しろとくまの動物病院ブログ

獣医となって四半世紀。
動物診療を通して見えてきた世相を語る。

マインド・コントロール

2012-10-17 13:26:52 | 日記
「Oさん、明日のお休み何するの?」
 意味はないが何気なく聞いてみた。

「あしたは○○のライブに行きます。」
 今流行のアイドルグループである。完全にマインドをコントロールされて
 いる。
 コントロールされていることに全く気づいていない。
 日本人のほとんどがマズローの第4ステージを越えていない。
 これらの人達をマインド・コントロールすることは容易である。

 マインド・コントロールは、まず対象者の気持ちを心地よくしてあげる
 ことからはじまる。

「まあ~うれしい~。また来てくれたのね~。あいたかった~。かっこいい~。
 すてき~。たのもし~。だから好きなの~。さすが~。すご~い。」
 
 キャバクラの手口である。

「すごくきれいだね。素敵だよ。かわいいね。うれしいよ。やさしいね。
 たいへんだね。がんばってるね。すごいね。」
 
 ホストの手口である。

「お嬢さん、若いね~。素敵よ~。うれしいね~。がんばってるね~。」
 
 おなじみ司会者の手口である。
 
 キャバクラとホストの両方揃って出迎えてくれるのがオウムであった。
 芸能人でおなじみのS学会や、政治家でおなじみのT教会も同じだ。
 誉められて心地よくなって、脳内麻薬が少しでも出てしまったら、
 完全に虜である。 
 
 第4ステージを越えていないひとたちは、気持ちを向けてもらうことや
 誉められることを強く望んでいる。小さな子どもが「見て!見て!見て!」
 と自分に気を向けてもらうために強くアピールしたり、誉めてもらうために
 がんばったりすることと同じだ。ちなみに第2ステージを越えていない
 スラム街の子ども達にはこのようなアピールはない。
 
 中東の戦場に送り込まれている米国の兵士たちは、ゲームを使ってマインド
 を破壊されている。ゲームのソフトを開発するときに最も重要なことは、
 ゲームでいかに脳内麻薬を分泌させるかということだ。
 いつクリアできるかわからない状態で、ステージを少しずつ上げていき、
 最終ステージをクリアしたときの達成感。
 大きければ大きいほど脳内麻薬が大量分泌される。
 これを繰り返すとまさに薬物依存症となり、禁断症状があらわれる。
 現代のこどもたちが切れやすい原因のひとつであることは間違いない。
 ゲームに没頭している真っ最中に、電源を切ったらどうなるであろう。
 おそらく半狂乱にならんばかりのパニックと攻撃性が発動するであろう。
 
 兵士たちの場合、シューティングゲームを戦場シュミレーションと称して
 繰り返し行う。
 人のDNAには人を殺す直前に躊躇するというプログラムがなされている。 
 しかしシューティングゲームで脳内麻薬による中毒状態になると、
 そのプログラムが破壊されてしまう。
 戦場に送り出され、街をパトロールするとき、目前を横切る何かがあると
 反射的に引き金を引いてしまうのだ。
 兵士の放った銃弾に斃れたひとは、戦闘員ではない若い母親と子どもであったり
 することもしばしばである。
 そういう事故をおこした兵士にも帰国をすると、奥さんや小さな子どもが
 いて、良心の呵責にたえきれずPTSDとなり自殺を遂げるのである。
 帰国後の自殺者は数千人にものぼる。
 子どもに麻薬(テレビゲーム)を与える親の気が知れない。
 その親たちがゲーム中毒といったところなのか。
 
 チンパンジーを使ったある実験がある。
 スイッチと扉があって、スイッチを押すと扉が開いて食べ物を手にする
 ことが出来る。
 スイッチを押すと必ず食べ物が出てくるようにしておくと、自ら扉を
 開けて食べ物を手に入れ食べ続ける。
 ある程度満足すると、次にそれがほしくなるまではスイッチを押さない。
 その間普通の穏やかなチンパンジーである。
 方やスイッチを押すと食べ物がある時とない時があるようにする。
 ほとんどなくてたまにあるというようにする。

