名もなき旅の記録

名もなき日本人の名もなき旅の記録。ささやかでありがち、だけどかけがえのない日々の記録、になる予定。

砂漠公路

2005-09-21 20:56:24 | 中国
本来の予定ではウルムチ→コルラ→クチャ→カシュガルと北道を通って行くつもりで日本を出てきたけれど、予定を変更して一気にウルムチから南下してホータンを目指すことに。ホータンそのものの魅力ももちろんのこと、タクラマカン砂漠の真ん真ん中を南北につっきる「砂漠公路」の名前に魅せられて。

バスはウルムチ南バスターミナルから日に何本か出ているので当日でも全く問題なくチケットは買えた。当初聞いてた情報では「300元」という話だったけど、それは16時発の豪華寝台バスだけの特別料金らしい(料金表に明記されてた)。でも自分のことを外国人と見るや、みなしきりに16時のバスを勧めてくる。さもその時間にしか出ないかのように。

この日もチケット窓口で行き先の「ホータン」と告げると、「16時ので良い?」と服務員のお姉さんは尋ねてきた。いつもならいちいち時間の指定をするのも面倒なので、それでいいと言ってしまい勝ちだが、この日は別。

「ホータン!」
「16時ので良い?」
「一番安いのお願い」
「、、、15時30分のがあるよ」
「(念を押して)一番安いの?」
冷静に考えると会話にも何もなってないけど、結局一番安い200元の寝台バスに乗れることに。ちなみに寝台はバス、列車ともに段の上下によって料金が異なり、下の方が高くなる(なんでやろ?おれは上の方が居心地良いと思うんやけど)。そのバスも下段だったら220元。20元でも1晩の宿代くらいにはなる。迷わず上段を選択。これが吉だったのか凶だったのか、それは未だにわからない。



寝台バスについて簡単に解説すると、その名の通り乗客全員が横になって乗るというもので、両方の窓側と中央部とに座席(というか寝床?)があり、その間にそれぞれ通路が通っている。通路は狭く、普通の大人が歩いてギリギリ肩が両側に触れるかどうかといったところ。寝床は全て上下2段に設置されており、一見窮屈そうに見えるが、上下段ともに寝床に座っても頭上に余裕がある。またスペースの省略と居住性の面から、頭を置く部分(進行方向後ろ側)がやや斜めに持ち上がっており、後ろの乗客はその下側の隙間に足を突っ込む作りになっている。そして寝台という性質上、乗客はみなバスの昇降口で靴を脱がなければならない。

さてここまで詳しく書いて何が言いたかったかというと、寝台バスはとにかくおっさんどもの足の臭いで悪名高い。おまけにどいつもこいつもなぜか化繊の靴下を常に好んで着用してるからその凶悪さはもう言葉にできないくらい臭い。それさえなければ座るも良し寝るも良しで快適この上ないのだが。。



この日も、14時半に停車場に着いたバスにノリノリで一番乗りしたところ、早くも悪臭の洗礼が。まだ誰も乗り込んでへんのになんでこんなに臭いねん!臭いが既にバスに染みついてしまっている。自分の寝床を見つけて買い込んだお菓子と果物を置いてそそくさと脱出。ウイグル人どもも知ってか知らずか誰も発車時刻まで乗ろうとしない。

おまけにどういうわけか自分の寝床は入り口すぐの上段で、なぜかそこだけ変則的に4段になってやがる。寝床に座るどころかちょっとデコボコの悪路を走ろうものなら天井に体ごとアタックしかねない。

15時30分、発車時刻になってから改めて乗車。もうこうなりゃ覚悟決めて乗るしかない。というか着くまで寝てたらいいだけやろ(とまた甘く考えていた)。

、、、しかし、想像以上の激臭。おっさんどもに軽い殺意を覚えつつ、とっとと備え付けの毛布にくるまる。、、、これも臭い!中国の移動は硬座で極めたと自惚れてたが、まさかそれを越えるものがあったとは!もうとにかくさっさとホータンまで行ってくれ!

しかしバスは乗客を乗せたまま一向に発車する気配がない。しかもどういうつくりになってるのかわからんが、排気ガスが出入り口のすぐ下から出ていて、ドアを開けたままアイドリングを続けているので、排ガスが全ておれの寝床を直撃。一瞬うげぇとなったが、おっさんどもの足の臭いを嗅ぎ続けるより100倍おいしい。排ガスなかなかいけるやん!って、自分でもわけわからん。


そしてバスは55分遅れの16時25分に出発。数人のウイグル人たちが何度も乗ったり降りたりしていたが、おそらく正規の料金で乗り込んでいないのだろう(運転手の小遣い稼ぎか?)。上段からじっと観察してたところ、相場はどうも50元ぽい。そんな手があったのか。聞いてた金額より100元安く乗れて喜んでる場合じゃない。

