『隠された記憶』週末に始まってはやくも残り二日になってしまった。もう少し早いうちに書かなければと思いつつ、まだご覧になってない皆様に、、、。これってなんて怖い映画なんだろう。もちろんホラーとしての怖さではないけど、ある意味ホラーより確実に怖い映画だ。ミヒャエル・ハネケ監督というばヨーロッパの映画界では知らない人はいないほどの巨匠といわれているもの国内では一部の映画ファンをのぞいてそれほど著名とはいえない。『ピアニスト』を観た中年のおじさまが「なんで、こんなエロ映画を上映するんだ」とおっしゃったことは映画祭スタッフの中で語りぐさとなっているぐらい、それほどこの監督の実態は見えづらいかも知れない。有名なテレビキャスターの父と印刷関係の仕事をてきぱきこなす母そして何一つ不自由のない一人息子という裕福な家庭にある日、不気味なビデオが送り届けられてきた。やがて事件を探るうちに父親の少年時代の出来事が浮き彫りとなってくる、、、。この映画のなかにこそ世界中に蔓延する不可解な出来事や不幸な事件に潜む病理のもとがあかされそうになっていると感じた。問題のラストシーンを見逃して後悔しないようにしっかりとご覧いただきたい。
70年安保の直前に労働運動入っていったことから、「赤狩り」とか「レッドパージ」の言葉で組合の先輩から50年代から日本国内でも「赤狩り」があって、映画関係者はもとよりマスコミや労働運動の世界でも数多くの人々が職場を追われていったことを聞いていた。少し前にタイムリーな本が出版された。「レッドパージ・ハリウッド 赤狩り体制に挑んだブラックリスト映画人列伝」なんでもあの蓮見さんが絶賛しているらしいのだけど、、、。ハリウッドを追放された映画人が、したたかに名前を変えて脚本家として当時の映画製作の現場で活躍していたというらしい。なんかこんな話しを聞くとほっとするのだけど、現実はもう少し厳しかったようだ。なによりも恐ろしいのが一人の人間を「あいつは共産主義者だ。社会民主主義者だ。」と権力を持つものが一方的に決めつけることである。さらに周囲の人たちが自らに火の粉が降り掛からないことを理由に、口を閉ざしてしまうことである。なんだか、いつの時代でもありそうなことで怖いね。
それでも、信念に基づいて発言したり行動できる人も、この映画の中のキャスターやプロデューサーのようにいるのである。はたして自分がそうした環境におかれたとき、どう行動するかはそのときになってみないと判らない。今言えることは、パージする側にはたちたくないと思っている。『グッドナイト&グッドラック』金曜まで。
それでも、信念に基づいて発言したり行動できる人も、この映画の中のキャスターやプロデューサーのようにいるのである。はたして自分がそうした環境におかれたとき、どう行動するかはそのときになってみないと判らない。今言えることは、パージする側にはたちたくないと思っている。『グッドナイト&グッドラック』金曜まで。
1953年、共産主義の脅威からアメリカを守るという名目で、マッカーシー上院議員らが先導した「赤狩り」が全米を恐怖に陥れていた。こうして、マスコミが見て見ぬ振りを続ける中、CBC放送のニュースキャスター、エド・マローとプロデューサーのフレッド・フレンドリーは、報道番組の中で「赤狩り」と対決することを決意する。監督のジョージ・クルーニーは、どうしても映画化したくて自宅を抵当にいれ制作にあたったという逸話にみられるようにその心意気がモノクロの端正なスクリーンから伝わってくる。「報道の自由」とは、いったい何をさすのか、この言葉はマスコミに向けるだけのことではないだろう。この日本で生活するほぼ全ての人々につきつけられる言葉でもあると思う。「自由を守る・正義を貫く」ことが、どれほど勇気のいることで、そのじつ自らに降り掛かる反動の大きさに恐れおののいた人も大勢いることでもある。この映画は、2006年のいまこの日本で生きている人たちに大きな勇気をあたえ、あわせて苦みも味あわせてくれる。やはりアメリカもこのような映画が撮れる国としては奥が深いといえるのだろうか。