 たまにしか出てこないので、スイッチをずっと押し続ける。
 そのうちお腹は満たされて空腹ではない状態になる。
 満腹状態になってもそのチンパンジーは、スイッチを押し続ける。
 徐々に押す力が増してくる。激しくたたくようになる。
 錯乱状態になってキーキー叫びながら叩き続けるのである。
 食べ物がほしいのではない。時々食べ物が出てくる時に分泌される脳内麻薬
 による依存症とその禁断症状だ。

 パチンコもゲームも全く同じ原理だ。中毒患者なのだ。パチンコは商品や景品を
 求めているのではない。
 大当たりをした瞬間に大量に放出される脳内麻薬中毒の禁断症状なのだ。
 ヘロインを求めてギラギラしたひとたちと同じである。
 ちなみに骨と歯が究めてもろい。


 脳内麻薬を利用したマインド・コントロールの更に上のステージがある。
 恐怖の感情を利用するのである。人の最高に強いモチベーションは
 楽しいことに向かっていくことではなく、恐怖からの回避である。
 はじめは脳内麻薬がでるくらい心地よい想いをさせる。
 その後、頃合いを見計らって、恐怖を見せるのだ。
 本人に体験させるのではなく、第3者を見せしめのようにして落とし込む。
 その落ち込んでいく様をつぶさに見せるのである。

 心地よい状態がプラス100とする。心地よさがなくなることは0になる
 ということだ。0になるだけでも嫌なことである。
 恐怖の状態に落とし込まれることはマイナス200,300、場合によっては
 マイナス500,1000となり、プラス100からすると大きな差となる。
 通常のひとにはとても耐えられない。
 このプラス100を維持させるため、少なくともマイナスなにがしにならない
 ようにするためには、この恐怖をみせつけたひとには絶対に抗えないことになる。
 自分だけはこうはなりたくないとなるからだ。
 子ども達のいじめのなかで、次に自分がいじめのターゲットになりたくない
 という恐怖感からいじめに参加してしまう心理にも似たところがあるかもしれない。

 自分には、いつもニコニコしながら心地よい状態を提供してくれるので
 あるから、無理矢理強制されている感覚はない。
 マインド・コントロールされて動かされている自覚はなく、自分の意志で動いていると
 信じて疑わない状態だ。
 大きな心地よさのなかに、自分はそんな目に遭わされたくないという小さな恐怖を
 すり込まされたら、言いなりになっていても自覚がない。
 
 身近なところにもマインド・コントロールの罠はいたるところにしかけ
 られている。
 たとえばいつもニコニコして心地よい状態を提供してくれる人から、Aさんのことを、
「あの人はあんな酷いことをした。こんな愚かなことをした。
 あなたのことをこんな風に言っていた。」などと聞かされると、Aさんのことを
 よく知らなくてもAさんの人物像がすり込まれてしまう。
 聞かされたことが、事実かどうかは関係ないのである。
 捏造されたことでさえ、マインド・コントロールされた人にとっては、真実になるからである。
 すり込まれた人は、自分の意志で「Aさんってこんな酷い人なんだよ。」
 と周囲のひとに話し始める。
 Aさんの周囲にいるひとを3人でもマインドコントロールできたら、完全にAさんを
 陥れることができるのだ。
 メディアのターゲットになってしまった政治家や芸能人などはたいへんだ。
 あっという間に支持率や好感度が落ちることになる。


