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鼓曲萬来

クリスマスシュトレンとアンナ

これはドイツの伝統的なクリスマスのケーキ
シュトレンというんですわ


1970年の初期の頃
20代そこそこという年齢の頃です
銀座のシーザースパレスという店で毎晩演奏しておりましたので
演奏が終了して自宅に戻るのは毎晩早くて12時1時
ちょっとどこかに寄りますと深夜2時、3時
時には明け方迄帰ってこないという事になります
家族から苦情も出て 結論として近くの何処かに部屋を借りて
そこから仕事場に通うという事になった訳です

で,その時に近田が紹介してくれたのが
原宿のグラスで靴職人をしていた佐藤拓(ひらく)
丁度キディランドの裏に部屋を借りていまして
ルームシェアという形で一人探しているという事で
此れ幸いにその部屋に転がり込んだ訳です

当時近田は恵比寿だったかな、記憶が定かではありませんが
高木と小林は青山一丁目にアパートを借りてまして
私も原宿という事でそこから演奏に通っておりました
まあ50年も前の事ですから細部が曖昧になってるのはお許し下され

その当時のアパート、今で言うシェアルームというんですかね
3つベッドが置いてありまして
部屋代を折半にしまして
まあ、お風呂も台所もトイレもありましたね

で、そこに移った日 もう一人のシェアメイトと
初めて顔を会わせてビックリしましたわ
名前はアンナ
金髪碧眼のドイツの女の子でした
ひえ~!が正直な気持ちですわw

アンナは赤坂のドイツレストランで働いておりまして
それ以外は素性とか何故日本にいるのかとかは謎でした
(そもそも拓がなぜシェアメイトになったのかも謎です
当時彼には付き合ってた彼女もいましたし)

いきさつを聞こうにもドイツ語の会話なんか当時出来る訳も無く
交わしたのは「ターク!(ち~す!)」と「ポ~ス!(乾杯!)」位でしたわ
私の名前を呼ぶときも今までに聞いたことのないような
よちみ、とも よしゅみとでもいうんでしょうかそんな発音でした

当然私が帰宅するのは深夜
もう二人は真っ暗な部屋で寝ている訳で
朝起きますと二人はもういなくて
つまり日常生活で顔を合わす事は殆どありませんでした

そんなクリスマスの1ヶ月前のある日
丁度今位の時期でしたかね
起きましたら なんかケーキと共にメモが置いてあったんですわ
ナイフとフォークがケーキの下に書かれてまして
更にこんな一言が
bitte iss.....

どうやらアンナが働いている店から持って来たみたいで
ドライフルーツやらナッツが沢山入っている
上の写真の3倍くらいの大きいパンというかケーキというか
ゴツゴツとした岩のようなそんな感じのものでした
非常時用に部屋にはドイツ語の翻訳辞書が一冊あるんですが
それで調べてみましたら「食べて下さい」という意味だという事がわかり
早速朝食代わりに頂きまして

コーヒーと一緒に頂くと何かこう柔らかくなって実に美味しかったです
まあ半分とはいかないまでも三分の一位頂いちゃいましたかね
どうも後から知ったんですが
宗教上の理由でクリスマスまでに
皆で少しずつ切って食べるものなんだそうですな
まあ、言葉解らんから仕方ないちゃ無いんですがw

それからアンナとは1年くらいルームメイトでしたが、
何の理由かは解りませんが涙を流しながら
ドイツに帰って行きました
今ならドイツ語だろうとなんだろうと一発変換で出来たのに
当時ドイツ語の手紙等書ける筈も無く
音信普通になってしまいましたが
どうしているでしょうね 同い年ですから70を超えてると思いますが
結婚して子供も出来て もしかして孫とか
どこかで元気に暮らしていると良いんですが

クリスマス近くにシュトレンを見かけますと
アンナを思い出します 夜中にベッドでよく一人で泣いていたのも
そんな時何度か手を握ってあげました 声も掛けられませんし会話も出来ませんもの
70年代初期に外国人と暮らすというのはかなりのカルチャーショックもありましたが
ドイツ語の妙な民謡みたいのをよく歌っておりました
当時にしては良い経験だったとも思います
考え方も習慣も大分違っていましたし勉強にもなりました
ちなみにシュトレンはコーヒーではなくホットワインや地ビールが良いと教えてくれましたね
アンナのジャーマンポテトは絶品でもありました

2年ほど前に渋谷のクロコで演奏した時に
三十年ぶりに拓が遊びに来てくれまして
そこはかとなくアンナの消息を聞いてみましたが
やがり拓も知らないという事でした

Anna (Go to Him)  

我々の年代ではもうSNS等やる方はすくないでしょうけど
クリスマスの奇跡とでもいうんでしょうかね
どこかでこの記事をみて、私の事を思い出してくれて
コンタクトが出来た.....なんて
ありえませんですね.....
しかし、そんな事を思えるのもこの季節ならではです


誰にでもそういう人はいると思います
昔々一時を一緒に過ごしたけれど
何かの理由で別れる事になって
その時のまま何十年も歳をとらない人
それはそれでそのままにしておくのが良いのかもしれません
その時はどうであれ 色々と想像も膨らんで
ワインのように時が経つと熟成していく
そんな思い出の中の人 


いや、つまり....
「なんかこう...話としてすっきりしないな、
ハッキリ言って 何が言いたいのかよくわからん」
「なんか心にズンと来るようなエピソードはないのか?」
「その子にも付き合っていたボーイフレンドの一人や二人いただろうに」
という感想をお持ちの方もいらっしゃると思いますが

結局 話の内容を端的に申しますと ですね
相手はどうあれ 実のところ
「お前はその子が好きだったのか?どうなんだ」という事になりますが

まあ.....いずれそういう機会があって
一緒にホットワインでも飲んだときに話しますわ 乙





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