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アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

『ミッション・マンガル』ミッション4:贅沢なキャスティングを追求せよ!

2020-12-17 | インド映画

『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打ち上げ計画』公開まで、あと3週間。秒読みにはまだちょっと早いので、今のうちに見どころをガンガンご紹介してしまいましょう。本日の追求ポイントは、これまでご紹介したアクシャイ・クマール、ヴィディヤ・バラン以外にも、主演級のスターがゴロゴロいる本作の異常さです。普通インド映画は、主演級大物スターの起用はせいぜい2人。物語によっては1人だけで全編を担う場合もあります。アクシャイ・クマール作品で言うと、『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)ではアクシャイとソーナム・カプールの2人が主演、『KESARI/ケサリ』(2019)では主演はアクシャイ1人で、それを補ってパリニーティ・チョープラーがゲスト出演、という具合でした。ところが『ミッション・マンガル』では、アクシャイとヴィディヤのほか、チームメンバー役のタープスィー・パンヌー、ソーナークシー・シンハー、ニティヤ・メーナンの3女優も、いつもは主役を演じている人たちなんですね。何てもったいないキャスティングだ! ギャラも高かったろうに。その理由は後日述べるとして、3人の主演級女優の紹介をサクッとしておきましょう。その前に、いつものように作品のデータを付けておきます。

『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打ち上げ計画』  公式サイト
 2019年/インド/ヒンディー語/130分/原題:Mission Mangal/字幕:井出裕子
 監督:ジャガン・シャクティ
 出演:アクシャイ・クマール、ヴィディヤ・バラン(ヴィディヤー・バーラン)、タープスィー・パンヌー、ソーナークシー・シンハー、クリティ・クルハーリー(キールティ・クルハリ?)、シャルマン・ジョシ(ジョーシー)
  配給:アット エンタテインメント
1月8日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開

タープスィー・パンヌー(クリティカ・アガルワル役)

© 2019 FOX STAR STUDIOS A DIVISION OF STAR INDIA PRIVATE
LIMITED AND CAPE OF GOOD FILMS LLP, ALL RIGHTS RESERVED.

タープスィー・パンヌーのサリー姿は珍しいかも知れません。今回彼女が扮するクリティカは、航法および通信分野が専門のエンジニア。私生活では軍人の妻で、こう書くと固いというかしっかり者のイメージなんですが、現在習得中の自動車運転の現場を覗いて見ると、あわて者で粗忽系の女性のようです。こんな役、タープスィーには珍しいですね。1987年8月1日にニューデリーでシク教徒の一家に生まれたタープスィーは、大学でコンピューター工学を学び、ソフトウェア・エンジニアの資格も持っているという正真正銘のリケジョです。モデルを経て映画界に入り、2010年にテルグ語の映画でデビュー。以後、テルグ語、タミル語、マラヤーラム語など南インドの映画に次々と出演していきます。ヒンディー語映画デビューは2013年の『Chashe Buddoor(邪視よ去れ)』で、コメディ映画でした。

The poster features Akshay Kumar at left holding a pistol and taking cover behind a wall. At right appears title of the film, vertically. Pinkmovieposter.jpg Mulk - 2018 Movie Poster.jpg

そしてタープスィーがその才能の片鱗を見せるのが、ヒンディー語映画出演第2作の『BABY』(2015/IFFJで上映)。アクシャイ・クマール率いる特命エージェント部隊の一員として、アクションを含むクールな演技を見せ、短い出番ながら強い印象を残しました。そして、翌年の『ピンク』で、アミターブ・バッチャンを相手に堂々たる演技を見せて、一躍トップ女優の仲間入りを果たしたのです。以後、南インド映画にも出演を続けながら、個性的な女性役ならタープスィーという評価が定着したボリウッドでは、ラーナー・ダッグバーティ主演の『インパクト・クラッシュ』(2017)や、リシ・カプールと共演した『Mulk(祖国)』(2018)などに出演。『ミッション・マンガル』の後も、『Saand Ki Aankh(命中)』(2019)や『Thappad(平手打ち)』(2020)と、ユニークな作品での主演が続いています。コメディ映画にもいろいろ出ているので、今回のあわて者女子役もそつなくこなしているのですが、何とももったいない使い方ではあります。

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ソーナークシー・シンハー(エカ・ガンディー役)