 そして更にその先のマインド・コントロールがある。反社会組織のような
 集団が行うもので、最も悪質な動機により行われる。洗脳である。
 催眠術や、麻薬のような薬物を使用し、潜在意識の深い所にいろんな
 言葉、映像、記憶などを重しにつけて沈めておくのである。
 文字通り心のそこから支配されることになる。
 したがって洗脳を受けてしまったひとは、心理的にも精神的にもほぼ
 ロボットに近い状態になってしまうといった非常に危険なものだ。
 つまりそのひとの生き方そのものである信念をも都合のいいように
 入れ変えられてしまうのである。
 地下鉄サリン事件や、坂本弁護士事件などの実行犯は、自分の意志で実行
 したと堅く信じていた。
 操り人形のようにコントロールされていたとは夢にも思っていなかった。
 彼らはごくごく普通の善良な人達だった。
 ただ、悲しいことに第4ステージを越えていなかったのである。

 テレビでココアが身体にいいと言われるとスーパーマーケットから
 ココアがなくなる。バナナがなくなる。××がなくなる。
 こんな現象がおこるのは日本だけである。アル意味幸せな国だ。
 集団マインド・コントロールにもほどがある。

「先生、この子関節が悪いんですよね。テレビでよく見るグルコサミンとか
 コンドロイチンとかのサプリメントはどうですか。」

「コンドロイチンもグルコサミンもタンパク質です。服用すると、胃と腸で
 消化されアミノ酸になります。お肉や大豆を食べることと同じ事なのです。
 決してコンドロイチンやグルコサミンのかたちのまま、関節に届くことは
 ありません。髪の毛が薄いひとが、頑張って髪の毛を食べても毛髪が濃くは
 ならないのと同じです。ただ、人の場合はプラシーボ効果ということが
 あります。よれよれのひとがサプリをのんだらしゃきしゃき歩けるように
 なる映像を繰り返し繰り返しみていると、本当にそうなると信じて疑わなく
 なるのです。そうなったひとはそのサプリをのんで本当に調子が良く
 なります。でもこのワンちゃんにはプラシーボ効果はないでしょう。
 だからのませても意味がないのですよ。」

「へ~そうなんですね~。知らなかった~。」

 マインドをコントロールすることで、ひとの痛みを和らげたり、癒したり
 励ましたり、元気付けたり、苦しみを取り除くことができることがある。
 東南アジアの心霊治療などはその典型だ。
 手品でお腹の中から悪い物を取り出す映像をみせることで、すっかり信じ込んでしまい
 病気が治るやつだ。
 実際にそれで治ったり、不幸な状態から開放されるのだからそれはそれで
 悪くはないと思う。
 それで多額な報酬を得ようとしていなければ、わざわざそのペテンを暴く必要はないであろうし、
 暴くことの方が罪かもしれない。
 
 多くの人がマインド・コントロールの言葉は知っていても、身近なところで
 仕掛けられていること知らない。
 たとえ第4ステージを越えていないひとであったとしても、マインド・
 コントロールの知識があれば、陥れられることもないかもしれない。
 もっと世間に普及すれば、多くの不幸を未然に防ぐことができるのでは
 ないだろうか。

 テレビでおなじみのタレントさん。ドラマで主役を演じ、クイズ番組では
 難問に答えるなど大活躍である。
 当然視聴者は演じた役柄をそのタレント本人だと錯覚する。
 クイズに答えることで聡明だと思いこむ。
 刷り込みである。そして、そのタレントさんがコマーシャルでお奨めしてくれた
 ものは素晴らしい物だと信じ、喜んで購入する。
 視聴率をあげられるタレントさんがコマーシャルに多くでられるメカニズム
 はここにある。
 
 アイドルスターがステージに登場。
「きゃ~!」
 脳内麻薬、分泌開始。

「みんな~、げんき~。」

「きゃ~!」
 脳内麻薬、増量中

「みんなに会いたかったよ~。」

「きゃ~!
 脳内麻薬、増量中

「あいしてるよ~。」

「きゃ~!」
 脳内麻薬、許容量オーバー、失神~

 自分に向けての言葉だと会場の全員が信じて疑わない・・・・・。