アジア映画巡礼

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ファラー・カーン監督インタビュー~宝塚公演「オーム・シャンティ・オーム」で来日(上)

2017-07-27 | インド映画

先日もちょっとお伝えしたように、『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(2007)のファラー・カーン監督が、宝塚星組公演「オーム・シャンティ・オーム~恋する輪廻~」のために来日しました。監督の来日は、映画公開時と合わせて2回目となります。関西で舞台を見て、取材を受けたあとファラー・カーン監督は東京に移動、忙しいスケジュールを縫ってインタビューに応じて下さいました。アレンジして下さったのは関西のアジア映画社で、東京ではマサラツアーズのスタッフの方がいろいろコーディネートして下さり、映画ジャーナリストの大高宏雄氏と共にインタビューをさせていただくことができました。アジア映画社様、マサラツアーズ様、この場を借りて御礼申し上げます。


インタビューの開始時間は何と午前9時。「早起きでいらっしゃいますねー」と感心したら、さわやかなお顔のファラー・カーン監督は「あら、そう? 私、4時半頃には起きているのよ。もう朝食も済ませたし」とおっしゃり、びっくりしました。映画人って、大体が宵っ張りの朝寝坊なのに、健康的ですね。お肌もつやつやとしていて若々しく、いろんな気配りもして下さるし、とっても素敵な方でした。インタビューの場はこんな感じで、右からファラー・カーン監督、大高氏、そして通訳のギーターさんです。


 

:今回初めて、宝塚星組の公演「オーム・シャンティ・オーム~恋する輪廻~」をご覧になってみていかがでした? 演じているのがみんな女性なので驚かれたでしょう?

監督:そうなのよ、驚いたわ。男性が女性を演じる、というのはインドでもあるんだけど、例えば伝統演劇などでね。女性だけで演じられる劇というのは世界で初めて見たわ。でも、見ていてとてもハッピーな気分にさせられた。最初は戸惑ったんだけど、2、3分見ているともう女性だけだなんて全然思わなくなって、男役は男性そのものに見えてきたの。シャー・ルク・カーンの役(オーム:紅ゆずる)をやった人とか、アルジュン・ラームパールの役(ムケーシュ:七海ひろき)の人とかね。それにヒロイン(シャンティ:綺咲愛里)役の人も素晴らしかったわ。男役の人は本当にファンタスティックでセクシーで、見ていてすごいなあと思ったの。あれでは、女性観客も惚れるわよね。

Q:ところで、映画『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(2007)の元々のアイディアは、あの中でも使われていた映画『Karz(借り)』(1980)からですか?

監督:ううん、違うの。私が振り付けを担当したブロードウェイ・ミュージカル、『ボンベイ・ドリームス』(2002年初演)がきっかけなのよ。素晴らしい舞台だったけど、物語は、その他大勢の脇役俳優が見いだされてスーパースターになっていくストーリーでしょ。現実にはそんなこと無理よね。それで映画では、脇役俳優が死んで大スターの息子に生まれかわり、スーパースターになるお話にしたの。ムンバイの映画界は一種の帝国みたいなところがあって、有名スターの息子、ヒロインの子供といった人たちが次々とスターを継承してきてるでしょ。まるで王家、ロイヤル・ファミリーみたいで、残念ながらスターの血を引かない人にはほとんどチャンスはないのよ。
 『ボンベイ・ドリームス』の振り付けをしたのがきっかけて、私は脇役俳優のお話を一気に書き上げたのだけど、それが映画を作る5年前。脇役俳優が死んで生まれかわり、前世のことを思い出して復讐を遂げるお話を映画化するにあたって、私は映画の中にいっぱい、過去の映画に対するオマージュを入れることにしたの。そもそも、『Karz(借り)』の元ネタはハリウッド映画『リインカーネーション』(1977年/原題:The Reincarnation of Peter Proud)なんですものね。

:そうなんですか!

