アジア映画巡礼

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国立映画アーカイブで香港映画の大回顧上映開催

2021-12-05 | 香港映画

今年、一番注目を浴びたのは香港映画かも知れません。特に香港での政治闘争を描いたドキュメンタリー映画『理大囲城』と『時代革命』の2本は、大きな話題となりました。そして来年早々には、香港映画史を概観する特集上映が、国立映画アーカイブで敢行されます。バラエティーに富んだ21本の作品群からは、香港映画の発展の歴史が辿れるばかりでなく、その中身の豊かさがビンビン伝わってきます。今の時期に見ると、どれだけ豊かな香港文化が今、破壊されつつあるのかがよくわかります。以下、映画アーカイブの公式サイト情報を引き写し、Cinetamaがコメントを入れる形で紹介していきます。画像はCinetamaの手元にあったもので、香港国際映画祭などで提供を受けキープしておいたものや、ソフトのカヴァーなどから取りました。そのうち案内チラシが出ると思うので、またご紹介します。

「香港映画発展史探究」 

――ユニークな発展を遂げてきた香港映画の歴史を回顧する企画。香港電影資料館所蔵作品を中心に、代表作や復元作品を21プログラム上映します――

国立映画アーカイブでは、香港電影資料館の特別協力により香港映画の歴史を回顧する特集上映「香港映画発展史探究」(1/4~1/30)を開催します。本企画は、戦前の社会派作品『女性の光』(1937)から 1997 年の中国返還を題材とした『花火降る夏』(1998)
まで、香港映画の軌跡をたどり各時代の代表作 21 本を上映します。日本では未上映または上映機会の少ない粤劇(広東オペラ)の映画化や文芸映画、メロドラマ、また“香港ニューウェーブ”の知られざる作品など、香港映画を形作ってきた豊かな水脈を発見する機会になることでしょう。

[会期] 2022 年 1 月 4 日(火)-1 月 30 日(日)※月曜休館
[会場] 国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU(2 階)

主催:国立映画アーカイブ 特別協力:康樂及文化事務署香港電影資料館
   HP / お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
定員:後日 HP にて発表(各回入替制・全席指定席)
チケット:一般:520 円/高校・大学生・65 歳以上:310 円/小・中学生:100 円/
障害者(付添者は原則 1 名)、キャンパスメンバーズ:無料(手数料のみかかります)
※12 月 27 日(月)以降、毎週火曜日 10:00am より、チケットぴあにて翌週(火~日)上映回の前売指定席券(全席指定席)を販売します(初週のみ月曜日の 12 月 27 日に発売)。[P コード:551-747]
※館内でのチケットの販売・発券はありません。

【上映21作品一覧】
1 『女性の光』
 原題:女性之光、製作年:1937 年、監督:高梨痕(ガオ・リーヘン)
 …女性の自立をテーマにした先駆的な広東語現代劇。日本初上映。

2 『秘めたる想い』
 原題:長相思、製作年:1947 年、監督:何兆璋(ホー・ジャオジャン)
 …上海映画の大スター周璇(チョウ・シュアン)主演のメロドラマ。日本初上映。
Cinetamaより~周璇は当時のトップ女優兼歌手。日中戦争時の上海を舞台にした本作でも、彼女の歌声がたっぷり聞けます。

3 『黄飛鴻正伝 鞭風滅燭の巻[修復版](ウォン・フェイホンせいでん べんぷうめっしょくのまき)』
 原題:黃飛鴻正傳又名鞭風滅燭、製作年:1949 年、監督:胡鵬(ウー・パン)
 …香港映画を代表するヒーロー・黄飛鴻の初映画化。關德興(クワン・タッヘン)主演。日本初上映。
Cinetamaより~關德興主演の黃飛鴻(ウォン・フェイホン)シリーズは77本作られたとのことで、まさに黃飛鴻役者と言っても過言ではありません。のちの李連杰(ジェット・リー)の黄飛鴻シリーズに比べると、アクションは少々物足りないかも知れませんが、腰を落とした得意のポーズなど魅力的です。

