茂木のシネマテーク通信

シネマテークたかさき総支配人・茂木正男のブログ

『花よりもなほ』まだまだ終わらない~花よりも

2006-07-29 10:48:15 | Weblog
シネマテークたかさきで、この作品を上映しようと決めた時にうちで作成したチラシに3名の映評が掲載されて以来、身内と言うかスタッフが次々と感想を書いて来ている。それぞれがそれぞれの想いで、、、。

これだけある意味、書かなければと熱病にかかったかのように今もなほ、、、。(まだ続きます)こんなこと滅多にないことだし、初めての経験だろう。3週間の上映も後半に差し掛かって来た。

7月15日から今日まで550名を超えるお客様がこの映画館で観て頂いた。全国展開された映画なので、シネマテークたかさきでの人数はとても小さくてとるに足らないものだと思っている。ただ見て頂いたお客様が受け止めた感想は、このあとも長く記憶に残り、折りに触れて、青木宗左衛門や長屋の住人が生き生きと蘇るに違いない。

いま、イスラエルのヒズボラいやレバノン攻撃をテレビで新聞で見る限り、宗左の下した決断との段差に言葉もない。

『花よりもなほ』それでも、花よりも、、、。

2006-07-19 21:56:53 | Weblog
この通信の目的の一つが、うちの劇場で上映する映画の見所や解説そして、作品に触れて感じた事を伝えて行くことだとおもっている。

当然としてNPO法人の映画館とはいえ収益という縛りから抜け出して進む事が出来ない。そこでどうしてもこの通信を読んで頂くお客様に「シネマテークたかさき」に映画を観に来ていただきたい。という基本スタンスが根底に広がっているのはお分かりの事とおもっている。

しかし、観客が「映画」を観て見終わってから感じた想いはそれぞれに観客のものであり劇場側が「とってもいい映画だったでしょ」と強制することは出来ない。(茂木は、ときどきしてますが)なにがいいたいのか、判らなくなって来た。

そう、そうでした、つまり映画の感想というものは極めて個人的なものであり、かつ自由に語られるべきものでもある。この『花よりもなほ』という映画は、個人的感想を自由に語るにふさわしい映画と是枝監督とお会いしてあらためて確信した。

多様な角度から切り込んでもいいし、好みの引き出しを選んでもいいし、深読みよし、岡田クンの笑顔よしである。映画館はある意味パブリックなものであるし、同時に個人主義的なものであっていいと思う。そこにはコミュニティとしての映画館と観客のなれ合いでないふれあいが続いていけたらと望んでいる。

『花よりもなほ』こうした魅力に溢れている。

いよいよ『花よりもなほ』

2006-07-12 22:50:17 | Weblog
さて、いよいよ『花よりもなほ』15日の土曜からスタートする。

群馬県内も6月3日から約1ヶ月、伊勢崎と高崎のシネコンで上映された。通常うちの劇場では、このような全国拡大上映作品はよほどのことがない限り、上映する事はない。よほどのことなのである。

この作品をあらためてシネマテークたかさきでの上映を決めると同時に「花よりもなほ・劇場特別チラシ」を作成した。(これは、是非お手に取ってご覧頂きたい)今から300年前、父の仇討ちのため信州松本から江戸に出て来た青木宗左衛門。貧しい長屋で半年暮らすうちに人情溢れる長屋の人々とのふれあいのなかで仇討ちについて疑問を生じるようになる。松本では本懐を遂げて帰郷を待つ家族や親戚がいる。やがて彼は、あるひとつの決断を下す事になる、、、。

主演の宗左衛門には、岡田准一。剣術が弱い侍を至情溢れる魅力的な役柄で演じて見事というほかない。他に彼を取り巻く長屋の人々を是枝監督作品の常連、浅野忠信、夏川結衣、木村祐一、加瀬亮、寺島進、遠藤憲一などなどそうそうたるメンバー。秘かな恋心を抱く未亡人に宮沢りえ、そして古田新太、原田芳雄すげえーなあーこれって、驚くのはまだ早い。

この人たちの全てが魅力的なのである。映画が起承転結として、強弱として、盛り上がりと引き潮として、観客を魅了するだけでなくこの作品の最も素晴らしいのは一つのシーン、一つのシーンの見応え完成度が群を抜いている事だ。

観客としてラストに近づくにつれ、このままこの映画に何時までもひたっていたい、いや、この長屋の一員として暮らしてみたい。とおもってしまうことだ。木村祐一と古田新田と一緒にご飯を食べてみたくなることだ。宮沢りえに叱ってほしくなることだ。

あと3日、待遠しい。『花よりもなほ』どんなことしても観て欲しい。

『ラストデイズ』

2006-07-04 21:02:32 | Weblog
ガス・ヴァン・サントこの映画の監督で55歳になった。

つうことは『マイ・プライベート・アイダホ』って40歳のときの作品だったんだ。といささかノスタルジックな気分になっている。『グッド・ウィル・ハンティング』も好きな作品ではあるがマイ・プライベートは強烈なボディブローを受けてダウンした映画だった。主演のリバー・フェニックスは、人気絶頂の3年後にクスリの過剰摂取で亡くなった。彼のファンをはじめ世界中のマスコミは、様々に彼の死を伝え共演のキアヌ・リーブスは、その後長い間自らの世界に閉じこもっていたように思えた。もしかしたら未だキアヌは、その後遺症を引きずったままいまにいるように思えるのだが。

そして、翌年の1994年カート・コバーンの自殺と続いて行く。監督自身がインタビューで答えているようにこのカート・コバーンの死とリバー・フェニックスの死を類似したものとしてとらえている。そうであるなら、『ラストデイズ』は、リバー・フェニックスの13回忌として鎮魂の映画でもあるようだ。