昨日の土曜日、新宿ピカデリーにおいて、『エンドロールのつづき』第2回の上映前に、パン・ナリン監督とこがけんさんによるトークショーが行われました。もうすでにいろんな映画サイトでレポートが出ているのですが、抱腹絶倒、かつ感動満載のトークショーでしたので、ほぼ全記録となるよう会場でのやりとりを拾ってみました。とても長くなったので、2回に分けてお伝えします。
<粋な帽子姿の監督と通訳さんが登場>
司会:まずは一言、ご挨拶を。
監督:大好きな日本にやってきて、心から感動しています。私は日本が本当に好きで、映画ファンの方々、日本の方々も大好きです。日本に来て数日になりますが、毎日感動しています。この映画を皆さんに届けて下さった松竹さんにも、深く感謝しています。また、たくさんの観客が来て下さっていて嬉しいですね。映画館に行くことが難しくなった時代ですし、不安を抱えながら映画館に行く時代でもあるにもかかわらず、皆さんは来て下さいました。本当にありがとうございます。
<監督につづいて登場したこがけんさんは、ド派手なえんじ色のシェールワーニー(丈長、詰め襟の上着)に共布のターバン、そしてズボンはチュリーダール・パジャマという格好。シェールワーニーとターバンは刺繍入りで、どうやら花婿衣装のようです>
司会:こがけんさんもご挨拶を。
こがけん:本当に、この作品に関われるのはありがたいな、と思ってるんですけど、僕のこのビジュアルがですね、インドの高級ホテルのドアマンみたいなんですね(笑)。本当にこれだけは勘違いしてほしくないんですが、こういう感じの人が出てくる映画ではないんです!(笑)。靴もね、こんな分厚い靴をはいてるんですけど(と、足を持ち上げて、先が反り返ったインドの伝統的革靴を見せる)。衣装係さんに、「よかったらこれも」って渡されたんですけど(と、小道具のアラビア風ランプを見せる)(笑)、こんな映画ではないんです! 魔法のランプは出てこないです!(笑) ありがたいんで持ってきましたけど。でも、本当にこんな素敵な衣装、着させてもらってありがたいです。監督にも絶賛を浴びて、鼻高々です、僕は、はい。
あと、もう一つひっかかってるのは、通訳さんのマイクの位置がギタリストの位置だな、と(笑)。瑛人の後ろで弾くギタリストの位置だな、と。
司会:監督が涙が出るほど笑ってらっしゃいますよ(笑)。
監督:あなたは素晴らしい! と言いたいですね。そのランプをこすると、とても素敵な映画がスクリーンに登場しますよ。
こがけん:この映画はめちゃくちゃに素敵なんですけど、監督自身が本当にロマンチックだなと思ってて。今のコメントを言う人の作品です。この素晴らしさなんで、皆さんもぜひ、期待しておいて下さい。(拍手)
<こがけんさん、ランプを置く>
司会:そのランプ、ぜひこすって下さい。
こがけん:最後にね。でも、こういうのは忘れて帰るんだよ~。忘れないで、憶えとかないといけないな。
司会:監督は13年ぶりの来日で、これまで何度も日本に足を運ばれているとのことですが、こがけんさん、日本のお勧めの場所とかありますか?
こがけん:やっぱり、日本らしいものがいいでしょうね。いろんなカスタムもできますし、皆さんも知ってるかな、ココイチ(CoCo壱番館)っていうお店(笑)。
司会:監督、聞いたことありませんか?
監督:(首を振る。実はココイチは2020年6月にインドのデリー南部グルガオンに第1号店を出店、好評を博して、2022年10月には首都デリーに2号店を出しています。監督はパリとムンバイにお宅があるので、ご存じなかったようです)
こがけん:ココイチ聞いたことない? ここは聞き流してもらっていいです(笑)。あと僕は、『エンドロールのつづき』的にはですね、”おふくろの味”っていうのが重要だと思うんですよ。僕が東京に出てきた時の”おふくろの味”っていう意味では、下北沢にある「とん水」という定食屋があるんです。60歳ぐらいのおじさんとおかみさんがやられているお店なんですけど、壁の紙にいっぱいメニューが書いてあるんですよ。僕はめっちゃナス焼きが好きで、ナスを薄く切って焼いてあるんですけど、そこに醤油と七味が振ってあるんです。それがめちゃくちゃおいしくて。このナス焼きをぜひね、食べてほしいなと思ってます。
監督:わかりました、勧めて下さってありがとう。”ナスヤキ”ですね?(と料理名を反復)
こがけん:ナス焼き。あと場所としては観光地がいろいろあるんですけど、やっぱり北九州ですね。北九州は本当に映画の撮影に協力的なんですよ。北九州だったらもうどこでも爆破シーンを撮っていいんです(笑)。日本で爆破シーンを撮りたいんだったら、北九州に行ってほしいな。北九州だったら、すぐやらせてもらえます(笑)。
監督:あははは、どうもありがとう。出身地なんですか?
