Blog 「D」

沖永良部島のDのブログ

早熟

2016-11-15 13:18:20 | TR
忘れないためにお借りします。


<早熟型の苦悩>


サッカーに限らずジュニア期のスポーツ界において、やはり早期に思春期オプションを獲得する子どもが大抵の競技で優秀な成績を収めるようです。が、早熟型選手には思春期さっぱり選手とは違う、また別の問題があるようです。

以下は「ジュニア期の体力トレーニング」(参3)の巻末に収録された、今回の研究に参加された先生方の座談会からの抜粋です。

「そういうことからすると、あまり小さい時から全国大会などはやらない方がいいと思うんですね。小学校の時に一番だった子は、後で挫折を味わうだけですから。…」

「私たちの観察している例でも、小学校の時に全国大会でとび抜けて身体が大きく、優勝したのですが、中学校へ行ってどこかの試合で負けて、その後陸上競技をやめてしまった例があります。」

「小学校で全国一位というのは本人にとっては、非常に勲章なんですが、その後本人には大変なプレッシャーになっているように見受けられます。…」

「今の問題は、成熟の早い子どもたちが良い成績をおさめていて、その後駄目になってしまうという例ですが、本当にその子が伸びないというより、むしろ心理的な問題が大きいのではないでしょうか?…」

どうやら真っ先に大きな成功を収めてしまうことがゆくゆく重しになるという話、「そうなんじゃないの?」なんてよく言われますが、実際そういったことが普遍的にあるようです。

早熟型の苦悩

そして一人の人物に行き当たりました。

為末大―。2000年シドニー・2004年アテネ・2008年北京と、3大会連続でオリンピックに出場したアスリートです。本人自ら「早熟型」を自認しているようで、そのことでの苦悩についてツイートしたまとめがウェブサイト「トゥギャッター」(参6)に掲載されていました。以下、抜粋です。

質問でどうして早熟型の僕が生き残れたと思いますかというのがあって今日はそれの返答。あまり知られていないのだけれど、陸上で中学チャンピオンでオリンピックに出た人はかなり少ない。僕とそれから女子に一人、記憶ではそれ位だと思う。小学校中学校で抜きん出た子はかなりの確率で追い抜かれる。

早熟型ってのも似た所があって、人生を振り返るとその時期がたまたま突出していただけなのに、当時はまるで全く別の次元の実力があるかのように感じる。もちろん本当に別次元の実力を持っている事もあるのだけれど、多くの場合の早熟型は成長の先取りをしているからいずれ後発に追いつかれる

早熟型がこじれるのは、期待値を下げられない所にあって、周囲も自分自身も成長曲線を早熟時代の延長線上に見ているから、本当は結構いい線いっていても、成長がにぶったとか、停滞していると感じて焦る。焦って無理をして、それで本当にモチベーションや体を壊してしまったりする。

同じ努力をしていても、逃げるのは追いかけるより何倍もつかれる。勝てたら儲けものと思うチャレンジャーに対して、負けてはいけないという重圧を抱えながら戦わないといけない。それに早熟型は転落や失敗の経験も少なくて失敗した時周囲の失望も大きいから余計に冒険が怖くなって変化しにくい

ツイッターというツールゆえの短い文章ですが、「早熟型」為末さんの苦しみがよく伝わってきます。この苦しみとどう向き合ったのか。

僕は典型的な早熟型で、中学校の時点で身長体重がほとんど止まってしまった。身体能力もその後あまり高まらなかったから高校位から普通にやっていると追いつかれるという焦りがすごくあって、考える事しか勝負できる所が無かったから、どうやったら勝てるかをずっと考えていた。

それから期待が大きい事もあって、周囲も自分も、型にはめて完成させようとしがちだけど、それが伸びどまりの大きな原因になりうる。だから早熟型は今の状況に自分を最適化せず、変化の余地を残しておく、つまり遊びを作っておくのが大事。早熟型の多くは昔の最適化した形から抜け出られなくなっている

わかっていても、変化できないし、考えられないし、楽しめないのは、結局の所恐れからくる。だから早熟型が一番戦わなければいけない相手は、失望への恐れ、現実を見る事への恐れ、などの恐れ。つまり本当の意味で”今”を受け入れられるかどうかが早熟型の将来を決めている。

思春期の子どもたちにはちょっと難しいかな?でも、早熟型の選手にとってとても参考になる内容だと思います。

早くに思春期オプションを獲得した選手、今はめちゃくちゃ有利ですが油断は禁物です。諦めない思春期さっぱり選手は「どうにかしてこの差を埋めてやろう」といろいろ考え、工夫して、努力してます。いずれ必ず彼らは思春期を迎え、体格的に追いついてきます。その時にも「俺の方がやっぱり上だ!」と言えるよう、負けじと頑張ってほしいと思います。