4月11日(金)から2本のインド映画が公開されます。1本はすでにちょこっとご紹介したドキュメンタリー映画『RRR:ビハインド&ビヨンド』です。公開が始まってからですが、『RRR』(2022)のS.S.ラージャマウリ監督の来日と舞台挨拶も予定されており、また、2週間という限定上映もあって、皆さん劇場に駆けつけて下さると思います。予告編を付けておきます。
『RRR:ビハインド&ビヨンド』本予告
そしてもう1本が、タミル語映画『バーラ先生の特別授業』(2023)です。このブログでは、2023年2月のインド旅行中に見た時にご紹介していますが、今回日本語字幕でぜひ見ていただきたい作品なので、少し詳しくお伝えしましょう。まずは映画のデータをどうぞ。
『バーラ先生の特別授業』 公式サイト
2023年/インド/タミル語/134分/字幕:中島可愛・字幕監修:小尾淳/原題:Vaathi
監督:ヴェンキー・アトゥルーリ
出演:ダヌシュ、サムユクタ、サムドラカニ、タニケッラ・バラニ
配給:SPACEBOX
※4月11日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開
©Fortune Four Cinemas ©Sithara Entertainments ©Srikara Studios
バーラ先生のエピソードが現在の高校生たちに明らかになったのは、祖父が経営していたビデオ店を片付けようとしていたアビラームと友人たちが、棚の奥から録画ビデオと貸し出し票を見つけたことから。当初ポルノビデオかと喜んだ彼らでしたが、写っていたのは一人の青年が数学の授業をしている動画。不思議に思った彼らは、貸し出し票に書かれていた名前A.M.クマールを頼りに40㎞離れた町に行って調べ、この人物が現在は県の行政長官だと知ります。「長官が授業? 県庁所在地に行ってみよう」そして、少年たちに貸し出し票を見せられた行政長官は、執務室に掲げてあった写真を示しながら、恩師のバーラ先生(ダヌシュ)について語り始めます....。
1993年、インドは1991年から経済開放政策に舵を切り、その発展を見越して教育がビジネスになろうとしていました。中でも私学経営者のティルパティ(サムドラカニ)は金儲けに貪欲で、公立校はみな閉鎖し、自分が経営する私学に生徒を囲い込もうと強引な手をいろいろ使っていました。そんな中、公立校の教員採用試験を受けて、チョーワラムに赴任してきたのがバーラことバーラムルガン(ダヌシュ)と2人の男性教師でした。チョーワラムの学校では大歓迎を受け、美人の女性教師ミーナークシ(サムユクタ)もいるので気を良くしたバーラたち3人でしたが、初日が過ぎると生徒たちは誰も学校に来なくなります。バーラが各人の家を回ってみると、みんな家計を助けて働いていました。バーラは彼らが学校に来られるよう、心を砕きます。
バーラの働きかけて学校に来始めた子供たちですが、カースト意識が残り「一緒には座れない」と抵抗したり、問題続出でした。やっと授業が軌道に乗り、学内整備も終わって生徒たちがいい成績を出すようになると、今度はティルパティが乗り込んできます。そして、バーラ先生は、本当の敵は誰かを知るのでした....。
©Fortune Four Cinemas ©Sithara Entertainments ©Srikara Studios
コメディ、そしてダヌシュのアクションも織り込みながら、バーラ先生の果敢な挑戦が詳しく描かれます。ダヌシュの無敵の跳びけりはちょっと教師にはそぐわないですが、授業への情熱と次々出てくるアイディアは面白くて、見る者の心をがっちり掴んでしまいます。実話に基づいている、とのことですが、映画的な脚色も上手に付けてあって、手に汗握ったり、笑ったり、感心したりと、2時間14分という短い尺であっても十二分に楽しませてくれます。そのためか、地味なキャストと地味なストーリーながら、ヒットの目安である100カロール(10万)ルピーを見事に超えました。ぜひ、ご覧になってみて下さい。
©Fortune Four Cinemas ©Sithara Entertainments ©Srikara Studios
ヒンディー語映画で、リティク・ローシャンが主演した『スーパー30 アーナンド先生の教室』(2019)と共通するものがありますが、『スーパー30』は予備校が舞台で『バーラ先生の特別授業』は公立校と私立校という学校自体が舞台となります。でも、どちらも理科系の人材育成が描かれているのは、いかにもインドらしいですね。最後に予告編を付けておきます。ダヌシュの魅力の一端を、チラとご覧下さい。
映画『バーラ先生の特別授業』予告編