しろとくまの動物病院ブログ

獣医となって四半世紀。
動物診療を通して見えてきた世相を語る。

ドッグフード 1

2012-10-11 19:48:44 | 日記

 診察室内での飼い主さんとの会話である。

「わんちゃんのご先祖達が食べていたものって何だと思います。」

「う~んと・・・。何でしょう?」

「わんちゃんたちも人間の世話になる以前は、生きた動物を捕まえて
 食べていました。」

「そうですね。」

「どんな動物を食べていたかというと、野ねずみやうさぎや小鳥なんかを
 捕まえて食べていたわけです。」

「なるほど。なるほど。そうですよね。」

「では、その捕まって食べられる動物達は何を食べていたかというと、
 種や実や根や草ですよね。ねずみさんやうさぎさんたちは臼歯を持っていま
 すから堅い物も充分に磨り潰してからのみこみます。それから胃や腸で消
 化されるのですが、そのなかでも大事なことは生きた微生物によって発酵
 されることです。しかも彼らの腸はものすごく長いので、身体の大部分
 が醗酵された消化物で満たされているわけです。」

「へ~、そうなんだ~。そんなものを食べていたんですね。この子のご先祖様 
 たちは。なるほど~。」

「なんとなく今食べているドッグフードとは違うような気がしませんか?」

「そうですよね。全然違いますね。」

「それから、ドッグフードは腐らないでしょ。」

「はい、腐りませんね。」

「真夏の室温で開封して置いておいても、腐りませんよね。」

「はい、そう言われてみればそうですね。」

「それって、食べ物としておかしいと思いませんか?」

「はい、おかしいです。」

「ということは、大なり小なり科学物質が添加されているということです。
 化学物質が身体に悪いことはお解りでしょ。」

「はい、解ります。ということは、成分としてもこの子の身体には合っていな
 いし、しかも化学物質によって身体が悪くなるものを毎日食べさせている
 ってことですね?」

「残念ながら、そういうことになります。ただ、そういったことをちゃんと
 考えて造っているドッグフードももしかしたらあるかもしれません。
 もしあるとしたら、それはすごくお値段の高いもので、賞味期限が短いもので
 あるはずです。それと簡単な実験がありまして、屋外の土の上にドッグフード
 をころがしておくんですよ。安全な食べ物でしたら、蟻んこが寄ってくるはずです。
 そうでなければ、蟻んこは見向きもしません。
 僕の試した限りでは、ドッグフードに蟻んこはよって来ないです」
  
「なるほど、それはおもしろいですね。帰ってから早速試してみます。
 ところで、先生のお薦めのフードってあるんですか?」

「製造工程をすべて確認することができないので、僕は今のところありません。
 あったら僕も知りたいです。」

「そうですか~。それじゃ、この子には何を食べさせたらいいのでしょうか。
 今のままのドッグフードでいいのかしら。」

「それは僕としてはお奨めいたしません。できたら手作りしていただけると
 いいと思います。」

「手作りというと・・・・・?」

「まずは原材料ですが、玄米、黒ごま、海塩、黒糖、根菜、小魚、海藻、豆類
 などになりますが、これらに加えて最も重要なものが生きた微生物がいる
 醗酵食品です。」

「え~っ!塩なんて与えちゃってもいいんですか?犬に塩分はだめなんでしょう。」

「食塩はだめですよ。食塩は。今仰っている塩分は食塩のことです。
 海塩は、ほどよい程度摂取しないとダメなんですよ。我々人間も含め生き物の
 ミネラルバランスと海塩のミネラルバランスはほぼ等しいので天然の総合ミネラルともいえます。
 生物は海から発生し、進化をとげて現在に至ったわけで、お腹のあかちゃんが漂っている羊水は、
 濃度こそ薄いですが、ミネラルのバランスとしては海水と変わらないんですから。」

「なるほど~。必要なんだ~。でも食塩はなぜだめなのかな~。」

「食塩は塩化ナトリウムといってNaとClだけなんですよ。海塩はそれだけで
 なくNa Cl Mg Ca K Fe S Zn P Mn Se V ・・・・・その他身体に必要なミネラルの
 ほとんどが含まれるんです。
 ちなみに、黒糖は大丈夫ですが、白糖はだめです。」

「どうしてですか?」

「白糖は化学工場で生成された化学物質です。それと分子量が非常に小さいので、体内に
 あっという間に吸収されます。つまり血糖値が急激に上がるということです。
 血糖値の急激な上昇に対応するために、膵臓からインシュリンが大量に放出されます。
 そのため、膵臓がへとへとになります。それを長年に渡って継続しますと、膵臓のインシュリンを
 作っている細胞がダメになってしまって、糖尿病となるわけです。」

「そういうことなんだ~。怖いですね~。」

「そうなんです。怖いんです。でももっと怖いことがあるんですよ。
 急激に血糖値が上がると、脳に大きな刺激が行くんです。その結果、脳内麻薬が出てしまうんです。
 つまり、中毒状態にもなるし、依存症にもなるということです。
 甘い物を摂取しないとイライラしたり、落ち着かなかったりすることありませんか。
 そんな時に、チョコレートやケーキやジュースを飲むと、気持ちが落ち着いたり、元気になったり
 しませんか。そんな人は要注意です。かなりの白糖中毒、白糖依存症になっています。」

「え~っ、私、間違いなく依存症です。」

つづく








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