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アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

『ヒーロー・ネバー・ダイ』が甦った!

2014-12-06 | 香港映画

久々に見ました、杜[王其]峰(ジョニー・トー)監督の傑作『ヒーロー・ネバー・ダイ』。1998年の作品です。日本公開は1999年なので、15年ほど前に見たのですね。劉青雲(ラウ・チンワン)が「ええ~っ!」な役の上、それが効いてくるラストが強烈なのと、いつもはその演技をあまり評価できない黎明(レオン・ライ)の演技がすごかったのとで、強く印象に残っている作品です。その『ヒーロー・ネバー・ダイ』がこのたびHDリマスター版として甦り、明年1月9日にブルーレイ発売されるのを機に、スクリーンでの上映が実現しました。

まずは基本データをどうぞ。今回は画像をたくさんご提供いただいたため、ふんだんに使用しています。クレジットをいちいち入れるのが面倒なので、ここにまとめてクレジットを記しておきます。

クレジット(C)1998 Film City(Hong Kong)Ltd. All Rights Reserved

『ヒーロー・ネバー・ダイ』 劇場特設サイト

1998/香港/広東語・タイ語/147分/原題:眞心英雄
 監督・製作:杜[王其]峰(ジョニー・トー)
 主演:黎明(レオン・ライ)、劉青雲(ラウ・チンワン)、梁藝齢(フィオナ・リョン)、蒙嘉慧(ヨーヨー・モン)、林雪(ラム・シュッ)、王天林(ウォン・ティンラム)


 配給:アクセスエー
 宣伝:フリーマンオフィス


※12月6日(土)よりシネマート六本木にてHDリマスター版 特別リバイバル公開

なお、この上映を記念して、初日12月6日(土)に豪華ゲストによるトークイベントが開催されます。宣伝、間に合うでしょうか?
 日時:12月6日(土) 10:50~の回、上映終了後
 料金:1500円均一
 ゲスト(予定):宇田川幸洋さん(映画評論家)
         松江哲明さん(映画監督)

 

映画では、まず香港のパブ「サキソフォン」が写り、そのボトルキープ棚にあるワインがアップになります。そこには、「Jack哥/秋哥(ジャック&チャウ)」と書いた札が下げられていました。


そして物語は、タイの片田舎へと移ります。ジャック(レオン・ライ)のボス皮哥(ベイ/任世官)が、信奉する導師の所に、どうすればいいのかという予言をもらいに来たのです。皮哥は対立する組織のボス追哥(チョイ/方平)と、1年前から縄張り争いを繰り広げていました。ジャックはボスの優柔不断な態度にうんざりしながらも、他の手下(ラム・シュッら)と共に彼を守ることに心を傾けます。


タイに来る直前にも、地元香港で両組織はぶつかり合っていました。皮哥にジャックがいるように、追哥側にも凄腕のスナイパーであるチャウ(ラウ・チンワン)がいました。ある夜撃ち合いとなった時、チャウはライフルでジャックを狙っていたのですが、ジャックの方に理があると思ったのか、引き金を引きませんでした。


その後、ジャックはチャウのねぐらを襲い、メチャクチャにします。チャウは裏社会をよく知る肥仔(フェイ/ウォン・ティンラム)を介してジャックに文句を言い、ジャックもフェイを介して...と毒舌合戦が繰り広げられます。疲れ果てたフェイは、「いっそ実際に顔を合わせたらどうだ」と提案。2人はパブ「サキソフォン」で会うことになりました。ワイン好きの2人は、それぞれにワインのボトルを抱えていました。


「スキヤキ・ソング」が流れる中、子供っぽい実力ひけらかし遊びに夢中になる2人。 やがてお互いに恋人を呼びつけ、ワインを持ってこさせた2人は、残った1本を店にキープさせたというわけなのでした。マスターはそれに「Jack哥/秋哥」という名札を付けて、キープ棚の目立つ所に飾りました。その後ジャックは、導師の予言に頼ろうとするボスの皮哥に従って、タイに赴くことになったのです。


皮哥らを追い、チャウ、そして追哥もやって来ます。彼らは皮哥やジャックの隠れ家を襲い、両者は激しい銃撃戦となります。その中で、ジャックもチャウも大怪我を負い、バンコクの病院に入院することに。香港からは2人の恋人が看病に駆けつけますが、ジャックは意識不明の重体、一方チャウは銃弾のために両脚の膝から下を切断せざるを得なくなってしまいました。ところが、2人のボスは両方とも知らん顔。それどころか、追哥と手打ちをした皮哥は、邪魔なジャックを始末しようとします....。


一方、チャウもタイに打ち捨てられ、すっかり無気力に。恋人の尽力でやっと香港に戻ってきたチャウでしたが、車椅子に乗った彼からは昔の覇気がまったく感じられませんでした。手を結んだボスたちは大きなナイトクラブの経営に乗り出し、チャウのことなど見向きもしません。チャウはどうなるのか、そしてタイに残されたジャックは....。


まず、ジャックとチャウのキャラクターがいずれも魅力的で、ぐいぐいと引き込まれていきます。沈着冷静なジャックと、押しの強いチャウが繰り広げるパブでの対戦シーンは、『ザ・ミッション 非情の掟』(1999)の紙ボール・サッカーシーンに匹敵する面白さ。ジョニー・トー監督のフィルモグラフィーを見てみると、この『ヒーロー・ネバー・ダイ』から本格的なノワール作品系列が始まるのですが、『ザ・ミッション 非情の掟』はじめ後の数々の作品で花開く芽が本作の中にはいくつも潜んでいるように思われます。


また、ラウ・チンワンとは本作の前の『ファイヤーライン』(1999)こと「十萬火急」や、本作に続く『暗戦 デッドエンド』(1999)等何本もの作品でタッグを組むことになりますが、レオン・ライとの作品はこれ1本のみ、という点でも貴重です。レオン・ライは長所をうまく引き出され、『仙人掌』(1994)や『天使の涙』(1995)を彷彿させる殺し屋キャラのほか、バンコクで暮らすシーンでは『ラヴソング』(1996)を思い出させる描写もあって、徹頭徹尾チャーミングです。


さらに、ジャックとチャウの恋人たちにも出番が用意され、「極道の女たち」の姿がくっきりと描かれています。実に巧みで緻密な、司徒錦源セット・カムイェン)と游乃海ヤウ・ナイホイ)の脚本です。


今回見直してみて、思わぬツッコミどころに気づかされたり、芸の細かい所に感心したりと、15年前とはまた違った楽しさを味わいました。すでにご覧になっていらっしゃる方も、ぜひ劇場で、あるいはブルーレイの綺麗な画面で、ジョニー・トーの世界をご堪能下さい。ジョニー・トーもラウ・チンワンも、油が乗り始めていた時期の勢いがほとばしる秀作です。

 

(加速するラウ・チンワン!)

 


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