こがけん:僕、福岡なんで。ぜひ、いろんな所で爆破してもらえれば。
司会:今回も映画を見てみれば、監督の映画愛が伝わってくると思うんですが、今日はこがけんさんとお二人、日本とインドの一番の映画マニアが集まっていると言っても過言ではないので、監督にちょっと、どんなジャンルの作品を年間どのくらいご覧になるのか聞いてみましょう。
監督:私はどんなジャンルの映画も見ます。子供の頃は娯楽映画しか見ていませんでしたが、その後大都市に行って学生となってからは、ハリウッド映画も見るようになりました。そういう映画館に行っているうちに、小さなポスターを見かけてフィルムクラブに入り、アート系の映画も見るようになりました。ヌーベルバーグの作品や、イタリアのネオレアリスム映画とか、日本の巨匠の作品とかを見始めたんです。ですので私の映画鑑賞は、すべてのジャンルを見る、という形ですね。その時の気分や懐具合、ムードで見るわけですが、その都度、いろんな国の映画からそれぞれの国を発見していきました。私が日本を知ったのも日本映画を通してです。長い間日本映画を見続けたあとで、自分は絶対に日本に行かないといけない、と思いました。妻のナターシャは日本映画の『たんぽぽ』(1985)を見て、出てくる料理に惹かれていましたよ。
こがけん:『たんぽぽ』はあんなにおいしそうに撮るか、っていうね。最高ですよね、オムライス。
監督:(笑う)
司会:食に関してはこの映画もね。
こがけん:本当に食に関してはもう、僕は”飯テロ・ムービー”でもあると言いたいですね。こんなにおいしそうな表現というか、作っている過程もすごくきれいに撮ってありますし。だからもう、食べ物にわくわくするシーンばかりですよね。なぜこんなに、お母さんの料理に対してきれいにおいしそうに撮るのか、というのは、のちのちのストーリーに関わってくる、というね。これなんか面白いところだな、と思いますね。
監督:この映画でご覧になった料理はみんなヴェジタリアン料理で、世界中のヴェジタリアンの割合は5%か6%なのに、この地方では35%ぐらいなんですよ。食事というのは非常に大事なもので、地元の食材が使われて各家庭で作られます。こういうヴェジタリアン料理は外では食べられないもので、ムンバイやデリーといった大都会でも本物は食べられません。これは(映画の舞台となった)グジャラート州カティアーワール地方の料理なんですね。
こがけん:なるほど。違うんですね。
監督:そうなんです。地元で採れた農産物を使って料理されたもので、私の母の手料理は本当に美味しかったのです。台所も半分は戸外で半分は室内という造りでしたので、本作でも同じにしてあります。世界中のどこにも、例えば日本やイタリアなど多くの国に素晴らしい食文化がありますが、そういう国は音楽や演劇、映画が今も素晴らしいですよね。食と文化には何か関係があると思います。ですので、”フード・テロリズム(飯テロ)”とおっしゃいましたが、まさにこれらの国は”フード・テロリズム”の国だと思います。
こがけん:なるほど。いや、映画の本数なんかもね、関係してくると思うんですが、僕、今回、カンペで”短く”という意味だと思うんですが”Shoter(ショーター)”って出て(笑)。
司会:盛り上がってましたからね、はい。
こがけん:監督が話されてましたけど、むこう(インド)は平気で開演時間が10分とか遅れるから、全然大丈夫だと言ってましたよ。
司会:大体20分ぐらい遅れて、皆さん始めるそうですね。
こがけん:そうですよ。それでいいんじゃないですか。(笑)
<後半につづく>