先日、第5波に対する緊急事態宣言解除後の世間の動きに感染増加の心配があることをお伝えしました。
その中で、厚生労働省が発表したデータに基づいて「ワクチン接種後の高齢者の死亡率が上がっているからワクチンは効かない」と主張されている方の記事を紹介しました。
その後、調べてみたら書かれている方は医師でした。
厚生労働省が発表しているデータでは確かに今年の1月時点に比べ8月の感染者の死亡率は80代以上で上がっているように見えます。
しかし、これにはマジックがあります。
それはその時点での累計の数字であることです。
累計なので1月~8月の間に高齢者の死亡率が上がっていれば当然死亡率は上がります。
ですので累計の死亡率でワクチンの効果を議論するのは間違いです。
こちらのデータによれば8月2日の時点で65歳以上で2回接種した人は8割近くになっています。
1ぺージ目のグラフで薄い緑色の破線が1回接種、濃い緑色の破線が2回接種した65歳以上の人の割合です。
接種率の上昇に伴って65歳以上の新規感染者数(緑色の実線)は明らかに減少傾向に転じています。
しかも、7月に入ってからの第5波の急上昇が始まっている中でも減少し続けています。
これを見てもワクチンの効果は無いといえるのでしょうか。
新規感染者の死亡率でワクチン接種の効果の有無を議論するのであればワクチン接種者と未接種者での死亡率の比較をしなければ意味がありません。
ワクチン接種者の死亡率が上がっているのであれば重症化した場合に何らかの影響があるという可能性が浮上します。
しかし、それはこちらの記事で否定されています。
65歳以上の年代別の死亡率(=致死率)が月ごとに集計されています。
ワクチン接種前の1月、4月、5月の死亡率が高く、ワクチン接種が始まった6月以降は下がっています。
ワクチン接種で死亡率が上がるのであれば6月以降の死亡率が上がるはずですがそうはなっていません。
先の記事を書いておられる方はこういうところには目を向けずに、現在もワクチン批判を繰り返されているようです。
自分に都合の良いデータ解釈をして、さも正しいかのような間違った結論を導き出すのは科学に携わるものが決してやってはならないことです。
医師の方にこのような議論を展開している人がいることが残念です。
(医学も科学の一分野)
「デマだ」と言っている人がデマを言っているのだからたまりませんね。
皆さんも一つの情報を鵜呑みにせず、いろんな情報を集めて何が正しいのかを自分で判断することが大切だと思います。
(以前にも同じ主張をしていました。)