監督:そうなのよ、昔は映画を作る時、アイディアに困るとほかの映画からいろいろイタダキをしてたでしょ。『Karz(借り)』はほぼ全編が、『リインカーネーション』のマネよ。ただし、それにエンターテインメントを詰め込んで豪華にし、ソング&ダンスシーンと感情を揺さぶる部分を付け加えてあるけれどね。中でも主人公が母親に会いに行くシーンはとても印象的で、彼が母親と会うと、すぐに母親は息子を見分けるのよ。
 ただ、『リインカーネーション』では主人公と死んだ息子役を別の人が演じていたし、『Karz(借り)』もそうだったでしょ。リシ・カプールが前世を思い出す役だけど、殺された方はラージ・キランが演じていた。それが観客にはいまひとつすんなりと理解できなくて、それで『Karz(借り)』は大ヒットにはならなかったの。だから、『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』では同じ人物が演じることにしたのよ。


:あなたの映画ではいつもエンディングがとぴっきり楽しいのですが、あの素晴らしいアイディアはどうやって得ているのですか?

監督:あれも、『ボンベイ・ドリームス』が元になったの。初日の夜のステージで、最後にカーテンコールがあったんだけど、全員がステージに登場したの。それも、キャストが全員なのはもちろんだけど、作曲のA.R.ラフマーンを始め、スタッフも裏方さんもみんながステージに呼ばれたのよ。あら、このアイディアすごくいいわ、と思った私は、最初の作品『Main Hoon Na(僕がついてる)』(2004)を撮った時に使ってみて、以後もずっとこのスタイルを踏襲しているの。
 というのも、私自身も裏方のスタッフとして長い間やってきたでしょ。もちろん私は顔も憶えてもらえた稀な裏方で、みんなは「ほら、彼女が振り付け師のファラー・カーンよ」と言ってくれるけど、ほかのカメラマンやスタッフは誰も顔を知らないのよね。だから私は、しんどい仕事をしているスタッフ--スポット・ボーイ(付き人)とか衣裳係にもスクリーンに出てもらうようにしたの。たった5秒かそこらなんだけど、彼らにとってはとても嬉しいわけ。『Main Hoon Na(僕がついてる)』のエンドロールの歌のシーンはみんなが気に入ってくれて、以後、私のトレード・マークになったの。今ではスタッフも、私と仕事をしたらエンドロールでスクリーンに登場できると知っているわ(笑)。

:本当に、毎作品趣向がこらされていますね。

監督:『恋する輪廻~オーム・シャンティ・オーム』の時は映画界の話だったから、映画賞の授賞式のレッドカーペットにしたの。『Happy New Year(ハッピー・ニュー・イヤー)』(2014)の時はダンス・コンテストが舞台だから、みんなにもダンスを競ってもらったしね。

:あなたが審査員で、採点ボードを掲げていましたね。『恋する輪廻~オーム・シャンティ・オーム』のエンドロールでは、アルジュン・ラームパールがウィンクをしますよね。あれがとっても素敵!というファンが多かったです。

監督:私も、アルジュン・ラームパールが好きよ~。それに、宝塚でムケーシュ役をやった人も、とってもよかったわね。
 こんなエンドロールを作るのは私だけで、今ではトレードマークになっているの。大体インドでは、エンドロールが流れ出すとみんな席を立って、映画館を出て行ってしまう。誰がどんな役をやったのか、どんな仕事をしたのか、誰もエンドロールを見て知ろうともしない。でも、私の作品だけは、みんながエンドロールを最後まで見てくれるの。スタッフにとっても、その家族にとっても、とても嬉しいことなのよね。40年ぐらい映画界で働いている父親を、初めてスクリーンで見ることになるんですもの。

:スタッフも俳優も、みんなファミリーという感じなんですね。

監督:その通りよ。一緒に映画を作っている人は、みんな私の家族なの。エンドロールは2、3日かかって撮るんだけど、普段はタキシードなど着ない裏方の人がみんな着飾って出演して、お祭り騒ぎになるのよ。

:最近では、監督の実際のご家族も出演したりしていますよね。

監督:ああ、うちの三つ子の子供たちね。『Happy New Year(ハッピー・ニュー・イヤー)』では、シャー・ルクも自分の息子を出演させたのよ、知ってた?

:アブラーム(アブラハム)ちゃんですね。とてもかわいかったです。(つづく)



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