今日は雨が全然降らなかったバンコク。出歩くにはいいのですが、本日は映画2本のハシゴで終わってしまいました。まず1本目は、ホテルからかなり離れた所にあるバンカピのザ・モールまで行って見たタイ映画『クン・パン(Khun Phan)』。ここのSFシネマシティは、なぜか他の映画館で上映が終わってしまったタイ映画や韓国映画を最後まで上映していることがよくあり、これまでにも2、3度タクシーを飛ばして行ったことがあります。いわば名画座的な役割をしてくれている場所、とでも言いましょうか、そのせいか映画料金も安く、都心部が250バーツ(750円)なのに対して、今回の『クン・パン』は140バーツ(510円)とかなり安くなっていました。でも、これは映画によって違うのかも知れません。
そんな『クン・パン』は、1940年から話が始まります。警部のクン・パンがある任務を帯びてやってきて、多くの伝説的盗賊たちと対峙する、というストーリーなのですが、日本軍人が出て来たり、盗賊たちも一癖も二癖もある奴らばかりで、殺されても死ななかったり、美女の盗賊がからんできたりと、何だかしっちゃかめっちゃかな物語でした。マカロニ・ウェスタンも意識した作りで、カッコつけが第一義みたいな映画のため、アクションシーンになると、スローモーションに音楽がかぶるというワンパターン。途中何度か寝落ちしてしまいました...。主人公のクン・パンには、日本でもお馴染みのアナンダ・エヴァリンハムが扮し、泥まみれになって&変な付け髭つけてがんばっていました。アナンダ・エヴァリンハムは今も人気者らしく、スカイトレインの各駅には右写真のようなセイコーの看板が。そのほか、『七人のマッハ!』(2004)のダン・チューポンも出ていたことをあとで知ったのですが、顔に入れ墨のある盗賊がそうだったのかも。予告編を付けておきます。
Khun Pan Trailer with Sub Title Official
そこからラームカムヘン駅へタクシーで移動し、エアポートトレイン、そしてスカイトレインと乗り継いで、行ったのはこちらもよく行くエカマイ駅近くのメジャー・シネプレックス・スクンビット。バンコクにはインド映画を常に上映しているシネコンが2館あるのですが、ここがその1つで、毎回ほぼ確実にインド映画が見られます。
ただ今上映中の作品は、ジョン・アブラハムとヴァルン・ダワンが刑事コンビを演じるバディもの『ズキューン(Dhishoom)』。監督はヴァルンの兄であるローヒト・ダワンで、これが第1回の監督作です。中東のある国で、クリケットのトーナメントが行われている最中に、著名クリケット選手でバットマンのヴィラージ(と書くと、誰がモデルかわかりますね)が行方不明になります。36時間後にはパキスタンとの試合が待っている、という状況の中、インドの外務大臣は凄腕の捜査官カビール(ジョン・アブラハム)を中東に派遣し、ヴィラージ選手発見に従事させることにしました。カビールが捜査の相棒として選んだのは、おっちょこちょいの新米インド人警官ジュナイド(ヴァルン・ダワン)。この2人、果たしてヴィラージ選手を無事に連れ戻せるのか...というのがストーリーです。これに、スリのインド人娘イシカー(ジャクリーン・フェルナンデス)がからむのですが、さらに、アクシャイ・クマール、ナルギス・ファクリー、パリニーティ・チョープラーら豪華ゲストも出演し、なかなか目の保養をさせてくれます。
お話はありがちな中東冒険譚なのですが、伏線の使い方もまずまず上手で、楽しめる作品となっています。ただ、ジョンとヴァルンのコンビが100%機能しているとは言えず、ヴァルンの空回り、ジョンのかっこつけすぎが目立つのが残念でした。一番おいしい役はアクシャイ・クマールで、ゲイの地元大物として登場し、笑わせてくれます。その他、誘拐犯のボスにアクシャイ・カンナー、手下にラーフル・デーウ、地元の情報通にヴィジャイ・ラーズなど、脇もしっかりした配役で手堅く固めてありました。細身になったパリニーティ・チョープラーが美しい、ラストのソング&ダンス・シーンを付けておきます。
JAANEMAN AAH Video Song | DISHOOM | Varun Dhawan| Parineeti Chopra | Latest Bollywood Song |T-Series
このメジャー・シネプレックス・スクンビットでは、続いてこんな作品が上映されるようです。予告編はこのほか、カトリーナ・カイフのダンスシーンが印象的な『Baar Baar Dekho(何度も見なさい)』のもかかっていました。リティク・ローシャン主演の『Mohenjo Daro(モヘンジョ・ダロ)』が一番の期待作ではありますが、予告編を見るたびに覚えるこの違和感、アーシュトーシュ・ゴーワーリカル監督、大丈夫ですか? 2500年前じゃ時代考証と言われても...で押し切れる作品になっていることを祈ります。
ほかに見た作品としては、韓国映画『アガシ(お嬢様)』が『The Handmaiden』として上映されているのを、サイアム・パラゴンの中にあるシネコンに見に行きました。韓国映画はあと1本、コン・ユ主演の『Train to Busan(釜山行き)』も上映中ですが、どちらの作品も夜8時台の上映しかなく、30分ぐらい続く予告やCFのあとに本編が始まるバンコクでは、見終わると11時過ぎになってしまいます。でも、パク・チャヌク監督の『アガシ』は、ハ・ジョンウが出ていることもあり、見に行ってみたのでした。