4 『寒い夜』
 原題:寒夜、製作年:1955 年、監督:李晨風(レイ・サンフォン)
 …中国現代文学の代表的作家・巴金(ぱきん)の代表作を映画化した広東語文芸ドラマ。日本初上映。
Cinetamaより~主演は当時の広東語映画の人気スターで、「華南影帝」と呼ばれた呉楚帆と、生真面目な役柄が多かった李清、そして美人女優の白燕。呉楚帆の魅力にぜひ触れてみて下さい。

5 『蝶影紅梨記[修復版](ちょうえいこうりき)』
 原題:蝶影紅梨記、製作年:1959 年、監督:李鐵(レイ・ティ)
 …粤劇(広東オペラ)のスターコンビ・任劍輝(ヤム・キムファイ)と白雪仙(パク・シュッシン)が主演する粤劇映画。日本初上映。
Cinetamaより~粤劇(ユッケッ)の作品が1本でも入っているとは素晴らしい。一時は年に100本を超す作品が作られていた粤劇映画の、一番の人気者がこのお二人。粤劇の特長は、主演級の人がすべて女性だということで、言わば日本の宝塚。でも男優も脇役では大活躍、本作にも出ている梁醒波(リョン・センポー)は人気者でした。

6 『野バラの恋』
 原題:野玫瑰之戀、製作年:1960 年、監督:王天林(ウォン・ティンラム)
 …女優・歌手として人気を博した葛蘭(グレース・チャン)主演の歓楽街のドラマ。音楽は服部良一。日本初上映。
Cinetamaより~香港映画では一番好きな作品かも、というのがこれ。カルメンを下敷きにして、クラブの女性歌手とピアノ弾きの青年との恋を描きます。葛蘭が「ジャジャンボー!」と歌った「説不出的快活」は、ヒット曲となってその後も大人気に。

7 『梁山伯と祝英台(りょうざんぱくとしゅくえいだい)』
 原題:梁山伯與祝英台、製作年:1963 年、監督:李翰祥(リー・ハンシャン)
 …中国で最も良く知られた民間説話を、歌曲を織り交ぜて映画化した、60 年代香港映画の代表作。撮影は西本正(名義:賀蘭山)。
Cinetamaより~「バタフライ・ラヴァーズ」などの英題で知られる悲恋物語。凌波(女性ですが男役梁山伯を演じます)と樂帝が主演したこの作品は「梁祝」映画の中でも最高峰と言っていい作品で、それが日本語字幕で見られるとは! 日本版DVD化してほしいですが、4K修復版でないと無理?

8 『英雄本色』
 原題:英雄本色、製作年:1967 年、監督:龍剛(ロン・コン)
 …社会派・龍剛監督による犯罪者の更生をテーマにした作品。のちにジョン・ウーが『男たちの挽歌』としてリメイクした。日本初上映。
Cinetamaより~主演は、ニコラス・ツェーのパパ謝賢(チェー・イン)。この時はまだ30歳そこそこで、当たり前ですがニコラスそっくりに見える時も。龍剛監督は『広島二十八』などの監督として知られていますが、俳優としても活躍していた人です。

9 『董夫人(とうふじん) 』
 原題:董夫人、製作年:1970 年、監督:唐書璇(トン・シューシュン)
 …繊細かつ大胆な心理描写によって、“香港ニューウェーブ”の先駆となった女性監督作。日本初上映。
Cinetamaより~主演は、最近では『クレイジー・リッチ』にも出ていた廬燕(リサ・ルー)と、『女人四十』などの偉丈夫喬宏(ロイ・チャオ)。

10 『最後のブルース・リー ドラゴンへの道』
 原題:猛龍過江、製作年:1972 年、監督:李小龍(ブルース・リー)
 …ブルース・リーがローマを舞台に監督・脚本・主演など何役もこなした大ヒット作。撮影は西本正(名義:賀蘭山)。
Cinetamaより~『ドラ道』を知らなければ、ブルース・リーを語る資格なし、という作品です。チャック・ノリスとの闘いは語り草に。

11 『ブラッド・ブラザース 刺馬(しば)』 
 原題:刺馬、製作年:1973 年、監督:張徹(チャン・チェ)
 …キン・フーとともに武俠映画を改革した張徹監督の代表作の一つ。撮影は宮木幸雄(名義:龔慕鐸)。
Cinetamaより~「刺馬」は「馬(マー)を殺す」という意味で、主演は狄龍(ティ・ロン)と姜大衛(デヴィッド・チャン)、そして陳観泰(チェン・カンタイ)。後にアンディ・ラウ、ジェット・リー、金城武主演で、『ウォーロード/男たちの誓い』としてリメイクされています。

