アジア映画巡礼

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インド映画『響け!情熱のムリダンガム』の見どころ・聞きどころ②カルナータカ音楽

2022-09-03 | インド映画

10月1日(土)公開予定のインド、タミル語映画『響け!情熱のムリダンガム』には、南インド古典音楽のファクターがいっぱい出て来ます。まず、タイトルにある「ムリダンガム」が楽器の名前ですね。予告編にも初っぱなから何度も登場しますので、まず予告編を見ていただいてから、「演奏楽器と見どころ・聞きどころ」のお話をしましょう。

映画『響け! 情熱のムリダンガム』予告編 2022.10.1公開

 

この作品で使われている古典音楽は、すべて南インドのカルナータカ音楽です。インドの古典音楽の系統は2つあり、北インドの古典音楽はヒンドゥスターニー音楽と呼ばれていて、西から伝播したイスラーム文化の影響を受けて発達したものです。カルナータカ音楽(以下、「南」と表現)とヒンドゥスターニー音楽(以下、「北」と表現)の違いはいろいろあるのですが、大きな点は、使用する演奏楽器が違うことです。「北」の弦楽器のメインは日本でもお馴染みのシタール、伴奏の打楽器はタブラという2つで一組の太鼓となります。一方、「南」の弦楽器のメインはヴィーナ(下左。画像はいずれもWikiより)で、伴奏の打楽器のメインはムリダンガム(下右)となります。

  Wiki-mridangam.jpg

『響け!情熱のムリダンガム』での舞台公演シーンはすべて声楽だったので、ヴィーナは登場しませんが、予告編の30秒ぐらいのところに出てくる声楽公演シーンを見てみましょう。中央に声楽家シッキル・グルチャラン(演技が達者なので、初めに見た時は俳優が吹き替えで声楽家を演じているのかと思いました。個人サイトはこちらです)がいて、その右に立てた弦楽器を弾いている人がいますが、あれはドローン(持続音)を流すタンプーラという楽器で、この楽器は「南」でも「北」でも使われます。さらにその右にはバイオリンを弾く人が座っていますが、この場合は伴奏楽器になるものの、バイオリンは「南」ではメインの演奏楽器となることもあります。西洋風のあごに挟んで水平に持ち上げる弾き方ではなく、だらりと下げた弾き方が面白いですね。そして、声楽家とムリダンガムの間に座っている人は、小さな太鼓を持っています。カンジラ(下写真)だと思うのですが、側面に付いている小さなシンバルがはっきりとは見えませんね。でも2回目の演奏シーンでは、別の奏者がムリダンガムとサワール・ジャワーブ(「質問と答え」の意味で、演奏者間での演奏応酬のことです)をして見せた時にシンバルが写るので、カンジラだと思います。

Kanjira.jpg

大体こんなところが、登場する古典音楽楽器でしょうか。あとは、バジャン(宗教歌)を歌いながら通りを行く信者たちの中に、ハルモニアム(ハルモニウム)を肩からつるして演奏している人もいましたっけ。ハルモニアムも「北」と「南」の両方で使われる楽器で、簡易オルガンというか、手で空気を送って鍵盤を鳴らす楽器で、いろいろ便利に使われます。

  

ムリダンガムだけでなく、他の楽器にもぜひご注目下さいね。そうそう後半部で、主人公のピーター(G.V.プラカーシュ・クマール)がリズムを探す旅に出てインド中を巡るシーンがあるのですが、あのシーンで登場する種々の楽器も、民族音楽楽器であると共に古典音楽楽器と言っていいようなものが多かったです。インドの音楽にいっぱい触れられる『響け!情熱のムリダンガム』、音楽好きの方は二度、三度と見てみて下さい!  最後に、英語字幕ですがリズムを捜す旅の歌のシーンを付けておきましょう。おお、あらためて見たら、楽器が山ほど登場しています。カシミールのシーンでは弦楽器ルバーブ、壺の打楽器ガタム、太鼓はドンバクかな? あと、後ろの方にいる弦楽器は何だろう? 興味のある方はご自分で調べてみて、コメントで教えて下さいね。

Sarvam Thaala Mayam - Full Song Video ( Tamil ) | A R Rahman | GV Prakash | JioStudios

 

 本作の公式サイトはこちらです。公式サイトの最後の方に、関連イベント等が掲載されていますので、ぜひチェックしてみて下さいね。公開は10月1日(土)シアター・イメージフォーラムです。今回、公式サイトの最後の方をチェックしてみて、クラウドファンディングへの送金をどうやら自分が失敗したらしいと気づきました。かなり早い時期に申し込んだつもりだったのに、まったく何の連絡も来ず、レポートが来るはずじゃなかったの? 変だなあ、とずっと思っていたのです。配給のテンドラルさん、ドジでごめんなさい! お詫びに、一層力を入れて宣伝しますね!! 

イメフォさん、今回もYouTube配信で、「レストランなんどり訪問」「南インド古典音楽について小尾淳先生に聞く」とかの動画をぜひぜひ流して下さいませ~~~。

 


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