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日本では、デビュー作の『ダバング 大胆不敵』(2010)が華々しく公開されたので、顔を憶えている人も多いはず。1987年6月2日生まれのソーナークシー・シンハーの父は、シャトルガン・シンハーという、1970・80年代にはトップスターだった大物俳優で、のちには国会議員にもなった人。その娘のデビュー作、というので、サルマーン・カーンの相手役に大抜擢されてのデビューでした。しかも、『ダバング』はスーパーヒット。これ1作だけで、ソーナークシーはトップ女優の仲間入りを果たしたのです。以後、文芸作からコメディまで、たくさんの作品で堅実な演技を見せてくれています。アクシャイ・クマールと組んでヒットさせた『Rowdy Rathore(乱暴者ラートゥル)』(2012)や、『略奪者』(2013/IFFJで上映)、『アキラ』(2016/IFFJで上映)等々、いろんな役柄が瞬時に浮かんできます。

ダバング 大胆不敵 [DVD] Lootera poster.jpg Akira poster.jpg

そのソーナークシーの今回の役は、ドライな現代っ子エカ・ガンディー。推進工学系のエンジニアで上昇志向が強く、ISROで働くのも、いつかアメリカのNASAで勤務するためのワンステップと割り切っています。私生活では、ボーイフレンドとベッドインしても「はいはい、朝よ。さっさと帰って」という感じでとってもドライ。常に洋服姿で、タバコをふかし、インドでの上映なら「喫煙は健康に有害です」という警告が出まくるような女性です。しかし、カッコいい! 仕事もバリバリこなす姿は、これまで伝統的な美女役が多かったソーナークシーの別の一面を見せてくれて、非常に見応えがあります。なお、「ガンディー」という名前はインド独立の父と言われたマハートマー・ガーンディー(正確に音引きを付けるとこちら)と同じ姓ですが、グジャラート州には割とよくある名前なんだそうです。

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ニティヤー・メーナン(ヴァルシャー・ピライ役)

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最後は軽量探査機など船体設計の専門家ヴァルシャー・ピライ役のニティヤー・メーナンです。タミル語やマラヤーラム語映画のトップ女優の1人であるニティヤーであることから、役柄もケーララ州の出身者となっています。結婚して2、3年経つのでしょうか、夫とはラブラブで、工夫満載の楽しい住居に住んでいるのですが、唯一の悩みは姑から「子供はまだなの?」とイヤミを言われること。それが、火星プロジェクトに加わった途端に妊娠が判明、もちろん退職するなどとは考えないのですが、いろんな配慮が必要になってきて、チームをまとめるタラは頭を抱えます。ま、もちろん、終わり良ければすべて良し、になるんですけどね。

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ニティヤー・メーナンは1988年4月8日生まれで、『ミッション・マンガル』の主要舞台となっているベンガルール出身。でも一家はケーララ州出身(「マラヤーリー」と言います)なので、ニティヤーはマラヤーラム語とカンナダ語が飛び交う環境で育ちます。カレッジ卒業後最初はジャーナリストを志し、やがて映画界志望に方向転換してプネーの映画・TV研究所のカメラマンコースに入るのですが、卒業時にニティヤーの才能を見抜いた人がいて、その勧めで演技の世界へ。デビュー作は2006年のカンナダ語映画で、主役ではなく脇役でした。人気が高まってきたのは2010年ぐらいでしょうか、2012年のマラヤーラム語映画ヒット作『ウスタード・ホテル』以前から名前は知っていたので、その頃からヒロイン役として注目されるようになってきたのでは、と思います。ニティヤーと親しくお付き合い、と言っても字幕を担当したという意味ですが、したのは、マニラトナム監督作『O.K. Darling』(2015)が東京国際映画祭で上映された時で、『ウスタード・ホテル』と同じくドゥルカル・サルマーンを相手に自立した女性を演じて、とても魅力的でした。南インド諸言語の映画ではたくさん主演作のあるニティヤーですが、ヒンディー語映画は『ミッション・マンガル』がデビュー作。あの美しい瞳にくらくらっとした北インドの若者がいっぱい出たに違いありません。

とまあ、もったいない使われ方をされている美女3人をご紹介しましたが、さすがベテランと言ってもいい女優さんたち、きっちりと「いい仕事してますねえ」となっています。3人の演技をお楽しみに、劇場までお運び下さいね。最後に彼女たちの魅力とお仕事ぶりがよくわかるソングシーン「Dil Mein Mars Hai(ディル・メーン・マース・ハィ/心には火星がいる)」を付けておきます。

Dil Mein Mars Hai - Full Video | Mission Mangal | Akshay | Vidya | Sonakshi | Taapsee | Benny, Vibha

 


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