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御伽噺19

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最愛の恋人

2010-02-27 10:36:07 | 日記
『最愛の恋人』

 ずっと忘れない想い出があった。だから、27才の今、想い出を紐解く。
――私は、高校時代、唯一好きになった人がいた。その人は、彼女がいた。私もそこまで純情じゃないし、男遊びも適当にしてきた。私は恋が無いからこそ、冷静に一緒にデートが出来た。愛情もない。
 そして、好きになった人と付き合うようになった。多分、彼女が別れた事を知って、二人は一緒になった。前から、相手も気に入ってくれたらしい。同じクラスだから、席が近くにあるため、自然と仲良くなった。
 高校二年の夏は、二人で一緒に帰った。写真ばかり撮っていた。彼氏の写真ばかりを。私たちはお互い、いい感じになれる。夜のホテルで。
「いつまで続くのかな?」
「俺に聞くなよ」
「私がもしプロポーズをしても、断るでしょう?」
「まあ、そうだけど」
「それだけ正直ならいいよ」
写真を釘で刺している。私は寝る場所で、ずっと想い出にしようとしている。大人びた性格だと自己分析をしているのにな。稚気な性格になったものだ。
 自室で、勉強をしている。たまに、ホテルに行く。彼氏はバイトに明け暮れている。大学に進学する意思はないようだ。私は大学に行ったら、忘れないでいたいなと、常々思っている。私は、彼氏といる時間を大切にした。友人は少ないから、彼氏だけに休日を専念する。
 高校二年も終わりを告げようとしている。彼氏はもう別れたいのかなと思った。仕方ない。私は一緒にいられただけで、ずっと良かった。私は気にならない。それが恋の運命だから。墓場まで想い出を持っていくよ。そう思った。
 そして高三になった。受験勉強で忙しかった。彼氏とはたまにする。ホテル代は払ってくれる。日曜日の三時間だけデートだから、いい。精神的にもリラックスできる。性欲も抑えなくても済む。
 
私はまた夏に燃えるような恋は、もう出来ないんだなと思った。成績は上々になっている。秋になった。する回数も減った。勉強なんか二度としたくないと思うぐらい勉強をした。そして、見事志望大学に通った。これで、彼氏と遊びまくれる。そう思った。
 別れるまでは、ずっとやってみたい。でも、彼氏は別れを告げた。
「卒業式に一回だけしよう」
「分かった」
それまでのお別れだった。私は、最後の一夜に愛を込めた。できるだけ妖艶な愛を――
 27才の今、私は一人で生活している。恋人がもうすぐ、昇進するようだ。愛情はない。でも、大事にしておいた方がいい人だ。
 印刷工場で働いている。彼氏はサラリーマンだ。知人に紹介されて付き合うようになった。私は煙草を吸う。いつも、外で煙草を吸っている。私はこの工場で最年長者になった。古株が辞めてしまったからだ。結婚するらしい。「心」から祝福をした。
 私は煙草を吸って、気分を紛らわす。煙草仲間と一緒にいる時間が増えた。
「お互い独り身は辛いよね」
「結婚する機会を失ったのかもしれませんね。お互い」
「敬語は必要ないよ。年も一つしか離れていないし」
「でも、敬語で話すほうが楽ですけどね」
「そんなものかな?」
「でも、お互い彼氏はいるし、このままならいいんじゃないですか?」
「そうかもしれない」
そう言いながら、昼休みが終了するまで、こうして煙草を吸っている。今でも「本物」の恋人を思い出すときがある。それ程、大切に想っていた。
 もう結婚しているかもしれない。その先は知らない。でも、元気でやっているはずだ。ずっと、大人びて、素敵になっているといいな。
 私はホテルとアパートで共に愛される。車を路上に止めて、気が狂いそうになるくらいしている。そして、何時まで続くか分からない関係になってきた。
 終わったら、運命なのだろう。そのように考えている。