章造目線で読んでたからだけど、大人になったら変わりそう。この小説はもうちょっと寝かせてまた読んでみることにします。
やっぱり小説はいいね。