舞台は、1930年代、日本統治時代の朝鮮です。広大な屋敷にメイドとして雇われたスクヒ(キム・テリ)がやって来ますが、実は彼女は、このお屋敷の相続人であるお嬢様(キム・ミニ)をたらし込もうとする詐欺師”伯爵”(ハ・ジョンウ)が送り込んだ手先でした。メイド頭(キム・ヘスク)に案内され、美しいお嬢様と引き合わされたスクヒは、献身的に彼女に仕えます。伯爵は時々やってきてお嬢様に絵を教え、スクヒに指示を残していくのですが、やがてスクヒは、そのお屋敷に住むお嬢様の後見人(チョ・ジヌン)とお嬢様の間の秘密を知ってしまいます...。
The Handmaiden - Trailer (아가씨 예고편)
予告編ではわかりませんが、セリフの半分は日本語で、俳優たちはみな相当訓練したらしく、あまり違和感のない日本語を話しています。ただ、それ以外の”日本”は、時には”想像の中の日本”が勝りすぎて、見ていてがっかり。上に書いた”秘密”も、日本の艶書や浮世絵の春画にからむことなので、それを強調して日本統治時代の日本を腐敗したものとして描こうとしているのかと勘ぐりたくなりますが、デフォルメなのか単なる知識不足なのか、珍妙な描写が続きます。パク・チャヌク監督作品ということで期待して見たものの、過激な性描写もあってどっと疲れた作品でした。韓国では、キム・ミニとホン・サンス監督の不倫騒動もあってヒットしたようですが、日本公開はあるのでしょうか?
それから、もう1本、書いておきたいタイ映画を見ました。『Santi Vina(サンティとヴィナ)』という1954年の作品で、タイ映画としては初のカラー作品で、初めてカンヌ国際映画祭で上映された作品だとか。2年前に、ブリティッシュ・フィルム・インスティテュートが消失したとされていたこの映画のネガを見つけ、BFIやタイのフィルム・アーカイブの手で丁寧に修復されてカンヌで上映、このほどタイでの凱旋上映となった次第です。私が見たのはセントラル・ワールドというシネコンで、他のシネコンでも限定的な上映のようでしたが何カ所かで上映されていました。物語はざっとこんな感じです。
盲目で笛の上手な少年サンティは、幼い時からヴィナという女の子と仲良しで、長じて恋人同士となりますが、ヴィナの家族は猛反対。ヴィナを別の男に嫁がせてしまいます。サンティは幼い時から洞窟にある寺院の僧侶に預けられていましたが、ある時落石が起きて、僧侶と共に生き埋め状態になります。石で頭を打ったせいか、サンティは目が見えるようになったものの、僧侶は息を引き取ります。それを見たサンティは僧籍に入ることを決心し、「私、結婚した今でもあなたのことが好きなの」というヴィナを退けて、僧侶として生きていくのでした。
สันติ-วีณา Santi-Vina (1954) Official Trailer
予告編からも色の鮮やかさがおわかりいただけると思いますが、傷もまったくなく、ニュープリントのように仕上がっていました。実はこの『サンティとヴィナ』、撮影監督がラット・ペスタニーなのです。戦後のタイ映画の父とも目される人で、『地獄のホテル』(1957)や『黒いシルク』(1961)など、日本でも国際交流基金の映画祭などで上映されていますが、名前をローマナイズするとRatna Pestonjiとなり、インドがルーツのパールシーだとわかります。そんなわけで以前から追いかけている映画人なのですが、今回思いがけず『サンティとヴィナ』が見られて、たいそうありがたかったのでした。
このほか、タイ映画『Mahalai Tiang Kuen(真夜中の大学)』も見ましたが、ホラー・コメディでちょっぴり社会派という、下らない作品かと思ったら意外にラストがさわやかな映画だったりと、やっぱり映画は自分の目で見てみるまではわかりません。あともう1本、『釜山行き』が見られるといいのですが...。
さすがはcinetamaさん、The Mall Bangkapi まで映画を見に行かれるのですね。
確かに、中心街で上映終了となった作品でも郊外だと続映したりしていたりするので、私も行こうとは考えますが、行き帰りの時間を考えると、中心街の映画館で他の映画を見ることにしてしまいます。
エカマイのMajorCinelexは、私も良く行きます。やはり最近では、インド映画を夜の時間帯でも必ず上映しているので見に行きます。
続報楽しみにしています。
こちらこそ、さすがはエドモントさん、ちゃんとバンカピの映画館をチェックしていらしたのですね。
今回は、もう見る作品がなくなり、行っちゃえ、とばかりタクシー代200バーツというぜいたくをしました。
日本で言うと、「見たい日本映画を立川のシネコンでだけやっているから見に行く」というYOU、みたいなものですね。
以前、バンコク在住の人に言ったら、やはりあきれられました。
というわけで、バンコク映画ライフは終了なのですが、別件「博物館めぐり」もアップしますので、ご覧になって下さいね。