御伽噺19

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一緒にいたかった

2009-09-30 10:46:45 | 日記
  『一緒にいたかった』

 君とは大学のゼミで知り合った。私はいつまでも、傍にいる決心を固めた。私は別れても仕方ないかなと思っていたけど、彼氏は愛情を固めてくれた。
「一緒にいよう」
大学卒業前にプロポーズをしてくれた。私は嬉しくて泣きそうになるのを嫌った。
でも、ずっと待っていた言葉だった。彼氏は仕事をして、私も働いた。会社は同じにしたかったけど、仕方ないから近くの私の方が給料のいい会社に勤める事になった。
 私は、いずれは子供をもうける運命だけど、気付いていた。でも、今は必死に稼ぐ時。私たちはメールで帰る時間を調整して、一緒に小型車に乗って帰っていく。
そして、私は、料理の支度をしている間に、先にシャワーを浴びてもらった。
 私は、料理は出来ない事もないのだが、後片付けが面倒で、二人とも適当に飯を食べている。
そして、私はきっとずっとこのまま生きていけると思うと、嬉しくてしょうがなかった。私は別にロマンチストではない。でも、これは最高の出逢いと生活だと思っている。
 仕事はさすがに目から意図しなかった涙が出る。でも、いずれはキャリアになり、もっと高い給料の会社を探すかもしれない。
もし、一人きりになった場合の話であるが。
 私は運転免許書がない。だから、貸しマンションでいる場所からずっと距離が近づく場所へ引っ越すつもりだ。
 でも、一緒にいる時にはこれが愛情だ。何て思った。今までの彼氏たちと違った感覚の感情だ。それだから、単なる恋人にしたくなかった。結婚したかった。どうしても。
 大学で出逢ってから、少し燃える心は多少落ちても、その代わり温かいものがそれ以上に上回る。
お互い結婚指輪を大切にしている。私はとても、満足する。指輪じゃない。一緒にいる証拠として形を現してくる。
 私は夫とデートらしきした事はあまりしない。一緒にいる事がデートだ。私は旅行には行ける身分ではないが、でも、夫は意外と興味があるようだ。
「別にいいけど。金が勿体無い」
と無粋な事を言っている。私はそんな所も好きになれた。最初は嫌だったけど。
 26才の誕生日を迎えた。私たちは夜のデートを楽しんだ。でも、私は一緒にいる事になんの疑問もなく過ごしていた。
いつまでも君といれる。私はずっとこんな環境で生活を送りたかった。私はきっと、分かっている。離れ離れになれば、きっと、お互いの幸せのために再婚する事を。
私は彼氏ぐらいでもいいけど、夫は生活できない。でも彼女ができれば、彼女が役に立ち、やがて私の事を想い出として過去のものになってしまう。
 正直、そうなったら、私が侘しくなるのは、きっと理解していた。夫と別れる時が来るとすれば、私はずっと働きながら尽くすのを止めるだろう。
恋愛はしょうがない。摩訶不思議なもので、理性ではコントロールができないからだ。
 私はたった一人でも今の夫を愛する。例え別れたとしても。彼氏では埋められない気持ちだから。
私は27才の秋。手紙を書いている。私がもし先に死んだら、夫に呼んでほしいと思うので。そして、私の純粋だった気持ちから大人びた気持ちまで、全て書き込んで。
手書きではっきりとした字で書いている。だから、届くだろう。私の気持ちを一生。
「死んだらあの世で待っているよ」これが手紙の締めの括りであった。
私は死んでも怖くない。死んだら、きっとどこかで愛し合えるはずだから。死の世界で。二人は極楽浄土や地獄なのかは分からないが、きっとどっちかで逢える。
きっとそんな予感をした。
 隣には、夫が寝ている。私の気持ちを見透かされないように、私も目を閉じた。また開く事を夢見て。
 

今でも愛しているよ

2009-09-30 07:53:25 | 日記
 『今でも愛しているよ』

 君の眠る場所へ来た。毎週日曜日の朝9時に逢いに行く。あの頃からもう3年も経っちゃった。私は今でも愛しているよ。君が淋しい事はさせたくないから。ずっと前から、煙草を吸っていたね。私も同じ銘柄の煙草を吸っているよ。君がいなくなって一ヶ月してから。この煙を吸うと二人でキスした想い出に浸れる。 
 墓の近くの花屋で花を買い、貴方に手向ける。そして、答えの返ってこない灰に私は生涯君と「一緒」にいるよ。ずっと雨の日でも、台風の時にも来ていた。
 OLをしている。24才の頃からずっと同じ会社だ。一度会社を替えている。嫌な上司がいたため、嫌気がさして辞めた。私はすっぱりと物事を決めるタイプだ。辞めた時も何も後悔せずにいた。
 アパートにも写真が立てられているその顔を見ると、「二人」のまま。ずっとこんなにも好きになれた。私はそれだけで幸せだ。私はいつも、傍にいるだけで。
「25才になったら結婚しよう」
私はその言葉を聞けた事で、もう心は結婚をしている。指輪もないし、結婚届も出していない。でも、どんな夫婦よりも夫を愛しているというぐらい、好きになった。
 大学時代を想い出すといろんな事があったね。21才で付き合い始めて、その頃の気持ちを今でも持っている。そして、付き合いが深くなる程、きっと私にとってはこれ以上の彼氏をできないと思った。
 22才で一緒に同居して、彼氏と私は、私たちは卒業式になるのを心待ちにしていた。彼氏はきっと私を愛してくれたのだと思う。だから、離れてしまわなかったのだろう。
 そして、彼氏は永久に愛を誓う前に逝ってしまった。
 大人になって初めて泣いた。彼氏の別れを見届けていた。ずっと燃やすのは私が買った結婚指輪を入れて。もう一つは私の左手の小指につけた。
 結婚の正式なプロポーズはこの指輪と共に言うはずだった。私はずっとその日を待っていた。6月1日に渡すつもりだった。25才まで彼氏がいてくれたら。生きてくれていたら。
 二人で冬に観た事がある綺麗な白い雪。この雪がちらついていたのを思い出す。彼氏は言った。
「俺は夜桜よりも雪の方が好きだな。身体に触れてしまうと、儚く消えていく。華麗に咲く花びらはないし、地味だけど」
「二人でいられる時が、長く続けばずっと二人で一緒に雪を見ようね]
「ああ」
そう言って手を繋いでいた。ずっと一緒に暮らせる夢を見て。
 そして、OLで稼ぎながら、いつものように貴方の味がする煙草を吸っていた。雪は今でも見ているよ。どの景色より愛したこの場所で見ているよ。天国で再会できたらいいね。今度は、せめて結婚式をしたい。永遠の口付けを交わしたい。この雪を見てそう思った。