しかしようやく出たと思いきや街の外れで検問。さては外国人が乗ってはいけないバスだったかな?と内心ドキリとしたが、どうも外国人ではなくウイグル人をチェックしてるようだ。そういやここ1.2年の間に新疆でバスのテロがあったようななかったような、、。

それにしても最初「ホータンに着くまでに頭がどうかしそう」と思った悪臭にも、2時間もすればすっかり慣れてしまった。人間の適応力ってほんますごいもんがあるな、と思う一方で自分の大事な感性の回路が何本かまとめて切断されたかのような感も。

車内ではエンドレスでウイグルの謎のドラマが流されている。それもスピーカーがこれまたおれの頭から30cmしか離れていない天井に設置されてる。なんでやねん。「あと10分たって音量下がってなかったら運転手しばく」と10分置きに考えながらウイグルのドラマを見続けた。

その感想としては、どうもウイグル人は悲しい話が好みらしい。ヒロインらしき女の子は、どんな話でもたいてい泣いている。親父は決まって働かず酒飲みで、母親はいつも彼氏との交際に反対してて、彼氏もたいてい二股してるかいろいろあって失踪するかのどれか。あと親父か彼のどちらかはたいてい事故か病気でいきなり死んでしまったりする。そして最初から最後まで特に何もしないでずっと泣き続けてる女の子。よくはわからないがウイグル人はそんな話が好きなのか?


肝心のタクラマカン砂漠には午前2時を過ぎてから突入。満月の翌日ということもあり外は明るいが、風情を楽しむという雰囲気には残念ながらなれなかった。

バスは午前9時にはタクラマカンを抜けてニヤの街も通過。ずっと砂漠だったところに急にポプラ並木が生え、オアシスに着いたなーっと感慨に浸る間もなく通り過ぎた。

午前11時20分、干田の街で2度目の食事休憩。ちょっと通りをブラブラしてみたらみんな口々に「コリア」「コリア」と呼んでくる。こんな滅多に外国人が来なさそうな街ながら、韓国人はよく訪れているのか?

そしてウルムチを発つこと24時間と38分、ようやくバスはホータンに到着。悪臭から解放され、空気がおいしい。砂漠は思ったほど満喫できなかったけど、今回一つ学ぶことができた。「足の臭いで人は死なない」。





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4 コメント

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車内での激臭対策は? (少女A)
2005-09-22 23:40:48
寝台バス見るたびに「いつか乗るぞ!」と淡い夢を抱いていましたが・・殺意の足の大激臭・・・?

鼻の両穴に濡れティッシュ詰めても(呼吸は口のみ使用)臭いますかね?

慣れるしかないですか?他、対策ありませんか?

請アドバイス、謝謝。

近々、友人と行く瀋陽―北京―洛陽間の移動を寝台バスの予定にしてるのですが、今かなり弱気になってます。



砂漠抒情が吹っ飛んだ激臭抒情バスの旅、お疲れ様でした。好笑!肺をきれいにして、ホータンもエンジョイしてください。
バスの質 西高東低の原則 (ko-ki)
2005-09-23 00:10:50
バスの質は西高東低

トルコバス=超 快適 ジュースまで出る

シリアバス=超 快適 ジュースは出ない。

イランバス=バスは古いが、揺れも少なく、空調完備

インドのバス=長距離バスは快適、田舎の路線バス揺れまくり&空調なし(TATAブランドです。)



という話をききました。

そして、最後に中国の寝台バスは最低 だそうです。



これからの旅では、これ以上懲戒的なバスはないだろうから安心やン。



ちなみに寝台バスの中国最悪はゴルムド→ラサの寝台バスだそうです。(空気薄い、臭い、道悪い、長い=2泊3日)
激臭抒情!? (さか)
2005-09-23 19:59:27
>少女Aさん

対策はズバリ、香水ですね。ちょっときつめのやつを自分の頭の周辺にかけておけば、きっと快適なバスの旅が待ってます。

いっそ小さな容器に香水を詰めてバスターミナルで売ったら、きっとすごく売れますよ。少なくとも自分は買います。



>ko-kiさん

今にして思うとトルコのバスは快適やった。ジュースも香水も出てくるしなー。



空気が薄いという点では近日乗るクンジュラブ越えの国際バスもきつそうやなぁ。せめて景色が最高すぎることを祈るばかり。。

謝謝 (少女A)
2005-09-25 00:34:50
まさにそのチベット入りも寝台バスで!と思ってたのに。淡き夢崩壊中。

でもどこかで1回以上は香水しこたま振り掛けて乗ってみます。

ko-kiさん、さかさん、情報&アドバイス非常感謝!

パキスタンのバスが快適であることを心よりお祈りいたします。



いまカシュガルなんですね。いいなー。

朝晩の気温差が激しいのでは?

乾燥と風邪にお気をつけて!

韓国人カップルと相性良さそうならエンジョイしてください。日韓友好万歳。

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