12 『忠烈図[4K 修復版](ちゅうれつず)』 
 原題:忠烈圖、製作年:1975 年、監督:胡金銓(キン・フー)
 …巨匠キン・フー監督の代表作の一つ。2021 年作製の 4K 修復版を日本初上映。
Cinetamaより~主演は白鷹、徐楓、喬宏、韓英傑とキン・フー作品の常連組。上映期間中の1月14日がキン・フー監督の命日なので、その日に上映があるかも知れません。

13 『Mr.Boo ! ミスター・ブー』 
 原題:半斤八両、製作年:1976 年、監督:許冠文(マイケル・ホイ)
 …広東語現代劇を復興させたホイ 3 兄弟による大ヒットコメディ。1979 年日本公開時の 35mm プリントによる上映。
Cinetamaより~許冠文(マイケル)、許冠英(リッキー)、許冠傑(サミュエル)がホイ3兄弟ですが、実は次男が許冠武と言い、4人の名前を連ねると「文武英傑」となります。「武」さんは芸能界には入らず、そのため「ホイ3兄弟」と呼び習わされていますが、本当はこんなすごい理想を背負った4兄弟なのでした。

14 『跳灰 ジャンピング・アッシュ(ちょうはい)』
 原題:跳灰、製作年:1976 年、監督:梁普智(レオン・ポーチ)
 …“香港ニューウェーブ”の嚆矢となったリアルな犯罪アクション。日本初上映。
Cinetamaより~『跳灰』の主演はジョセフィーヌ・シャオで、彼女との共同監督という記述もあります。レオン・ポーチ監督は、この後チョウ・ユンファと葉童(イップ・トン)主演の『風の輝く朝に』(1984)という名作を作ります。

15 『父子情(ふしじょう)』
 原題:父子情、製作年:1981 年、監督:方育平(アレン・フォン)
 …第 1 回香港電影金像奨で作品賞を受賞するなど、高い評価をうけたファミリードラマ。“香港ニューウェーブ”作品。
Cinetamaより~アレン・フォン監督は本作の後、『半辺人』『美国心』などを撮って、ニューウェーブの中心人物と見なされていたのですが、今世紀に入るとバッタリ消息が途絶えてしまいました。ノンスター作品である本作には、40年前の香港が切り取られています。

16 『ポリス・ストーリー 香港国際警察』
 原題:警察故事、製作年:1985 年、監督:成龍(ジャッキー・チェン)
 …ジャッキー・チェンが監督・主演した刑事アクション。
Cinetamaより~このあたりからはもう皆さんよくご存じだと思うので、以下はコメントなし、ということで。

17 『霊幻道士(れいげんどうし)』
 原題:殭屍先生、製作年:1985 年、監督:劉觀偉(リッキー・ラウ)
 …1987 年に日本公開され、キョンシー・ブームを起こした大ヒット作品。

18 『北京オペラブルース』
 原題:刀馬旦、製作年:1986 年、監督:徐克(ツイ・ハーク)
 …辛亥革命後の北京を舞台に、偶然知り合った 3 人の女性が大活躍する。ツイ・ハーク監督による冒険活劇。

19 『男たちの挽歌[4K 修復版]』
 原題:英雄本色、製作年:1986 年、監督:吳宇森(ジョン・ウー)
 …ジョン・ウーの名を一躍知らしめた犯罪アクション映画。2015 年に 4K 修復された版を日本初上映。

20 『ワンス・アポン・ア・タイム 天地大乱』
 原題:黃飛鴻之二男兒當自強、製作年:1992 年、監督:徐克(ツイ・ハーク)
 …ジェット・リーが黄飛鴻に扮した大人気クンフー映画シリーズ第 2 作。

21 『花火降る夏』 
 原題:去年煙花特別多、製作年:1998 年、監督:陳果(フルーツ・チャン)
 …香港インディペンデント映画の俊英フルーツ・チャン監督による「返還 3 部作」の第 2 作。

香港映画と共に、よいお年をお迎え下さい。


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