アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

2020 FILMeX & TIFF<DAY 2>

2020-10-31 | アジア映画全般

2日目もフィルメックス一筋?です。本日は、特別招待作品3本を見せていただきました。中国映画『海が青くなるまで泳ぐ』、韓国映画『逃げた女』、そして香港映画『七人楽隊』です。

『海が青くなるまで泳ぐ』

2020/中国/中国語/111分/ドキュメンタリー/原題:一直游到海水変藍/英語題:Swimming Out Till The Sea Turns Blue 
 監督:ジャ・ジャンクー(JIA Zhang-ke/賈樟柯)
 出演:ジャ・ピンワー(賈平凹)、ユイ・ホァ(余華)、リャン・ホン(梁鴻)

ジャ・ジャンクー監督が故郷の山西省汾陽で2019年5月に開催した文学フォーラムを背景に、誕生したドキュメンタリー映画です。この時には30数人の作家が、山西省だけでなく、いろんな地方から参加したとのことですが、その中からジャ・ピンワー(賈平凹)、ユイ・ホァ(余華)、リャン・ホン(梁鴻)という3人の作家、そして、すでに亡くなったマー・ホン(馬烽)という4人の作家を選び、その来し方を辿った作品となっています。どの人のエピソードも面白いのですが、特に映画『活きる』の原作となった「活著」を書いた余華の語る彼のデビュー当時のエピソードは非常に面白く、細かい金銭のやり取りなども赤裸々に語られていて、とても人間くさかったです。

この映画の原題も、余華がふともらした言葉から取られたもので、幼い時浙江省の海塩という所で育った彼は、よく海で泳いでいたそうです。「でも、僕らは海の水が黄色いと思っていたんだよね。その海が青くなるまで泳ぎ続けてみたいと思ったんだ」という余華の言葉「一直游到海水変藍(海水が青い色に変わるところまでずっと泳いでいく)」がタイトルに使われたのですが、人の生き方を表しているような言葉にも聞こえますね。また、ただ一人の女性作家リャン・ホン(梁鴻)のパートも家庭背景が驚くようなものだったりと、他の2人の作家の部分も含めて、広がりのあるドキュメンタリーになっていました。細かく章立てになっているのが少々うるさい感じがしたりもしますが、これらの作家の作品と親しんでいたら、さらに興味を持って見られたのにな、と自分の不勉強を残念に思いました。特に中国文学のお好きな方には、赤丸オススメ作品です。

終了後、ジャ・ジャンクーとのオンラインQ&Aがありましたが、音声もしっかり聞こえ、リアルなQ&Aとあまり変わりませんでした。ジャ・ジャンクー監督のサングラスがなければベストだったんですが、後ろには日本公開版ポスターらしきものも飾ってあるし、日本の観客向けに配慮してくれたんだな、と嬉しいQ&Aでした。ちょっとピンボケ写真ですが、こんな感じでした。左上のQRコードは、これを読み取れば質問が書き込める画面が出てきて、それが司会の市山さんのもとに届く、という仕組みです。これからQ&Aに参加なさる方は、ぜひトライしてみて下さい。

   

 

『逃げた女』

2020/韓国/韓国語/77分/原題:/英語題:The Woman Who Ran
 監督:ホン・サンス(HONG Sang-soo)
 出演:キム・ミニ、ソ・ヨンファ、ソン・ソンミ、キム・セビョク、イ・ユンミ、クォン・ヘヒョ

キム・ミニ扮する扮する結婚5年目の女性が、夫の出張中久しぶりに先輩や友人を訪ねていく、というストーリーで、特に事件らしい事件は起きないのですが、訪ねた先でささいな出来事が起こり、それが彼女にも何からの影響を与える...といった作品です。いつものホン・サンスの感じではあるのですが、なぜかズームインする撮り方が思い出したように出てきて、何か変な感じでした。キム・ミニの魅力がよくわかる作品で、ホン・サンス監督の目が向くのも納得、ということを確認しました。

 

『七人楽隊』
2020/香港/広東語/113分/原題:七人樂隊/英語題:Septet: The Story of Hong Kong 
 監督:アン・ホイ(Ann HUI/許鞍華)、ジョニー・トー(Johnnie TO/杜琪峯)、ツイ・ハーク(TSUI Hark/徐克)、サモ・ハン(Sammo HUNG/洪金寶)、ユエン・ウーピン(YUEN Wo Ping/袁和平)、リンゴ・ラム(Ringo LAM/林嶺東)、パトリック・タム(Patrick TAM/譚家明)

香港のベテラン監督7人による、オムニバス短編集という作品です。共通のテーマは「香港」で、1950年代から近未来までの香港を描いていきます。最後に監督の名前が出てくるため、作品を見ていて「これは○○監督だ!」と当てるのも楽しいので、ここでは詳しくタイトルやストーリーを解説しないことにします。タイトルも、最初に出てくるものもあれば、最後に登場するものもあり、で、バレると面白みが半減するため、またあとで追記でお知らせしましょう。上と下に、順不同で監督たちの写真を載せましたので、想像してみて下さいね。

ちなみに、私は最初の3作目までは「ビンゴ!」だったのですが、4作目から調子が狂い...でした。なお、上の写真の最後、リンゴ・ラム監督は2018年12月29日に63歳という若さで急逝、この映画が遺作となりました。ご冥福をお祈りします。それから、アン・ホイ監督の顔写真はなぜかサイズが小さくて、下につけておくことにします。

劇中にもこれらの監督は出演したりしていて、遊び心満載で作ったベテランの作品、という楽しさに満ちています。『十年』のような批評精神が薄かったのはちょい残念でしたが、香港映画好きならMust See!の作品です。今後の上映予定等は、公式サイトをどうぞ。私は明日からは、主として六本木のTIFF会場に出向きますが、フィルメックスもあとまだ4作品見る予定なので、まだまだ「有楽町で会いましょう」なのでした。

 


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